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マローネ!!  作者: 桜本 結芽
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第5章 異世界間戦争の真実

 俺は今朝イーモンが教えてくれた〖ライティアが戦う理由〗を思い返しながら剣の素振りを数時間程していると、途中で手に力が入らなくなり木刀が茂みに飛んで行ったので舌打ちをしながら探しに行くとすぐに見つかり、拾い上げようと掴んだ途端手の平に激痛が走りそのまま落してしまいそっと手を広げ見てみると、いくつものマメが潰れ血が出ていたのでそれを見てため息をつきながら座り込み空を見上げているとイーモンが後ろの茂みから現れ、

 「どうした? 今朝の話がまだ信じられねぇか……?」

 と心配そうな面持ちで言うと先ほど狩ってきたシカをさばき始め俺は黙り込むとその場に重い沈黙が広がり数分程経つとイーモンが手を止めて、

 「俺は……お前が暮らしていた世界を守りたいんだよ、ナオもいるし……それにあの子が見定めた男の顔も見たい、マモルにも誰かを守りたいという思う心があるんだろ?」

 そう俺を見つめながら言われたので俺は目を瞑って守りたい人の事を考えると、瞼の奥には家族や友人が浮かんだのでその思いをイーモンに伝えると彼は嬉しそうに頷き、

 「その気持ちがあれば大丈夫だ! 安心したよ」

 と豪快に笑い飛ばしながら俺の背中を強く叩き咳き込む俺に、

 「まだまだひ弱だなぁ! もっと鍛えねぇと!」

 そう言ってさらに笑い飛ばすイーモンがとても楽しそうだった事に嬉しくなった俺は、軽快な返事をすると彼も嬉しそうに微笑みシカをさばく作業を再開すると、20分程で夕食が完成し二人は焚き火に向かい合って黙々と食べ全てたいらげるとしばらく休憩してまた訓練を始め、眠りにつくという森の中での訓練を一週間程続けると俺の魔力や剣術は上達していて見た目も変わっていて、俺の訓練がひと段落して森を降りる支度をしているとコロニ達が珍しく慌てた様子で近付いてくると、俺の心に直接映像を送って来た事に驚いていたのだが街が燃えている事を知りさらに驚いてイーモンに伝えると、彼は表情を硬くして青ざめた後舌打ちをして支度の手を止めると、大急ぎで森を抜けて門の前に着くと街の人々は逃げ惑い、建物はほとんどが燃やされていてすでに息絶えている人も大勢いて、俺はこの光景に頭がついて行かず呆然としているとイーモンに頬を叩かれやっと我に返るとすかさず彼が、

 「ボーっとするな! 今からライティアとしての初仕事だ、街の中にいる生存者の救助と魔法で建物の鎮火をしろ……早く‼」

 と大きな声で指示を出された俺は返事をすると走って燃える街の中に入って行き、魔法を使って近くの井戸から水を呼び出し燃え盛る炎に水をかけていくのだが、燃え移る炎が強すぎて追いつかずに必死で水をかけていると、後ろから近づく人に気付かずにいたので不意に魔法の音波におそわれ瞬間的に気付くが避けきれず、直撃を受けた俺は数メートル飛ばされたが最後には足を踏ん張り止まると攻撃をした人物を睨みつけながら、

 「やっぱりこの街を燃やしたのはあんたか!?」

 そう怒鳴りつけるように言うと目の前に立っていたサキは不敵な笑みを浮かべると、

 「ああ、俺がやったんだ……人間の命を奪うのは容易い……だから本当に楽しいんだよ‼」

 と心底楽しそうに笑いながら言うと近くで燃えている建物をさらに魔法で崩すサキに激しい怒りが込み上がった俺は、雄たけびを上げながら木刀を振りかぶりさらに途中で木を鉄に変える魔法を使って向い、剣を抜いたサキと切り結ぶと初めは余裕の表情の彼だったが次第に驚きの顔へと豹変させ押されている事に気付くと舌打ちをして突然身体を離し、前のめりに体勢を崩された俺に攻撃をしようとしたその時俺達の周りに濃い霧が立ち込め、次の瞬間にはサキとの距離が五メートルも離れていてさらに後ろには森の中で出会ったユニコーンが仲間を連れて来ていて、驚きと困惑が混じった表情で立ち尽くす俺にユニコーンが呆れたというように、

