障害物競走
用意、パンッ!
なんて銃声と共に一年生が走り出す。
火薬くさいから近くで鳴らさないでくださーい、なんて言いたいけど言えない。先生怖い怖い。
「ちょっと響、しっかり仕事してよ?」
「わーかってるよ。でもペットボトル戻すだけだよ?」
私たちの仕事は水の入ったペットボトルを足だけで立たせるというスタートの障害物があるので、立ったペットボトルをひたすら倒す作業。
「はぁ〜…。眩しい暑い帰りたい」
「ちょっと響!体育祭ぐらい張り切りなさい!!」
あ!翔太先輩だ、なんて騒ぐ愛実につられて顔を上げると、兄の顔が。
ふと目が合ってしまうと、ニコッ、と笑われる。
ゾクッ……………
なんか猛烈に寒気する…気色悪。
心の中でひたすら罵倒している私に対してキャーキャー言う愛実。
パンッ!
騒々しい音が鳴って三年四組がスタートした時。
一年生も二年生も三年生もなぜかしょーに注目していた。
あ、しょー とは兄のこと。深い意味は無いがあだ名がこれで定着している。
あ、しょー、一位だ。
「わ!足はっや!障害物抜けるのはっや!ちょーカッコイイ!」
「カッコイイ…のか?」
そんなことを言いながらふと次の走者を見上げる。
そこには、例の先輩が。
三年四組の次…三年五組だったんだ。
「わっ!いるじゃん、例の先輩!」
私の肩を揺らしながらよかったね、なんていう愛実。
「うっぷ…揺らさないでって…そうだね…」
日光で弱っている私にとっては肩を揺らされるなんて吐きそうになるくらいのことなのだが。
パンっ!
そう音がなり、三年五組の走者が走り出した。
仕事をしてすぐに先輩をずっと見てたのは愛実には秘密。
変態、ストーカー、なんて言われるから。
あ、二位だ。
なんか、少女漫画にありがちな超モテモテハイスペックでもないんだなぁ…現実って変なの。