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弟王

 気づけば俺の体は城に戻っていた。

 いつものベッドで寝かされていて、やらかしたと大慌てで起きる。

 いろいろなところが痛んだが、傷の手当は終わっているらしく、負傷した場所には包帯が巻かれていた。


「やっばい、今何時だ」


 今日が草刈りの期限だ。きっとミッケルさんめちゃくちゃ怒ってるぞ。

 大慌てで城を出てフラッシュムーブを使いラインハルト城下町へ、そこから馬車を使ってミッケルさんの領地へと向かった。

 その頃には既に日は頂点を過ぎようとしていた。


「正午か、やばいな。今からやっても絶対間に合わないし、助けを求めようとしても城に人いないし、どうなってんだ?」


 そわそわした思いで、ミッケル領につくと、俺は我が目を疑った。

 そこにはアマゾネス総出で草刈りを行っている姿があったのだった。


「おっ……おっ?」


 呆気にとられていると、アギとアデラがこちらに気づき近づいてくる。


「我が王、寝てて良かった、なぜ来たか?」

「なぜって……そりゃ依頼の期日だし」


 と言ってもさすがに二百人を超える規模で草刈りを行えば、半日程度で終わるようで、もうほとんど草は残っておらず、最後の片付けに入っている段階だった。


「こちら終わりましたー」

「こちらもです」

「よろしい、フィーナの班が遅れている、そちらに回れ」

「了解」


 きびきびとした動きで、どんどん作業が消化されていく。


「我が王、まだ傷痛むであろう。寝てていい」

「う、うん」


 俺がボケっと突っ立ってるうちに作業は全て終わった。


「王よ、これでよろしいか? まだ時間はあるのでもう少し範囲は広げられるが。一応アギの言っていた場所までは全て終わった」

「いや、いいと思う。ミッケルさんに言ってくる」


 ミッケルさんの屋敷に行こうと思ったが、俺と同じように目を丸くしたミッケルさんの姿があった。

 恐らく今日も怒鳴り散らしてやろうと思ったが、まさかこんな大人数でやってくるとは思っていなかったのだろう。


「いやー梶王、予定通り進めてくれて感謝しているよ」

「あ、あぁどうも」

「そのついでと言ってはなんなんだが、少し遅れた分、砂浜の方も……」


 うげ、まだなんか頼んでくるつもりかと思ったが、話を聞いていたアデラと数人のアマゾネスが前に出る。


「依頼の範囲は全て期日内に終わらせた。遅れはでていないはずだし、むしろ早く終わっている。あまり我がチャリオットの王を小間使いにしないでいただきたい」


 凄みのあるお姉さん達がミッケルさんを威圧すると、ミッケルさんは「そうっすねー、ありがとうございやしたー」とすっこんで行った。


「その、いいのか? 草刈りなんかやらせて?」

「新たなる主となるものの願い。いかようにもお使うと良い。此度の罰は城へと帰ってからに」


 アデラは深く俺に頭を下げ、俺もつられて頭を下げる。なんだこれ。


 帰りにステファンギルドに寄り、四十人分の報酬と、ミッケルさんがつけてくれた海近くのリゾート地の割引券、それと昨日捕まえた盗賊団邪竜の尾に賭けられていた報奨金が一度に支払われ、俺のスマホには凄い額のお金が一気に振り込まれていた。