 『なにをしている、早くあの人間の子供を街から引き離せ』

 そう言われた俺はハッとなりまた木刀を構えるがサキは舌打ちをしてからため息をつくと、

 「さすがに僕も何頭ものユニコーンを相手にはできないからここは引くよ、それに王様の命令も遂行できたからね」

 とニヤリと笑いながら言うとまた砂が散っていくように消えていくので、俺は呆然としていると門の方向から名前を呼ばれて振り向くと、イーモンが血相を変えてこちらへ走って来ていて俺の前に着くと慌てながら、

 「マモル、無事か!?」

 そう言われたので返事を返すと安心したのか息をはいて後ろにいるユニコーン達に頭を下げ、

 「俺の弟子を助けてくれて本当にありがとう、彼は異世界間戦争を防ぐために戦う大事な存在なんだ……彼が助かってよかった」

 とイーモンは涙ぐみながら言っていてそれを見たユニコーンが頷くと俺に近づいて来て右腕に口を当てると淡い光を放ちながら、

 『我等、汝を聖なる者と認める……故に我等は汝と共にあり』

 そう呪文のような言葉を呟いてから口を離すと次は満足気に頷いて仲間と共に濃い霧の中へと消えていき、その後俺達は街の炎や怪我人の対応に追われ次の明け方には全てが収まり俺は疲れて座り込んでいるとイーモンが慌てたように走ってきて立ち上がった俺の腕を掴むと、

「アダンとセラフィナがいないんだ!」

 そう言われ困惑した俺は立ち上がって捜しに行こうとしたその時誰かの声が聞こえ、途端に気が遠くなると次の瞬間薄暗い牢屋の外にいて辺りを見渡すと、中には大きなウサギやイヌのような生き物たちが鎖に繋がれうなだれていて、ふと後ろの牢屋を見ると傷だらけのセラフィナとアダンも首を鎖に繋がれていて驚いた俺は、

「セラフィナ‼」

 と叫びながら腕を伸ばし駆け寄ろうとするのだがその場から動けずに、伸ばした手が届かないまま必死に何度も呼ぶが声も届かずにいると、遠くで俺の名前を呼ぶ声が聞こえ重い瞼を上げると心配そうな面持ちのイーモンの顔があり俺は未だに頭がぼやけていて小さな声で、

 「し、師匠……? ここ……は……?」

 そう尋ねるとイーモンは突然頭を強く殴り俺は痛む頭を押さえながら、

 「痛ってぇー‼ なにするんすか、師匠!?」

 と少し涙目で言うとイーモンが大声で、

 「何すんだじゃねぇよ‼ 急に倒れたと思ったら寝ぼけた事を言いやがって! 心配させんな‼」

 半ば怒鳴るように言われたので小さな声で謝った後俺は倒れた理由を彼に説明すると、イーモンの表情が曇って行き全て話し終わると真剣な顔で、

 「おそらくサキは王国専属のライティアになっているんだ、アダンとセラフィナはきっと王都の牢屋ににいるはずだから今からそこに行こう!」

 と言われた俺は困惑しながら、

 「ちょ、ちょっと待ってください! この街はアンチカ王国の一番端にあるですよ? 歩いて……ましてや走ってでも何日かかるか分からないのにどうやって行くんですか⁈」

 そう反論するとまたユニコーンが現れて、

 『我に名案がある』

 と言って角から普通は目に見えないはずの音波を出すと満足げに頷いてそれから数分後、どこからともなく羽ばたく音が聞こえたので上を見やると翼が生えた馬、ペガサスが飛んできて俺達の前に降りて来ると驚いた顔の俺にペガサスが不満げに、

