兄貴
そして、日はいつの間にか体育祭当日。
先輩のことは、たまに学校内で見かけるくらい。
いつも休み時間は教室で涼んでるから、休み時間に合う確率は限りなくゼロに近い。
なんてったてこっちは学生の中では引きこもりのプロに値するほど外に出たくない神経、嫌いな教科は体育、日光は敵だ。
そんな人にとっての体育祭なんか地獄でしかない。
「今回ばかりは委員会に入ったことを後悔するね。」
愛実に誘われて委員会に入ったのだが、いやになったためわざと厭味ったらしく言う。
「響もいいよっていったじゃん。それに、障害物競走の用具係担当一緒でよかったじゃん。私がいなかったら死にそうだよね、響」
それを全く気にしていないように言う愛実のメンタルは底知れない。
「否定はしない、リア充ばっかなんだもん、この委員会。」
「中学生だよ?ここに関わらずリア充は結構いる」
そう、ただでさえ人見知りでコミュ障なわたしがリア充と話すなんて考えただけで死ぬ。
まともな人ならまだしも、キャピッキラッな人はまじめについていけない。
なんか略しすぎてちょっと何言ってるか分かんないし。
「あ!次だよ、障害物競走の準備!」
「げぇ、行きたくないー」
そんなことをいいながら、呑気に準備をしていた。
そして、準備についたとき。
障害物競走に出る三年生が並んでる列に、あの先輩がいたのだ。
「あっ!見て響!翔太先輩いる!」
ちなみに、今愛実が騒いでいる翔太先輩とは、三年四組文月翔太。
一年生からも二年生からもイケメン先輩と騒がれている。
文月、という苗字のように、私の兄である。
勉強はイマイチだが、運動神経抜群、笑顔がたまらなくかっこいいんだそう。
でも身長160cmだからモテないだろうなこいつ、なんて思っていた私をちょっと殴りに行きたいぐらいモテている。
同じクラスの子が「これお兄さんに渡してくれない?」とラブレターを渡してきた時には驚いた。
イケメンに目がない愛美はもちろん兄貴のファンである。
「いいな、あんなに輝いたお方がお兄さんだなんて。私ひとりっこだよ?」
「そう?兄妹ってだけで渡してほしいものとか頼まれるし、いろいろと面倒くさいからひとりっこの方が楽だと思うよ。」
「えー。あ!例の先輩もいるじゃん!」
愛美にバレてしまった。
まぁいいとしよう。
そして、一年生から障害物競走はスタートした。