分かり易いヤツ
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「先輩、今日車出してもらえないですか」
私がそう言うとあなたは、簡単に私が欲しい返事をくれる。
「いいよ」
それだけで、期待が心臓を急かす。もしかしたら、なんて下らない思いのせいで、表情が たるむのを誤魔化すように、背伸びをして先輩の頭を撫でようと手を伸ばす。
「おい」
それはあっけなく、先輩に手を掴まれ阻まれる。頬に熱が刺すのを感じる。ただでさえ冷静ではないのに、手が触れ合い、視線が交じるこの状況が、より胸を苦しくさせる。
「ちょっとー! 乙女の手になにしてくれるんですか」
そう言って、平静を装うけれど、隠しきれていないんだろうなと考える。多分私は分かり易いのだ。
「いや、俺は撫でる方が好き」
そう言って、私の髪を大きな手で乱す。頭を撫でられるのは昔から苦手で、不快感で反射的に手を払ってしまう。すぐにしまったと思うが、行動を改めることはできない。
「だから、頭撫でられるの嫌いなんですってば! 」
咄嗟に言い訳の言葉が口をつく。それをあなたは、はいはいと軽く流し、じゃあ、後でな。というと、自分の持ち場に戻った。
その様子に、一つため息をついて安心を確認する。
叶うことがないと分かっていても、別れが近いと分かっていても、今はまだ、嫌われたくない。
変えられない事が、ただ正確に近づいてくる。