 『なんだ、近頃の若いライティアは挨拶も出来ないのか』

 そう言われたので俺は慌てて自己紹介と現在の状況を口早に説明するとペガサスは怒ったように、

 『今の王はまだそんなバカげた事をしているのか、全く……人間は少しも成長しない生き物だな』

 と言った後落ち着かせるようにため息をついて俺に振り向くと、

 『乗りなさい、私が王都へと連れて行ってやる……だが帰りは自分で戻って来るんだ』

 真剣な表情で言われた俺は、

 「分かりました」

 そう俺も真剣な面持ちで返事を返すとペガサスに乗るように言われ、俺とイーモンが乗ると翼を大きく広げて羽ばたき宙に浮いて空高く昇ると、突然前に進み後ろに飛ばされそうになったのを後ろに座っているイーモンに支えられてペガサスのたてがみにしがみつくと、耳を通る風の音が大きく目が回るほどの速さで進むので俯いているとしばらくしてイーモンに肩を軽く叩かれ、前を見てみると大きく立派な城が現れ城門には何人もの兵士がいたのだが彼らは突然ペガサスが現れた事に驚き、弓を一斉に放つが途中で減速して一つも届かずに落ちていく矢を見た兵士は、驚きと恐怖で逃げ散ってしまいがらんとした城の広場にペガサスが降り立つと、俺達は降りて彼に礼を言った後最初に武器庫を襲い剣を奪うとそれを持って城の中へと押し入り止めに入った兵士達を倒していき一人の兵士に牢屋の場所を聞くと、さらに剣と魔法を駆使して深部へと走って行きやっとたどり着いた牢屋の中を歩いて行くと、一番奥に首を鎖で繋がれさらに鞭でつけられた傷で大けがを負ったセラフィナとアダンがいて、大声で名前を呼んで駆け寄った俺達は兵士から奪い取った鍵を使って中へと入り魔法で傷を癒していき全ての傷を治し終えた途端魔法陣が現れたと思えば身体が重くなり動けずにいると、入り口から大勢の兵士が流れ込んできて俺達を囲み銃を頭に着きつけると奥からサキがゆったりとした歩調で近付いて来てニッと笑った後、俺の腹を力いっぱい蹴り飛ばし咳き込む俺にさらに追い打ちをかけるように蹴られ、動けずに避ける事が出来ない俺をイーモンが力なく呼ぶが痛みを堪えていたのでぼんやりと聞いているとサキが髪の毛をわしづかみにして、

 「楽しい事をしてくれてんじゃねぇか、ええ? 期待のライティアさんよ⁈」

 そう言って掴んだ髪を振り下ろし俺の顔を床に何度も叩きつけた後近くで立っていた兵士に、

 「こいつらを牢屋に入れとけ、魔法陣は消すなよ! 絶対呪縛は途絶えさせるな」

 と言って兵士の一人が敬礼しながら、

 「かしこまりました」

 そう言って兵士達はサキを見送ると彼は俺達を見下すように鼻で笑い部屋から出て行き、俺達は魔力を抑える手錠をかけられた後牢に閉じ込められ、そのまま数日が経った時外から鍵を開け誰かが入って来る気配がすると牢の前で少年が止まって彼は屈託のない笑みを浮かべて、

 『助けに来たよ!』

 と心の中に声が聞こえたので驚きの表情をする俺達に目の前の少年が、

 『もう僕達の事を忘れたの? 早すぎだよ!』

 そうとても楽しそうに笑いながら言う少年に気付いた俺は小声で、

 「コロ……ニ……?」

 と尋ねると彼は嬉しそうに、

 『当たり! 気付いてくれてよかった!』

 そう言った後ふっと身体が軽くなりさらに驚く俺にコロニが、

 『さぁ、早く行こう! 見つかる前にね!』

 悪戯っぽく言うと牢屋から出て行き俺達も後をついて走っていくと、誰も通らない事に不審を思った俺は口を開きかけるとコロニが走りながら、口もとに人差し指をあててしゃべるなと合図をされたので黙って頷くとコロニは笑顔で頷き返し、走り続けているとイーモンが俺を突き飛ばした直後剣が俺達の中央の床に刺さっていて言葉をなくしていると奥の方から、

 「あの人間嫌いなコロニが人を助けるなんて驚きだぜ!」

 と言った後魔法で床に刺さった剣を抜くと構えたので、俺は唾を飲み込んでいるとサキがふっと口元を綻ばせると振り返り、

 「今のお前と戦う気はないからさっさと行けよ……ただし王国を敵に回した事は忘れるな」

と言い残し兵士を従えて城の中へと戻って行った。

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