決着
「フヒヒヒヒ、あなたではわたしには勝てないデース、ヒヒヒヒヒヒ」
「なめんな!」
真凛はモスキートに接近しオーシャンブローの連撃を浴びせる。
モスキートは大口をたたいているものの、戦況は真凛の圧倒的有利だった。
「これで決める! メガロドンジョ……」
真凛の渾身のアッパーが決まりかけた瞬間だった。
「ばぁ」
モスキートが腕で顔を隠した後腕をどけると、そこには真凛の母親の顔があった。
「なっ!?」
「真凛、やめて」
驚いて攻撃が止まる、その瞬間モスキートは鎌の斬撃で真凛を吹き飛ばした。
「キャァッ!」
モスキートがもう一度顔を隠すと、元のピエロ面に戻る。
「ヒヒヒヒヒ、絶対攻撃できない、ヒヒヒヒ」
モスキートが顔を隠すたびに、顔が入れ替わり、母、父、姉、友人へところころかわっていく。
「でも一番面白いのはこれデース。ヒヒヒヒ」
最後に顔を入れ替えたのは苦し気な表情をしたカルロスだった。
「痛い、助けてくれ……」
カルロスと全く同じ声で痛みを訴える。
「痛い、苦しい、なぜ私がこんな目に、助けてくれ」
真凛はなんとか体を持ち上げるが、カルロスの顔で迫るモスキートに恐怖した。
「私は君のせいでこんなことになった。どうしてくれるんだ」
カルロスの目や口から血があふれ出る。その光景が真凛のトラウマである、カルロスの爆破シーンを思い出させる。
「ヒヒヒヒヒ、あなたが殺した罪を受け入れるのデース。人殺しのマリンちゃん、人殺し、人殺し、ヒヒヒヒ」
モスキートは真凛の中で殺人が禁忌であると知って、わざと強調する。
真凛が戦えなくなり、モスキートは笑みを浮かべる。だがそこに立ちはだかったのはマキシマムだった。
「我が息子よ、助けてくれ。苦しいのだ……」
マキシマムはカルロスの格好をしたモスキートの前に立つ。
モスキートは背中に鎌を隠し、マキシマムが射程に入った瞬間首を斬り落としてやると考えていた。
しかし、その目論見は反対に首を切り落とされ失敗する。
マキシマムが全くの無表情でカルロスの首を斬り落としたのだった。
「な、なぜだ息子よ……」
「俺の親父が筋肉の話をしないわけがないんだよ、偽物野郎」
「ヒヒヒヒ」
モスキートは元の姿に戻りマキシマムと対峙する。
真凛に比べればマキシマムなんぞ取るに足らない雑魚だ。しかし真凛が復活するのだけは避けたい。そう思った、だが。
「おーい、百目鬼ー頑張れー!」
下で竜騎士を片付けた、あの忌々しい王が帰って来たのだった。
「キヒ……」
あの男だけは呪術で殺してやる。それも真凛の前で粉々に吹っ飛ばし、絶望の炎にしてやる。
そう思いモスキートは王に対して呪術をかけようとする。
「お前、なにやってんの?」
そのことに気づいた真凛が、一瞬でゼロ距離まで詰めてきたのだった。
「!?」
「あの人に手を出したら許さへんで」
ぞっと底冷えをするような声に、今度はモスキートが恐怖する番だった。
「フヒヒヒヒヒ」
真凛のトラウマである笑い声をあげる。だがそんなものは苦し紛れも甚だしい。
「ぶべぇっ!」
モスキートの顔面に強烈な拳がさく裂し、ゴムボールのように吹っ飛んでいく。
すぐさま追撃をがくる、その瞬間モスキートは真凛の母の顔へとかわる。
「やめて真凛、お母さんを殴らないで」
「はぁっ!!」
全く躊躇いなく真凛はモスキートの顔面をめり込むくらい殴りつけた。
モスキートは壁と拳に挟まれ宙づりにされる。
「ヒヒ……」
「なぁ、もういっぺん笑ってみーや」
「ヒ……」
モスキートの体はそのまま崩れ落ち、動かなくなった。
「終わっ……た」
真凛はその場にぺたりと腰を下ろした。
「派手にやったなー」
