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マローネ!!  作者: 桜本 結芽
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第四章 森の中での訓練とイーモンの秘密

 うっそうとした森の中をなんの苦も無く進んで行くイーモンの背中を、俺は息を切らせながら必死について行き数時間程かけて登ると森の切れ目にたどり着きそこで荷物を下ろした彼が振り向くと、

 「よし、ここで飯を食うか!」

 と笑顔を広げて言うとその場に座り込み手招きをされた俺が横に座ると、パンをナイフで切って渡されそれを疲れすぎて黙々と食べていた時、ふとイーモンが嬉しそうに微笑んでいたので不思議そうに見つめていると、

 「どうした?」

 そう言われ慌てて俺は両手を空でばたつかせながら、

 「えっ! あ、いや……師匠が嬉しそうだなって思って……」

 と俯きながら歯切れ悪く言っているとイーモンはまた一段と嬉しそうに微笑んだ後遠くを見つめるように顔を上げて、

 「少し昔の事を思い出していたんだ、お前が来る前に……ナオとレナを連れて、レナが自分の命をかけてナオを異世界に飛ばす日まで毎日……マモルはナオによく似ているから思い出しちまった」

 そう寂しそうな声と表情で話すイーモンを見た俺は、なぜか元いた世界にいる家族や友人の事を思い出し涙が溢れてきたので俯くと、イーモンは俺の頭を優しく撫でながらまた微笑んでくれたのでそれを見た途端涙が止まらなくなってしまい最後には泣きながら胸の内を話していて、イーモンはそれをずっと黙って聞いていてくれて俺が泣き止んでしばらく静寂に包まれた後それを破るように、

 「俺は……11年前に夢を見たんだ、アンチカ王国が知らない世界の奴らと戦争をしていて俺達の街が燃えていた……そんな中ナオにそっくりな男の子が成長したセラフィナに乗って戦っていた、けど誰かの攻撃を受けて落下し動かなくなった……そこで飛び起きた俺は妻のレナをすぐに起こして説明すると青ざめながらナオの部屋にいって叩き起こすと、地下室の床に魔法陣を書いてこの国では死罪にあたる次元移動の魔法でナオを転送させたんだ……その次の日どこから嗅ぎつけたのか知らねぇが国兵が俺の家まできてレナを連れて行くとあいつは打ち首にされて死んだ……それから俺はマモルが来るまでその時はレナのサフォールだったセラフィナとアダンと一緒に暮らしていたんだ、だから……マモルが来てくれた時は本当に嬉しかったんだ」

 未だに寂しそうに微笑みながらイーモンがそう言うと、俺はまた涙が出てきそうになり袖で目元を拭うと彼は無言で頭を撫でてくれた。

 

 そして次の日の早朝、目を覚ました俺の顔に昨日助けてくれたコロニが覆うように乗っていた事に驚いた俺は、

 「う、うわぁ!」

 と大きな声を上げて飛び起きるとイーモンが楽しそうに笑いながら、

 「えらく気に入られたなぁ! 彼らは基本人間には近づかないんだが、ライティアとしてしっかり認められたってことだな!」

 そう言いながら豪快に笑っていたのだが俺は複雑な思いで立ち上がると、イーモンの横に座り朝食を取っているとイーモンは静かに立ち上がり、家から持って来た二振りの木刀を手に取り丁度パンを口に突っ込み水で流し込んでいた俺に一振り投げ渡すと、

 「ほら、今から剣の訓練だ! いくぞ‼」

 といった途端自分が持っている木刀で切りかかって来たので俺は咄嗟に座ったまま渡された木刀を横にして受け止め、なんとか跳ね返して立ち上がりさらに突っ込んでくるイーモンの剣を何合も受け止めていて、数時間が経つとさすがに疲れてきて息を切らせるが彼はどこか嬉しそうに顔をほころばせながら木刀を合わせた時微笑みながら、

 「やるなぁ、もしかしてお前がいた世界で何かしていたか?」

 まだ余裕の残る面持ちで言われ俺は腹が立ったのだが必死で受け止めながら、

 「は、はい……! 剣道と柔道を幼い頃からずっとやってて、剣道では部活でインターハイにも出た事があります……!」

 そう苦し気に言うとイーモンは満足そうに頷いて、

 「ほう……ナオはいい育て方をしていたんだな、だが……まだ詰めが甘い!」

 と言って急に力を抜くと前のめりになってがら空きの俺の脇腹を木刀で殴り、倒れて痛みにもだえる俺の鼻先に木刀の先を突きつけると、

 「さっさと起き上がって訓練の続きをするぞ!」

 ニヤリと笑いながら言われて少し腹が立った俺は立ち上がってイーモンと向かい、また木刀での訓練を再開し気が付くと夜になっていたので、俺とイーモンは息を切らせて横たわり嬉しそう声で、