「う、うわ、すげぇ……」


 変な笑いがこみあげてきた。

 ホクホク顔の俺が城に帰ると、なんか怖い顔したディーと、キュベレー、アデラが待ち構えていた。


「お話があります。中へ」


 嫌な予感を感じつつもディーに促されて城の中へ入り、会議室に使っている食堂で話を聞く。


「王様、アデラから話がありました。その怪我は全て彼女達の責任で出来たと」

「知らん」

「また、王様がわざわざ受けた仕事を放棄し、酒場で飲んでいたとも報告されています」

「知らん。知らん。依頼は終わった」

「…………王様、あまり仲間だからと言って甘やかすのは示しがつきません」

「知らん。知らん。知らん。別にトラブルなんておきてない。盗賊団も捕まえたし臨時の報奨金も入った」

「その結果良ければ全て良しという考えは賛同できません」


 キュベレーとアデラは頭を下げたままになっている。


「王よ、見せしめは必要だ」


 そう言ってキュベレーは剣を俺に手渡す。


「彼女も覚悟している。そのかわり、他のものは心をいれかえて王に仕えると言っているので、どうか他の仲間たちには寛大な処置を頼む。我とアデラ、アマゾネスたちのトップの首があれば彼女達も誰が一番なのか理解してくれるはずだ。後はアギがなんとかしてれる」

「知らん。そんな話聞きたくもないわ」

「しかし王」

「しかしもおかしもあるか。首をさしだして終わりにする根性が気に食わん。自分が間違ってたと思うなら自分の行動で示せ。死んで解決しようなんてくだらない手段を使うな」


 くだらん、実にくだらん。

 お前の話はつまらんと、俺はプリプリしながら食堂を出る。


「処罰は……」

「王が知らんといっているのだから処罰のしようがないだろう」


 ディーは呆れているが、こうなることは大体予想がついていたのであろう口元は小さく上がっていた。


「あなたはどうなんだ?」


 ディーは頭を下げっぱなしのアデラにふる。


「男……、いや、かの王は弱きものであることは間違いありません。しかし、王は己の戦いに準じていおり、我々とは別の形で仲間を守ろうとしています。その気持ちと意識は我らと相違はなく、前に立って戦う王の気質も感じています」

「ほぅ」

「ですが先ほども言った通り、王はか弱きものであり、我ら一族を含め全力で守る必要を感じます。ここからは我々の私事で申し訳ありませんが、自分とお姉さまの二人で意見を二分するのは不毛であり、一族の損にしかなりませぬ。よって、男女の差別的話をなくし、今ある最大の課題である儀式の問題にあたるべきと判断しました」


