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砂漠の英雄 (修)

 エピローグ


 アポピスがいなくなったマンスラータリアの街は、住民たちの手によって復興されようとしていた。

 守護神であるスフィンクスが暴れた傷跡は深いが、時が経てば修復されることだろう。

 過酷な環境に耐えてきたこの街の住民は、これくらいで音を上げたりはきっとしない。

 崩壊した黒のピラミッドに埋まってしまった財宝は墓守達によって掘り起こされ、順次白のピラミッドへと戻されいてる。

 ピラミッドが元の観光ダンジョンとして機能を取り戻す日はそう遠くはないだろう。


 ムハンを信じていた街人は、奴の屋敷に本当に金塊へとかえられた住民や冒険者たちを見つけ、ファラオをないがしろにしたことを謝罪し、二度と甘言に騙されないことを誓う。

 しかしファラオは「妾を信じぬのは構わぬ、そなたらの手によって妾が消されることも許す。しかし何かをしてくれるから誰かを信じるのではなく、己が信念を持って信仰を行え」と諭したのだった。

 その話を聞いている最中、街人はずっと頭を下げたまま申し訳ございませんと後悔を口にしていた。

 多分この街で、もうファラオを裏切る人間はでないだろうと確信する。



 俺たちは荷物をまとめてマンスラータリアの街から出ようとしているところだった。


「貴様らには支えられた」

「墓守として礼を言うであります」


 見送りに来ているのはファラオにセト、ナハル、変装をといた墓守モンスター、それにこの街の代表代理となったヤンバも来ていた。

 ヤンバとはこのマンスラータリアの街とウチの国と同盟関係を結ぶ書状をかわし、相互協力をとりつけてある。

 港町のライノスに続いて二番目の同盟都市となったわけだ。


「いいっていいって。目的の物も貰えたし、それに財宝もたくさん貰っちゃったし」


 俺の胸元にはペンダントのようにかけられたラーの鏡が光を反射している。ファラオ曰くこれを使いゼノのツノを元に戻す為には、魔力を充電させる必要があるので城に戻ったら充電方法考えなくてはならない。


「咲、重い」


 オリオンやフレイアたちは持ちきれないほどの宝石や金塊を大量に持っていた。


「金は嬉しいけど、これで流砂なんかにあったら泣くに泣けないわよ」


 金貨大好きフレイアさん、こいつの場合落ちた金拾いに行ってそのまま流砂に流されそうである。


 こんだけ沢山貰ったかわりと言ってはなんだが、ドンフライがファラオの相棒である金色の蛇を見つけてきて彼女に返した。

 戦いが終わった後、シレっとドンフライの尻に噛みついてきたところを捕まえた。

 ドンフライは「我輩への感謝をしに来たのだ」と言っていたが、あれは明らかに捕食しに来たとしか思えなかった。


「セト、あれを」

「はっ、持って行くが良い」


 ファラオに促されてセトは俺に二本のショーテルを手渡した。磨かれて綺麗に錆びと汚れを落とされたそれは、アレスが使っていた砂王の剣(サンドロック)で間違いない。


「いいのか?」


 俺はファラオの方を見やる。これはアレスの形見と言っていいものだと思うのだが。


「構わぬ。貴様が使っても良いし、それに相応しい人物に渡してくれても良い」

「そうか、こんなにいっぱい土産貰ったのにな」

「非常に優秀な剣じゃ。墓前に飾っておくより、誰かを救う力となった方があ奴は喜ぶ」

「ありがたく貰っておくよ」

「うむ、役立てよ」


 よし、じゃあそろそろラクダに乗って、また長い砂漠を帰るか。


「うへー、咲また砂漠越えすんの?」

「棺桶用意してください」

「うるせー、今度死んだら棺桶なしでラクダにくくりつけて帰るからな」


 ファラオはそのやり取りに笑みを浮かべるとパンと手を叩く。すると彼女の手に瓶の中に船の模型が入ったボトルシップが現れた。

 彼女は透明な瓶のコルク栓を抜くと、中に入っていた帆船が巨大化して出現したのだ。

 帆船は通常水の上を浮かぶが、今は砂の上に浮かんでおり、その規模の大きさに驚かされる。


「おぉ……でかい」


 海賊が使ってそうな巨大な帆船が砂海に浮かぶと迫力がある。


[魔導船デスネ。風石ヲ使用シテ、海上ヤ砂上ヲ推進航行シマス]

「これは魔導船ではない。妾の宝、鷹翼飛行船ホルスじゃ」

「飛行船!?」

「ねぇ咲、もしかして飛べるのこれ?」

「どうなんだろ。確かにプロペラみたいなのがマストについてるし、横には羽みたいなのもついてるから」

「飛べるが、動力炉のパワー不足で膝よりも上の高さに上昇せぬ」

「飛行艇というよりホバー船だな……」


 地面から4、50センチくらいしか飛べないシュールな飛行船らしい。


「しかし飛ばずとも砂漠を航行するには十分な性能を発揮するじゃろう」


 そう言ってファラオは俺にボトルを手渡す。


「動力を強化して魔力を十分に貯めれば飛行も可能やもしれぬ。砂海を抜けたらこのボトルに戻すが良い」

「わかった。何から何までありがとう」


 俺たちは飛べない飛行船に乗り込むと、こちらを見上げるファラオたちに手を振る。


「ありがとう! また来る!」

「楽しみにしているであります!」

「バイバーイ!」

「じゃあね!」

「ありがとうございました!」

「お元気で!」

「皆も我輩を見習い励むであーる」

[メモリーニ登録シテオキマショウ]

「世話になった」

「そなたたちの未来に幸あらんことを祈っておる」


 帆船は錨を上げると、真っ白な帆に風を受けゆっくりと動き出した。

 それを追ってセトやナハル、墓守達が駆けてくる。

 俺たちはお互い大声を張り上げた。


「「「またいつか!」」」


 再会を約束し、ファラオ、墓守、マンスラータリアの街に別れを告げ、俺たちは自分たちの()を目指し砂海を出航したのだった。




 砂漠の英雄        了

砂漠編が終了いたしました。

長くのおつきあいありがとうございます。

エピローグⅡではないのですが、帰る道中のお話おまけ編を更新しますので、そちらもお楽しみしていただければと思います。


章分割の方実施しました。

210話から214話を堕ちた騎士、215話から245話を砂漠の英雄へと変更しております。


また第3回カクヨムWEBコンテスト、総合ランキングでガチャ姫の方8位を頂いております。

応募総数3000を超える作品の中で10位圏内に入れたのは、本当に皆様のおかげです。合わせて御礼申し上げます。

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12月29日書籍版がファミ通文庫より発売します。 『ファミ通文庫、ガチャ姫特集ページリンク』
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