「さすが習っていただけはあるな、だが時々隙が出来るから明日はそこを重点的に訓練するぞ‼」

 そう指摘され呻く俺だったが最後には返事をすると彼は頷いてから勢いよく立ち上がって微笑みながら俺を振り向くと、

 「よし! 今から飯を調達するからついてこい‼」

 そう言うと早速森の中に入って行くので俺も慌ててついて行くと、しばらくして目の前にまたコロニが現れ驚く俺に森の中のどこからか子供のような声で、

 『中々私達に慣れないわね、イーモンはちゃんと訓練をしているのかしら?』

 と大人びた口調で言うと違う声で、

 『大丈夫よ、だってこの子の身体は傷だらけよ? それにさっきまで木で作った剣でイーモンと戦っていたわ、まだまだだけど』

 そう返すとさらに違う声が、

 『それじゃあライティアに相応しいわね! 気持ちも十分だわ、怖がりだけど』

 と三つの声が言い合っている声を困惑しながら聞いていると横からイーモンが、

 「すまねぇが、この辺にしてくれねえか? さすがにマモルが倒れそうだ」

 そう苦笑いしながら頼むと声がピタリと止み青ざめて固まったままの俺を見たイーモンは、ため息をついた後軽く頭を叩くと俺は我に返り青ざめながらイーモンにすがりついて、

 「い、今の声って何ですか⁈ ま、まさか……幽霊……じゃないですよね?」

 と半泣きで幽霊の部分を小さな声にして言っていると次はイーモンが固まりその後震えだすと、限界が来たのか大声で笑いだすので俺は驚いて目を丸くしているとまだ笑いが残るまま手を口に当てて、

 「す、すまん……でもお前、その年で幽霊が怖いだなんて……知らなかった……」

 そう笑いすぎで言葉に詰まりながら言われた俺はさすがに恥ずかしくて顔を赤らめながら、

 「だ、だって、あれは目には見えないじゃないですか! それに悪さをしそうだし……そ、それにしても今の声は誰ですか⁈」

 と口を尖らせながら言うとイーモンはやっと笑い終わったのか咳ばらいをしてから、

 「あれはコロニ達の声だよ、普通の人間には聞こえない特別な声っていうか……とにかく俺達ライティアにしか出来ない事なんだ、慣れるまで時間はかかるが早くなれろ」

 そう言われ声の正体を知った俺は心を落ち着かせるように何度か深呼吸をしてからコロニ達の方を向くと微笑みながら、

 「さ、さっきは驚いて幽霊なんて言ってしまってすみませんでした、それと俺の事を認めてくれてありがとうございます」

 とぎこちなく言うと沈黙が続き数分が経つとコロニの一人が、

 『……見た目より素直な性格なのね、驚いたわ……』

 そう言ってからイーモンに向かって、

 『イーモン、この子は絶対近い未来この世界にはなくてはならない存在になるわ、大事にすることね……それこそ、命に代えてでも……ね』

 と意味深な発言をした後コロニ達は一瞬で消え去りその後俺達は森の中で小動物を狩って夕食を取った後魔法の使い方や言葉を覚えてからその日は眠った。


 そして森へ入ってから3日目の朝、全身筋肉痛で目が覚めた俺は呻きながら起き上がると、まだ隣で眠っているイーモンに微笑んでから昨日の続きをしようと木刀を取った途端、森の中にいたコロニ達が一斉に騒ぎ出したので緊張していると後ろから、

 「なんだよ、お前みたいなガキが新たなライティアなのか? どう見ても軟弱そうだし、異世界間戦争で真っ先に死ぬんじゃねぇか?」

 俺よりも年下にしか見えない奴にゲラゲラと笑いながら見下された俺は、腹が立って口を開きかけたのだがいつの間にか起きていたイーモンが少年の後ろに立っていて、

 「俺の弟子をからかうのも程々にしとけ、サキ! こいつはまだ訓練中なんだ邪魔をするな」

 そう怒りがこもった低い声で言われたサキという少年はあからさまに大きなため息をつくと、

 「しかたないから今日は僕が引いてあげるよ、でも……僕達はいつでも戦争が出来るってことだけは覚えておいたほうがいいよ、君達が次に僕と戦うときは……戦場だ!」

 不敵な笑みを浮かべて言った後砂が散るように消えていき、呆然としている俺の肩をポンと叩いてからイーモンが、

 「あいつの事は気にするな、飯食ってまた剣の訓練を始めるぞ」

 そう言われたのだが俺はふと今更な疑問が浮かんだのでイーモンに向き合い、

 「師匠、異世界間戦争ってどういった内容なんですか? 俺は、ただ戦うより理由を知ったうえで戦いたいです!」

 真剣な面持ちで視線をちゃんと合わせながら尋ねると彼はしばらくためらった後、ゆっくりと彼が夢で見たと言っていた異世界間戦争の事を説明してくれた。

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