 キュベレーは聞き終わると、小さく頷く。


「お前が認めたなら本物であろう」

「別に、自分は認めたわけでは」

「よくそんな女の顔をして言えたものだ」


 アデラは赤くなった頬をおさえた。


「申し訳ありません。年甲斐もなく」

「いや、我もお前もまだ若い。女を捨てるには早い」

「オッホン。そのことは聞かなかったことにする」


 咳ばらいをしながらディーは二人の会話に耳を塞ぎながら、また王が忙しくなると小さな笑みをこぼした。


 翌日 

 朝早くに大きな荷車を引いたリカールと、その従業員の女の子達が城へとつめかけて来た。

 俺とディーは何事だと思い、崩れた城門前で話を聞く。


「グンモーニン!」

「あら、フェアリーエンジェルの……」

「そっリカールよ! ここ、今土地を売り出し中なんでしょ?」

「売り出しというか、移民を募ってるんですが」

「どっちでもいいわよ! 先日の盗賊団のせいで、お店の中無茶苦茶にされちゃったのと、女の子が何人か辞めちゃってね。どこか安くで商売できるところを探してたのよ!」

「それでここに?」

「そうよ! 話を聞くと、ここ温泉が出るんでしょ? 温泉に酒場はつきものよ!」

「そりゃ確かに」

「じゃあ今日からよろしくね!」


 リカールはむちゅっと投げキッスを俺に寄越すと、そのまま荷車を引いて領地内に建設中の民家の一つを酒場へと改築するのだった。


「また濃い人がきましたね……」

「だな……」


 縁とは恐ろしいものである。


「ウチ女の子ばっかりだけど、キャバクラって流行るのかな……」





エピローグ


 フェアリーエンジェルでの盗賊団の一件以来、俺には常にハイアマゾネスの護衛がつくようになった。

 レイランやオリオンたちがいるときはそっと控えているだけだが、いないときはずっと俺をついて回っている。

 正直いらんのだが、と思っているのだが、向こうも厚意でやっているわけだし、信頼の証でもあるのだろう。

 それに王として護衛なんかいらんとも言えないのでそのままにしている。

 だが、常にアマゾネスのお姉さんが一人、ないし二人がずっと傍についているのだが、距離感がいちまいちよくわからない……。

 というか近い、驚くほど近い。精神的にではなく物理的に。

 例えば市場でリンゴを手に取って眺めていると、それよりこちらの方がいいと、良いリンゴを見繕って渡してくれる。

 それだけ聞くと普通だが、それがなぜか後ろから、俺を抱きこむようにして手を握りながらするのだ。

 そんなに密着する必要ある? と思うのだが、ま、まぁ厚意なのかなと思い流した。

 しかし寝る時も肉布団だと言って、二人のアマゾネスのお姉さんが挟んで添い寝してくれるので、段々この甘やかされっぷりがこわくなってきた。

 そのことをアギに話す。


「アギ、なんか俺お前のお姉さんたちにめっちゃ甘やかされてるんだが」

「それいいこと」

「そうだろうか。なんか赤ん坊レベルで甘やかされてる気がする。アマゾネスってもっと厳格で、自分のことは自分でしろって言うタイプなんじゃないのか?」

「そういう人もいる。でも、姉さまたち基本過保護なの間違いない。甘やかすの得意だし、姉さまたちが村を出る理由、お金の問題じゃなくて、妹たちを甘やかしすぎて、下が育たなくなるから外にだされる方が多い」

「そんなものなのか」

「姉様たち甘やかしたがり。隙を見たら甘やかす。我も姉様と一緒に暮らすようになって甘やかされてると実感する。それ見て成長するから育ったものも甘やかす」

「同じ一族の女の子を可愛がるのと、他人の男を可愛がるのってちょっと違うと思うんだが」

「確かに少し違う。でも王、それはもう姉様に家族と同じと思われてるってこと」

「おぉ、それは嬉しいな」

「多分姉様、今まで男家族ほとんどいない。いても種候補だから甘やかすできない。だから輪にかけて今甘やかしてる」

「女系家族に、男の家族が入って姉ちゃんたち猫可愛がりってことか」

「普通は他人の男なんてつまはじきにされる。でも、我が王姉様に家族と認められた。姉様の意識かえる。それ、とてもとても凄いこと。姉様の愛享受するべき。姉様の愛際限なし」

「大丈夫か、俺完全にダメ人間になるぞ」

「王、きっと今まで頑張って来た。少しくらい甘やかされるどうってことない」

「そんなもんだろうか」

「うん。おかえしするなら姉様と儀式する。姉様それが一番喜ぶ」

「儀式はちょっと……」

「我も姉様たちが儀式されるところ興味ある」

「えっ、見にくるつもり?」

「アマゾネスの儀式、一族の前や、村、街のど真ん中で行われる。知らなかったか?」

「えっ、なんでそんなとこで!?」

「儀式とっても名誉なこと。それによってアマゾネスからハイアマゾネスになれる記念すべき事柄。それを皆に見せるの当然。我これからハイアマゾネスなると自分の力見せつける意味合いある。だからアマゾネスの儀式、大勢の人が見てるところでするのが一番喜ばれる」


 気軽に言ってくれるなと思いつつも、これだけお姉さんたちに密着されたら、そりゃ俺だって男の子ですから溜まるものは溜まりますよ。

 こんなことではいけない、きちんと自立しなくては。王としての自覚をもってだな……。


 そう思っていた翌日の朝――

 俺はアデラとアマゾネスに挟まれたまま朝を向けたよ。


「ダメだと思ったけど、欲望には逆らえなかったよ」


 俺の強い決意なんてその程度のものだった


「可愛いやつだ」


 アデラは初めてできた弟分が大そう気に入り、添い寝を誰かに譲る気はさらさらないのだった。


「もっと甘やかしたい、自分にもっと甘えろ」

「二度目していい?」

「好きにするといい」


 アデラは俺が寝入った後、いつまでも頭を撫で続けるのだった。




取り扱い注意            了

過激表現修正が入っています。

その為、少し文がおかしくなってるかもしれません。

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