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マローネ!!  作者: 桜本 結芽
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第1章 戦士の運命(さだめ)

 学校を早退して家に帰る途中俺は自分の後ろをずっとついてくる【生き物】であるセラフィナが気になり話しかけたかったのだが、彼女が見えない第三者から見れば1人で〔誰か〕と話をしている危ない高校生だと思われそうだったので黙って歩いているが、その分セラフィナに説明して欲しい事を頭の中で整理していると家にあっという間に着いてしまい、気付けば母さんになぜ早く帰ってきたのかを説明するための言い訳を考える事を忘れていたので、頭を抱えて悩むが思いつかず唸っていると後ろから彼女が、

 (私がいるから大丈夫よ、さあ中へ入って)

 と言われ俺は納得がいかなかったのだが、

 (まあ、こいつが言うんだったら……)

 そう無理矢理自分に思い込ませて玄関のドアを開け大きな声で、

 「ただいまー!」

 と言って中へ入るのだが母さんは珍しく出迎えてくれなかったのだがリビングから掃除機の音が聞こえたので、そこへ行くと案の定母さんが得意な鼻歌交じりで掃除機をかけていたのだが俺に気付くと掃除機のスイッチを切り驚いた様子で、

 「あら守、学校早かったのねぇ?」

 そう言われ慌てて言い訳を言おうとしたのだが、母さんは次に目を見開いて俺を素通りすると後ろにいた【生き物】に、

 「久しぶりねぇ、セラフィナちゃん!」

 おっとりとした口調だが嬉しそうに言うが1人混乱する俺は、

 「え……? 母さん、そいつの事知ってるの? ていうか見えるの⁈」

 困惑してそう尋ねると不思議そうな顔で母さんが、

 「だって、セラフィナちゃんは私のお父さんのサフォールの子供だから、私とは姉妹みたいなものよ?」

 と平然と言われたのでさらに混乱する俺に母さんは、

 「守に私の事、話してなかったっけ?」

 そう首を傾げて言われたのだが聞いた事が無いので頷いて返事を返すとセラフィナが、

 (あなた、こんな大事なことをマモルに何も話していなかったの? イーモンと違っておっとりしているのは相変わらずね、この世界へ来れば少しは変わるかと思ったんだけれど、それであなたはインガの親を務められるの? それじゃあ……)

 「ちょ、ちょっと待って!」

 と俺は長引きそうなセラフィナの話を慌てて止めると母さんとセラフィナに同時に見られたので緊張しながら、

 「な、なんか2人の話が全く分からないからちゃんと話してよ、インガってなんの事? イーモンって誰?」

 そう一気に尋ねると母さんは申し訳なさ気に俺の方を向いて、

 「そうよね、ごめんなさい……守には初めから説明するわ、実は私この世界の人間ではなくてこことは別の〔アンチカ〕っていう〔異世界〕から来て祐くんと結婚して守を産んだの、それに祐くんにはもう説明しているの」

 と俺は母さんの説明を聞いて衝撃を受け暫く俯いて黙っていたがふと疑問に思った事があり顔を上げ、

 「その話は何とかわかったけど、それでも一つ分からないことがあるんだ、母さん達はどうやってここに来たの? それに〔異世界〕ってそんな簡単に行き来できるの?」

 そう口早に尋ねると次はセラフィナが、

 (それは〔神の力〕を持った者がサフォールと契約しなければ出来ない事よ、アンチカでは人間とサフォールは一心同体で移動や仕事なんかも一緒なの、でも6万人近いアンチカの人口でもインガを結ぶ者は警備隊や軍が多いのよ、それに〔神の力〕を持っているのは今のところナオの父親しかいないの)

 と丁寧に説明してくれたのだが俺は納得がいかず腕を組んで考えてから、

 「〔異世界〕へくる方法はだいたいわかったんだけど、他にも契約をしてインガってやつをしている人もいるんだろ? だったらここへ来る必要はないんじゃないか?」

 そう言うとセラフィナは鋭い目で俺を見てから、

 「ナオの父イーモンは3年後、この世界とアンチカ王国で異世界間戦争が起こるという夢を見たの、だから彼はそれを防ぐため孫であるあなたを呼んで修行をさせ、異世界間戦争を未然に防ぎたいと考えているのよ」

 と言われた俺は頭が真っ白になり黙っているとさらにセラフィナは、

 「イーモンは〔神の力〕を受け継ぐあなたをインガにしたいのよ」

 そう言われやっと我に返った俺は咄嗟に、

 「えっ!? そ、それじゃあ俺も〔神の力〕ってやつを持ってるって事⁈」

 と大声で尋ねるとセラフィナは頷きながら真剣な面持ちで、

 (そうよ)

 そう言って俺の左腕に鼻を擦り寄せるとまた軽い痛みが走ったので見てみると、そこには〔文字〕がまた浮かんでいたので母さんは驚く俺を見つめながら、

 「そろそろ正式な契約を交わさないとね」

 と言って俺の腕を引いて庭に連れて行くので訳がわからずについて行くと庭の真ん中に立たされてその後セラフィナが頷くと、

 (我、神の力を持つ者と契約する……汝、神の力を持つ者よ、我の力を使い皆を救済せよ)

