プロローグ 始まりの出会い
――眼下では街が燃え家が崩れていた――
俺はその様子を空中で眺めていてその時は何も感じなかったのだが、そのすぐ後に怒りが込み上げ前を向くと知らない男が見た事もない【生き物】に乗っていて、そいつはほくそ笑んで何かを呟くが聞こえず俺は顔をしかめた途端、男が乗っていた【生き物】が口を大きく開け超音波のようなものを出すと、いつの間にか俺も乗っていた【生き物】もろとも落下した。
「う、うわっ」
そして俺はベッドの上で飛び起き辺りを見回すと自分の部屋にいたので夢だと気付くと、
「何だよ、夢オチか……」
と不機嫌に呟きながらベッドから立ち上がると同時に下から、
「守ー! 早く起きないと遅刻しちゃうわよー?」
そう母さんの声がして俺はやっとベッドの上に置いてある時計を見るとほぼ遅刻決定の時間だったので慌てながら時計を置くと、
「ヤベェ!」
と叫び急いで支度をして1階に降りると母さんがキッチンでいつものように鼻歌まじりに朝食を作っていたのだが、俺は机に置かれた弁当だけを持って家を出ると学校への道のりを全力で走って行きその途中突然俺の頭上が暗くなり、驚いて見上げるとそこには夢の中で見た【生き物】が空を飛んでいて、そいつが顔を上げて何かを呟いた途端周りの人達が一斉に時間が止まったように動かなくなり、さらに驚いて立ち止まる俺の前にそいつは降りて来ると、口を開けまた何かを呟くと右腕に違和感のような痛みが走りふと見てみるとそこに《文字》が浮かんでいて凝視するが、こんな《文字》は見たことも聞いた事も無いため初めは読めなかったがなぜか頭の中に《言葉》が浮かんで来て、
「セ、セラ……フィナ?」
そう口に出すと頭の中に、
(はい)
と声が響いてきたので驚く俺にまた女性の声で、
(怯えないで、私はあなたのマローネなのだから)
そう言われ俺は慌てて辺りを見回したのだが誰も動いてはおらず困惑していたが、ふと天啓のように頭に響くこの声はこの【生き物】からするのだと気付くと、そいつは俺の右腕にすり寄って猫のように喉を鳴らすと次第に落ち着きを取り戻していき、次に好奇心に駆られたので【生き物】を向くとそいつに、
「お前ってなに? どこから来たんだ?」
と質問をするとそいつは俺を見上げて穏やかな口調で、
(私はサフォールのセラフィナ、この世界とは違う異世界からこの世界を守るためにあなたとインガ……つまり戦士の契約を結ぶためにここへ来たの、そして私は無事あなたとマローネになれた)
そう説明されるのだが全く意味が分からなくて混乱する俺にそいつは、
(また後で詳しく説明するわ、今は学校へ行かないといけないんでしょう?)
と言われはっと気付いた俺にその【生き物】セラフィナは、
(今は魔法で時間を止めているけれどすぐに戻すわね、まだ走れば間に合うかも)
そう言ってそいつはまた空中を見上げると辺りの喧騒が戻り呆然としていると、
(さあ、早く行かないと)
と言って俺は背中を鼻先で押され腕時計を見てみるとさらに遅刻ギリギリで慌てて走って行くのだが、やはり遅刻してしまい門の前で仁王立ちしていた生徒指導の体育教師にみっちりと叱られその後、遅れて教室へ入ると友人の新田 晴登が手を振りながら、
「守、今日はついてねーなぁ!」
そうニヤつきながら言っていたのだが俺は何も言わずに席に着くと、
「でも守が遅刻なんて珍しいな、何があったんだ? キレーなおねえさんに逆ナンされてたとか?」
とずっとニヤケ顔で言う晴登に俺は無愛想に、
「別に、そんなんじゃねーよ」
そう返すと俺は先程から気になっていた事を彼に聞こうと思いずっと後ろにいるセラフィナを見ながら指を差すと、
「なぁ晴登、《こいつ》見えるか?」
と尋ねると俺の指の先を凝視してから晴登が、
「何も見えねぇけど……お前幽霊でも見えるようになったの? ていうかマジで怖いこと言うなって! 俺そういうの苦手だって知ってるだろ!?」
そう言って震える仕草をしてから笑い飛ばしていたのだが晴登の言葉を聞いた俺は真剣な顔で、
「悪い、俺腹痛いから医務室に行ってくる、そう担任にも言っといて」
と言い立ち上がると晴登は心配そうに、
「お、おう……大丈夫か?」
そう言われたので俺は微笑みながら、
「ああ、寝たら良くなると思う……サンキュ、心配してくれて」
と言ってから俺は教室を出ると医務室へ向かう途中ずっと後ろをついてくるセラフィナに、
「何で俺以外お前が見えないんだ? 俺はこんなにもはっきり見えるのに、それに猫……では無いよな?鳥の羽みたいなの生えてるしデカいし……それ以前に喋ってるし」
そう1人で呟きながら考えているとセラフィナは、
(さっきも言ったけど私はこの場所とは違う世界から来たの、だからこの世界の人達には見えないようになっているのよ、それと遥か昔この世界に来た事があるっていうサフォールが言っていたのだけれど私達はこの世界では〔グリフォン〕といわれているみたいなの、何百年も前の事だけど)
と言われさらに混乱していると後ろから、
「おい、中辻! 今は授業中だぞ? 早く教室へ戻りなさい!」
そう聞き覚えのある声がしたので振り返ると案の定視線の先には生徒指導の体育教師が仁王立ちしていたが、すぐに大股で俺の方へ近付いて来るのでうんざりしたような顔でいると後ろからセラフィナが、
(風邪をひいているかもしれないと言って休んで、今からあなたの家に行くわよ)
と言ってきたので俺は少し驚いたが次にさも体がだるそうにして、
「すみません、少し熱があるみたいなので医務室へ行こうとしていました」
そう言うと体育教師は気づかわし気に、
「そうか、ならあまり無理をしない方がいい、今朝もそれで遅刻したのか?」
と聞かれたので俺は機転を利かせて頷くと体育教師は心配そうに、
「そうか、それだったら早く帰って休みなさい」
そう言われたので俺は、
「そうします」
と言って教室へ戻りカバンを取りに行ってから今日は午前中で帰った。