ドライブ
わずかな振動に身を預けて、何も考えずにいられるこの空間は、私にとっての癒しだ。
いつも、沢山の情報が私の賢くない頭を掻き乱す。毎日の出来事すべてが要領オーバーで崩壊寸前なんだ。
今は、沈黙だけが私に安らぎをくれる。
「おい、寝んな」
あっけなくそれさえも、先輩に小突かれて終わりが来る。
「えー、ちょっと寝かせてくださいよー」
「馬鹿か、お前が車出せつったんだぞ」
「ですよねー」
先輩は呆れたようにため息を吐いて、ハンドルを握り直す。たった今青に変わった信号を確認して、アクセルを踏んで車を発進させる。今日のドライブでやっと熟睡できると思ったのに。
0時を回った時間に黙ったまま車を運転するのは結構な苦痛らしい。
私は無神経だと人に怒られる事が多い。先輩以外の人に対してもこんな感じだ。
きっとあまり何も考えていないからだろう。反省はしているのだけど、進歩がないからこのループは無限に続く。
その内、先輩に愛想を尽かされそうで怖いのだ。けれど、治らないのだからしょうがないと開き直っている。
先輩は、うつらうつらとしている私にとっては、どうでもいい話を掛けてくる。はい、そうですね。と適当なところで相槌を打ちながら、窓の外の過ぎ去っていく夜を眺める。
こんな時間にバイト先の成人男性がドライブだなんて世間に知れたら、先輩は逮捕されてしまうらしい。もしそうなったら、私はきっとただじゃいられないだろうけど、そこについてもあまり考えはしないまま、この時間を過ごしている。
夜は外に出て歩きたいのだ。何せ私は反抗期真っ只中の女子高校生なのだから。