俺はボロボロになった別塔へと入ると、ぺたりと腰を下ろした百目鬼に近づく。
「勝ったみたいだな」
「うん、なんとか」
「最後のはかっこよかったぞ」
「み、見てたん?」
「ああ」
「もう、恥ずかしいわ」
少しだけ頬を赤くする百目鬼が可愛く見える。
「あのさ、百目鬼、どうでもいいこと聞いていい?」
「なに?」
「お前そんな乳でかかったっけ?」
言われて視線を下ろすと、パンパンな果実が実っていた。
「な、なんでやろ……ロヴェルタと融合したからかな」
真凛が胸についた結晶石を外すと、美〇女戦士的なコスチュームは消え、元の百目鬼の姿に戻った。
だが乳はでかくなったままだった。
「なおらへん……」
「い、いいんじゃないか、増えたなら」
「う、うん……」
二人で話しているとマキシマムが足を引きずりながらやってきた。
「終わったみたいだな。感謝するぜ梶王」
「おう、元気そうでなにより。下に同盟軍の連中そろってたぞ」
「そうか、後で顔を出す」
「あっ、梶君背中の傷大丈夫?」
「ああ、百目鬼の止血でなんとか。あんま痛くもねぇ」
「それなら良かっ……」
そこまで言って全員が気づいた。まだ終わってない。ナルシストの野郎を倒してないぞと。
「死ねぇ!!」
突如響き渡る声に驚いて振り返る。
カチャノフのクラー剣を持って、ナルシストが襲い掛かって来たのだった。
その瞬間俺はガントレットを展開し、剣を防ぐ。
ギンっと鈍い音が鳴り、ガントレットから火花が上がる。
「しつけーんだよ、オメーは!」
「お前さえいなければ! ボクはボクは!」
「聖十字騎士団の力まで借りて負けたくせに往生際の悪い奴め!」
「うるさい、黙……」
ナルシストが叫んだ瞬間だった、突如ぐにゃりと空間が歪む。
「な、なんだこれ」
「まさかクラーケンの次元圧潰!?」
「うっ!」
視界が歪んでいる最中、百目鬼の水結晶が輝いているのがわかる。
俺のポケットからも白と緑の残りの結晶石が光り輝いている。
別塔は大きく振動し、傾いているのがわかる。
「やべー、崩れるぞ!」
「マキシマム、百目鬼を頼む!」
「わかった!」
「待って、梶君一緒に!」
叫ぶ百目鬼を抱えてマキシマムは離脱する。
「おら、お前も逃げないと死ぬぞ」
「お前を道連れにできるなら本望だね」
「めんどくさい奴め!」
ナルシスの剣を弾いて、離脱しようと思ったが俺の体は空間のひずみへと引きずり込まれて行った。
「行方不明者は王と百目鬼真凛の二人か……」
「悪いな。抱えて逃げたんだが、途中で暴れて梶王のところに戻っていっちまったんだ」
「よほど思い入れが強かったのだろう」
ぺこりと頭を下げるマキシマムに頷いてから、兵の報告を聞く。
「敵軍にも数名行方不明者が出ています。別塔の倒壊により下敷きになっている可能性もありますが」
「わかった、お前たちは瓦礫の撤去作業を続けてくれ。魔力探知のできるものを総動員して行方不明者の捜索を行う。近隣からも人手を借りてくれ。ただし王が行方不明になったことはチャリオット以外には誰にも言わないよう徹底するように」
「はっ」
ディーは戦争が終わり、後処理を行っていた。
「恐らくクラー剣の次元圧潰が原因でさぁ。本当にすいやせん、あっしがあんなもん作っちまったせいで、兄貴は……」
カチャノフは両膝をつき、地面に頭をすりつけるくらい深く謝罪する。
「剣に罪はないでしょう。それに王が死んだわけではありません。もし死んだのであれば、王の死亡通知がくるはずです」
そういうディーの面持ちも暗い。
どうなったかわからないことに安易に大丈夫だとは言えなかったのだ。
「オリオンはどうなった?」
