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砂の都へ

「あっつ……」


 いや、暑そうだなとは言ったよ? でも、これはちょっと日加減、いや火加減間違ってるんじゃないでしょうか?

 ラクダに乗って俺たちは砂漠地帯を横断しているが、照り付ける日差しがジリジリとこちらの皮膚を焦がしていく。

 砂地に強いラクダだが、馬車ではないので灼熱の日差しが直に当たり、黒い服でも着てきたら本当に燃えそうである。


「暑い……溶ける……いや……溶けてる」


 俺は既に半液化しつつあるオリオンを突っつく。

 見渡す限り砂と石ばかりで、景色的変化も全く楽しめない。


「大丈夫か? お前も棺の中入るか?」

「まだ……もうちょっと……」


 後ろを振り返ると、俺たちトライデントチャリオット一行が縦一列のキャラバンとなって歩いている。

 戦力としてはレイランを含めた強力なメンツで来ている為、オベリスクだかなんだか知らんがピラミッドダンジョンの攻略自体はさほど心配していない。

 ただし、ダンジョンにたどり着く前に誰か干からびて死にそうである。

 ちなみに暑さでダウンしたレイランは棺の中に大量の氷をつめ、二頭のラクダに棺を引っ張ってもらっている。

 どんなヒロインなんだよと言いたくなるが、ここに連れてきたのは俺である。

 ちなみに引いている棺の数は既に三つ。熱でダウンした奴から順次氷入りの棺桶に入って休憩することになっている。


「ペラペ~ラペララペラペラペ~ラチェゲラッチョ?」

「あぁもう、何言ってるかわかんねぇ」


 案内役のターバンを巻いた男がさっぱりわからん言語で会話してくるので、これも困ったものである。

 なんでここに来て言語の壁にぶち当たってるんだと愚痴をこぼさずにはいられない。


「ペペラペ~ラペラペ~ラ、ペラペラチェゲナウ?」

「あー、チェゲナウチェゲナウ。なんかよくわからんがチェゲラッチョだよ」

「オーオー! チェキチェキラッチョチェゲラッチョ」


 何が受けたのか知らんが、ガイドの男はラクダの上で大笑いしている。

 あんま笑ってられる状態でもないと思うのだが。

 そう思っていると、いきなり銃声が響き、ガイドの男の肩が何者かに撃ち抜かれた。


「大丈夫か!?」


 ラクダから転倒したガイドはどうやら致命傷は避けたらしく、なんとか立ち上がる。


「大丈夫デス肩ヲ撃タレタダケデ~ス!」


 お前普通に喋れんのかよ。


「盗賊団広い砂漠の赤い太陽デス!」


 普通のことしか言ってねぇな、その盗賊団。

 周囲を見渡すと、黒い旗を持ったターバン姿の男が複数人、ダチョウみたいな脚の長い鳥に乗ってこちらを取り囲んでいる。


「ペラペ~ラペラペ~ラ!」


 盗賊団は俺たちに向けてラッパみたいな銃を向けると、けたたましく話す。何を言ってるかよくわからないが、多分動くと撃つぞ的なことを言っているとみた。


「奴らなんて言ってるんだ?」

「ワカリマセン」


 なんでわかんねぇんだよ。お前さっきまで似たような言葉で喋ってたじゃねーか。


「ペラペラペペラペラ?」

「ペペラペペラ」


 盗賊団同士わけのわからん言葉で話し合っている。

 しかしウチのチャリオットがこんな雑魚盗賊如きに負けるわけがない。


「オリオン」


 隣を見やるとオリオンは完全にゲル化していた。


「フレイア」


 後ろを見るとフレイアはラクダにもたれかかり、完全にグロッキーになっていた。


「サクヤ、カリン」


 更に後ろの竜騎士隊も耳をピクピクさせながらラクダの上で死んでいる。

 やはり小動物に砂漠越えは過酷過ぎたか。

 一番後ろのレイランなんか既に棺の中だし、なんでウチのメンバー始まる前からすでに棺桶入ってるんだよ。

 棺を連れて歩き回る旧時代のRPGを思い出し、仲間死んでる勇者ってこんな気持ちなのかとげんなりする。


「ここは俺だけでも守ってみせる」


 そう意気込んだが、盗賊団は突如慌てた様子を見せ、ダチョウを引いて立ち去って行ったのだ。


「なんだ……?」


 俺が首を傾げていると、ガイド役は何かに気づいたようで急いでラクダに飛び乗る。


「まずい蛇の群れだ!」

「蛇って? てかお前完璧に喋れんだな」


 もはや訛りすらなくなったガイドの指さす方を見ると、そこには上半身が女、下半身が蛇の怪物ラミアが群れとなって押し寄せてきている。

 確かラミアは半人半魔の中では美人だという噂を聞いたことがある。

 これはもしかしてモンスター娘を大量に仲間に入れるフラグなのでは? そう思いカチャノフ製の双眼鏡で見やると、俺の予想は完全に外れ、上半身は確かに女性だが、皮膚は全て緑の鱗で覆われており、顔も明らかに蛇寄りだ。恐ろしい形相で二股に割れた舌を伸ばしており、あれに飲み込まれたら死ぬと悟る。


「なにあれ、蛇じゃん!」

「言ったでしょう。奴らに男が捕まると、一生精子を搾り取られるだけのタネ男にされちまうぞ」


 なにそのゴブリンの逆版みたいなの。

 急いでラクダの腹を蹴るが、ムカつく顔をしたラクダはのらーり、くらーりとゆっくりとしたペースでしか進まない。


「おい頼むよ! 街についたら美味い塩でもおごってやるから!」


 当然そんな言葉なんて理解できないラクダは、ゆら~りと自分のペースで進んでいく。


「ヒャアアアアア! 新鮮ナ男ダ!!」


 蛇女たちは俺たちのキャラバンを見つけると、両手に鉈のような武器を持って、すさまじい勢いで突撃してくる。

 嫌だ、こんな気持ち悪い蛇に一生搾精され続けるなんて!

 そう思っていたがラミアは俺たちのキャラバンを完全に無視して、同じく近くを通りかかった別のキャラバンに襲い掛かっていた。

 そのキャラバンは容姿の良い男が多く、どうやらラミアたちの趣味にかなったらしい。

 逆を言うと、俺はラミアにすらそっぽを向かれたらしい。

 きっと向こうは男がいっぱいいたからあっちに行ったのだろう。俺は心の中で言い訳する。


「旦那ナイス顔面!」

「バカにしてんのかお前は!」

「早く街に行きましょう!」

「なんか複雑だが、イケメンが襲われてるなら知らん」


 イケメン税みたいなものだろう。ラミアの相手は完全に任せ、俺たち棺桶キャラバンは予定していた駐留ポイントである砂漠都市マンスラータリアに到着したのだった。

過激表現の修正を行っています。

このお話は大きく削除修正が行われています。

前後の文がおかしくなっている可能性があります。

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