第9章 新たな力そして戦争の終結
セラフィナに乗って数分程飛び続けたどり着いた俺達は以前イーモンと来た王都は平穏そうだったのだが、今では俺がいた異世界の兵隊とアンチカ王国の兵士達が戦っていてる事に絶句してその場で浮いていると、異世界の兵士達が俺達に気付きその内の数人が絶叫しながら銃を撃ってきたので慌てて壁を作りそれを防ぐと、彼等は真っ青な顔になっていたので俺はため息をついて兵士の中に降りようとすると、恐怖で身体を震わせていたので出来るだけ声を張り上げ、
「安心してください! 俺達は敵ではありません、だから銃をおろして!」
そう頼むと上官らしい人が拡声器を使って、
「そ、その証拠でもあるのかね⁈ 少年‼」
と言われたので意を決して彼らの中に降りると半径5メートルの距離を開けて離れて警戒している彼らを見回したあと、この世界の事やサフォールの事を全て説明すると兵士の顔が恐怖から絶望へと変わっていく様子を見て、俺が黙っていると見た目が若そうな人が前に出て来て、
「そ、それでは自分達はどうすればいいんだい? 信じたくはないがここには魔法があるんだろう?」
そう自信が持てないような表情で尋ねられた俺は気を引き締め、
「まずはこの世界で銃器を使っても魔法で弾かれ意味がないので戦うのは俺と彼女だけです、なので今現在の怪我人を別の場所に移して処置をお願いします」
と静かに指示を出すと初めは戸惑っていた兵士達だったが次第に落ち着きを取り戻し、次々にテントを張り怪我人が運ばれて行き治療される様子を見て安心した俺は頷いて、
「後はそのままお願いします、この国の兵士たちは俺達が何とかしますので‼」
そう微笑んで言うと俺はセラフィナに乗り心を繋ぐと飛び立ち、アンチカ王国の兵士達の前に立ちふさがると睨みつけながら、
「こんな事はもうやめろ! ディオパタ王は何を企んでいるんだ? 異世界の人達と戦っても今より損失が大きくなるだけだろう⁈」
と大声で止めようとしたのだが逆に神経を逆撫でしてしまったようで、殺気が増していく様子を目の当たりにした俺はため息をついて剣を構えるとセラフィナに、
『きつい戦いになりそうだけど……気をつけろよ、セラフィナ!』
そう言って駆けて来る軍勢に飛び込むと彼女も一緒に動き、
『それはマモルも同じ事、無理をしないでね!』
と一瞬の間に言葉を交わし俺は剣と魔法を使って兵士達をなぎ倒していき、無理矢理ディオパタ王を引きずりだそうと王城に近づいて行き、門の前まで力づくで突破した時には戦意喪失した兵士達は散り散りに敗走していたので、俺達は逃げて行く人達には目を向けずひたすら城の中を走って進み途中で兵士に無理やり聞いた王の部屋の前まで行くと足を止め、魔力で鍵を開けて中へ入ると隅の方で怯えるディオパタ王を見つけた俺は、彼に剣を向けると突然悲鳴を上げガタガタと震えだすので俺はため息をついてしゃがむと、
「ディオパタ王、異世界間戦争の終結を宣言してください、そして元の世界へ戻すと言ってください」
そう自分的には冷静に優しく伝えたつもりだったのだが、王は支離滅裂な言葉を言い出し俺が混乱していると、後ろから刃が混じった風が吹いて王の首を狙おうとしていたので咄嗟に壁を作ってそれを防ぐと立ち上がって風を起こした人物を睨みつけながら、
「な、なんだよあんた! 王の臣下がこんな事をしてもいいのかよ⁈」
と怒りを露わに問いただすとそいつはフッと笑い俺に見下すような視線を向けると、
「彼はすでに用済みになったものだから守らなくてもいいのに……まぁそんな事より自己紹介が遅れましたね、私はアテウルと申します……職は神官と医師を兼ねており医師としては催眠療法が主となっております……なので人の心を操れるのですよ、彼のようにね……」
ゆったりとした口調でそう言って横に静かに移動すると、そこには目に恐怖の光が広がり絶望に震える目をしたサキが立っていて、アテウルが彼の肩に手を置くと身体を跳ねてから顔を引きつらせていて、それを見たアテウルがサキの耳元に近づき、
「さぁ、早くこの邪魔者を消しなさい、さもないとお前はまたあの頃に戻るんだぞ……? 彼の言葉一つで、お前はまたネズミのように汚い生活をしなければいけなくなる」
と囁きながらディオパタ王を指差すとサキの震えは倍に増していき、最後には糸が切れたように絶叫していたので驚いた俺が耳を塞いでいると、セラフィナに慌てた様子で呼ばれ切りかかって来るサキに気付き咄嗟に剣を上げて受け止めるのだが、部屋の隅まで飛ばされ身体をひねって壁に足を着け床に降りるがサキは急激に間合いを詰め切りかかって来るので、それもなんとか受け止めるのだが前よりも力が上がっているサキに苦戦を強いられていた俺は、アテウルの呪文詠唱に気付くのだが一瞬遅れて足元を取られ体勢を崩した所をおそわれ背中を切られた俺は、遠のく意識の中セラフィナが悲しみで絶叫する声とアテウルの勝利に浸った高笑いが聞こえた後意識を失い、次の瞬間懐かしい声に呼ばれ目を覚ますとそこにはイーモンが以前と変わらない笑顔であぐらを組んで座っていたので、俺は信じられない想いで目を見開いていると彼は、
『どうした? こんなとこにまで来て、異世界間戦争は片付いたのか?』
そう尋ねられた俺は怒られる事を覚悟して全て話すが彼は怒らず、真剣な面持ちで俺の顔をじっと見つめながら、
『マモル、お前はまだ全然力を出していない、そろそろ本領発揮しねぇと自分も大切な人達すらも守れねぇんだぞ……? ほら、セラフィナが呼んでいるから行ってやれ! お前なら大丈夫だ、セラフィナがいるし俺やアダンもいる、だから心配するな‼ ずっと見守っててやるから……行けマモル、俺の愛しい孫……頑張るんだぞ‼』
と最後は優しく微笑みながら俺の背中を軽く押して言うと俺は暗闇の中へと歩いて行き、ふと目を開けると背中の痛みに耐えるように呻くと立ち上がり剣を構えて戦闘態勢に入るのだが、本当は立っているのもやっとの状況なのだが打破するために目を瞑って考えていると、心の中に赤い鎖が繋がっていてなんとなく剣で切ってみると嘘みたいに痛みが引いて行き、普通に動けるまでになったので改めて剣を構えると驚きの表情で見ているアテウルに歯を出してニッと笑うと、俺は走り出し一瞬でサキの間合いに入ると横腹を強く蹴り飛ばし魔法で束縛して動きを止めるとアテウルと繋がっている黒い鎖を断ち切ると、先ほどまで恐怖に蝕まれいたサキは気が抜けたように動かなくなり、俺は安心して息をつくとアテウルに向き直り彼を睨みつけると、
「サキはもうあんたの操り人形ではなくなったぞ!? 次はあんたがかかって来いよ‼」
威嚇するように怒鳴るとアテウルは掌で顔を覆い震えていたので、警戒しながら見つめていると彼は突然大声で笑いだし、さらに警戒を強めていると笑い終わったアテウルが、
「そうか、そういう事ですか! なら私がでしゃばる事はできませんね‼ では……ここは私が引きましょう、また逢う日までお元気で……」
そう言って不吉な笑みを浮かべると黒い影を出し消えていった。