「戦闘で力を使い果たし寝ています。しばらくは動けないと思います」
「動けるようになったら荒れるな……王の代行も決めなくてはならない」
その時アマゾネスに連れられた青年がやってくる。
「離せ、ボクを誰だと思ってるんだ。こんなことしてタダですむと思うなよ!」
ディーは最初誰だかわからず、何度も青年の顔を見返す。
そしてようやくそれがナルシス王だと気づいて息を飲んだ。
なぜなら青年の顔は福笑いのように顔のパーツがいがんでおり、とても美しかったナルシスの顔とは思わなかったからだ。
「ナルシス王……なのか?」
とらえたアマゾネスが小声で耳打ちする。
「どうやら呪術師のトラップを踏んだようで、顔面が崩れています。本人はまだ気づいていないようですが」
「一番残酷な罰だな……」
ディーは捕えたナルシスに敗戦宣言をさせると、それをもって今回のナルシス王戦は終了となった。
後日ペナルティ審議が受理され、ナルシスは王の権利を永久剥奪され、聖十字騎士団には一月の戦争停止命令と罰金命令が下された。
その怒り誰が為に 了
リザルト
オリオンが切り札殺しを習得。断空剣を習得。
アイテムスターダストドライバーを入手。
団員クラーケンが成熟期へと成長。
オンディーヌ・ナルシス領、および領民を獲得。
元同盟軍ブルードラゴンが梶チャリオットへと併合。梶チャリオット下位組織ブルードラゴンとして再結成。
ニコライ・マキシマムが正式加入。
ニコライ・マキシマム AGE18
レアリティHR 戦士
筋力A ======
敏捷D ===
技量D ===
体力C ====
魔力F =
忠誠A ======
信仰F =
イァン・カチャノフが正式加入。
イァン・カチャノフ AGE22
レアリティSR 鍛冶師
筋力A ======
敏捷D ===
技量B =====
体力B =====
魔力C ====
忠誠A ======
信仰F =
スキル アトミックブラックスミス 魔物の素材と武器を融合させ、魔物の特性を持つ武器を作り出すことが可能。
行方不明者 梶勇咲
百目鬼真凛
連続勝利ボーナスにより10連スキルガチャチケットを入手。
キャラクターエディターチケットを入手。
切り札殺し 相手のレアリティが高位であればあるほどステータスが上昇する。ただし相手のステータスに依存する為、高レアであってもステータスが低ければ上昇率は低い。
断空剣 結晶剣に内包された魔力を解放し、強力な光の剣へとかえ、強力な魔力装甲をも貫き、城への直接攻撃をも可能にする。王の魔力サポートなしでは発動することができない。また、一度の放出で魔力をほとんど放出する為、再使用には充填が必要。
スターダストドライバー ジオストーンに封印されていたガントレット型の魔器。三発の魔力弾が装填されており、インパクトの瞬間エネルギーを敵の中に放出する。
装填されている弾頭には名前がついており、威力が異なっている。
後の弾頭ほど威力が強力になっているが、その分反動も大きく、使用者に対する配慮が一切されていない。使用したエネルギーを勝手に使用者から吸収する欠陥武器でもある。
長かったナルシス編が終わり、次回から新章へと移ります。
新章では異世界から現実世界へと戻った主人公が、異世界の記憶を失いながらも失った記憶を探し、また現実世界で起こる事件に巻き込まれるお話を書いています。
異世界成分が少ない為、長い番外編と思って読んでいただけるとよいかと。
現在までで文庫本でいうと五巻から六巻相当にあたる文量をお読みいただきありがとうございます。
それでは皆様また次回新章でお会いしましょう。
書籍版ガチャ姫発売中です。
よろしくお願いします。