 そうセラフィナが何か呪文のような言葉を唱えるので慌てていると、突然足元にマンガに出て来るような魔法陣が現れ辺りは薄暗くなっていたと思えば、途端に俺とセラフィナ2人だけになっていて母さんがいなくなっていたので軽くパニックになった俺をセラフィナが見つめると、なぜだか落ち着いて来きて次に頭の隅で言葉が浮かんだので、

 「我、サフォールと契約しライティアとなり、救済することを誓う!」

 と声に出して言うと足元の魔法陣がさらに光だしたので両手で目を覆うとすぐに暗くなり、いつの間にか知らない街の上ギリギリをゆっくりセラフィナに乗って飛んでいて、辺りを見回すとそこの街の人たちが歓声を上げたり帽子を頭の上で振ったりしていたので、俺はその様子を誇らしげに見つめていると喜びの感情がいっぱいに溢れてきてセラフィナの名が刻まれた左腕を突き上げた。


 《契約》の後いつの間にか気を失って倒れていた俺はゆっくりと目を覚ますと、リビングのソファーに横になっていて心配そうな顔の母さんが目の前に見えると俺は起き上がりながら、

 「俺……いつの間に倒れてたんだ?」

 そう言うと母さんは急に抱きしめて来て誇らしげな顔で、

 「おめでとう守! あなたとセラフィナは契約できたのよ!」

 と言われ訳が分からずに、

 「は……?」

 そう呆気に取られていると玄関から、

 「ただいまー!」

 と何も知らない父さんが帰ってきて上機嫌でリビングへ入って来ると、ソファに座っている俺とソファの前で母さんが向かい合って手を繋いでいるのを見て、

 「ど、どうしたんだ!? 大丈夫か⁈」

 そう慌てて駆け寄ってきた父さんを見て俺はつい吹きだしてしまい、呆気に取られる父さんをよそに母さんはとても嬉しそうに、

 「祐くん、守はもう戦士になったのよ! これで異世界間戦争を防げるわね!」

 そう言ってクルクルと回りながら、

 「今夜はごちそうを作らないと!」

 と父さんよりも上機嫌でフライパンを手に取り鼻歌交じりで晩ご飯を作り始めたので、訳がわかっていない父さんは呆気に取られて口を開けていたのだが横でセラフィナが、

 (私の鼻に触れてみて)

 そう言われたので疑問に思いながらもセラフィナの鼻に触れてみると突然父さんが、

 「う、うわっ!」

 と驚いて尻もちをついてから、

 「ネ、ネコが……でかいネコ! は、羽が⁈」

 そう言ってセラフィナを指差し初めどういう事か分からなかったのだが、すぐに自分が彼女に触れた事で父さんにも見えていると気付き確かめるように尋ねると、

 (そう、マモルが私に触れるとこの世界の人達にも私が見えるの)

 と言われたので納得したように俺は頷いていると父さんは気を取り直しメガネをかけ直してから、

 「き、君が奈央ちゃんが言っていたセラフィナちゃんだね……はじめまして、先程は取り乱してしまってすまない」

 そう顔を赤くして頭の後ろを擦りながら言うとセラフィナは、

 (大丈夫よ、この世界ではあなたの反応が普通だと思うわ、でもインガの父になるのだからもっと自信を持って)

 と言われた父さんは真剣な面持ちで頷くとセラフィナは満足気に頷き返してから俺に向き直り、

 (マモル、あなたはもうインガになったのだからこれから気を引き締めて修行しなさい)

 そう言われた俺は驚いて、

 「えっ! しゅ、修行って何するの? なんかきつそうなんだけど……?」

 と少し引き気味に言うと、

 (何言っているの! 修行しないとインガとしてやっていけないわよ!?)

 そう怒られ彼女はさらにため息をつきながら、

 (それじゃあ、明日にはアンチカ王国に行くから、心の準備もしておいてね?)

 と急に言われた俺は驚きすぎて大きな声で、

 「ちょ、ちょっと待ってよ、アンチカ王国って異世界なんだろ? どうやって行くんだよ⁈ それに明日って早すぎない⁈」

 そう食ってかかる俺にセラフィナは、

 (大丈夫よ、私が教えるわ!)

 そう説得されるが俺はまだ食ってかかろうと、

 「学校は……」

 とそこまで言うとセラフィナは食い気味に、

 (学校はナオが何とかしてくれるわ!)

 そう言われ何も言えなくなった俺は黙っていると横から母さんが、

 「大丈夫よ守! 私のお父さんもいるし、何とかなるわ!」

 と母さんは力強くガッツポーズをして俺が《異世界》へ行く事を本当に喜んでいて呆然と脱力する俺を置いて父さんと母さんは喜びの余り騒いでいた。


 次の日俺はアンチカ王国へと行くために決心を固めセラフィナと家族と共に家の庭に出ていて、母さんは目に涙を溜めながら、

 「守、しっかりね! 修行は積めば積むほど強くなるから!」

 そう言って俺を優しく抱きしめたあと家族に別れを言い、俺は庭の真ん中で猫のように座るセラフィナの横に立ち彼女に頷いて合図を送るとセラフィナが、

 (それじゃあ、私が言った呪文を後から唱えて)

 と言うと目を閉じ、

 (我、汝と共に元の場所へと戻る、神よ我らに力を与えよ!)

 俺とセラフィナが呪文らしき言葉を唱え終わると同時に光に包まれ、一瞬浮遊感に包まれた俺は次の瞬間夕暮れ時の知らない部屋にいた。

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