003 LV99の魔王が死にました3
人間とは愚かで取るに足らぬ生き物だ。
それが魔族全体の一般的な認識だった。各段に高い能力を備え、生態系の頂点に立つ彼らからしてみれば当然なのかもしれない。
勿論レオも基本的に異論はないが、少しだけ意見が違う。
確かに人間は脆弱だ。
歴代魔王の多くはそんな人間達をことごとく滅ぼしにかかった。その結果はどうか。人間達は今もしぶとく生き長らえているではないか。しかも、幾度もの危機を乗り越えていくたびに、より強大に繁栄を続けてきている。
数十年後か。
数百年後か。
数千年後か。
あるいは、より遥か未来かは分からないが。
いつか必ず、世界の支配層は魔族から人間へと移行していくだろう。違和感を抱えるほどの不気味なポテンシャルを人間という存在から感じていた。
そして、そのまま魔族という種自体が滅びを迎える。
それは恐らく避けられない。
ならばせめて、そのような運命の日を一時でも先延ばしにさせるため、出来得る限りの布石を打つのが歴代最強の魔王としての責務だろう。
生前、レオはこの心の内をほとんど誰にも明かさずに過ごしてきた。
それが、魔族や人間などという存在を飛び越えて、この世界そのものが別の存在に侵食されているなどと聞かされて――妙に納得してしまった部分がある。
時折、感じていた違和の正体をようやく少し捕えた想いだった。人間達の底知れない意外性の一端に、異世界転生者の存在が関与しているとすればなかなかに面白い考察が可能になる。
無数の仮説が泡のように浮かんでは消えていく。
気が付けば、レオはひどく高揚している自分自身を発見していた。初めて出会う自分の一面だった。
結局、本質的にやることは変わらない。
レオは時代によって支配者が変わっていくことを否定しない。どんなものであろうと、いずれは滅びるものだ。もしかすると異世界の生まれ変わり達によって、変革を続けた方が世界は正しい道を歩むことになるのかもしれない。
かといって、手をこまねいているつもりもない。
幾つか思うところがないでもないが。
以前には守るべき同族がいたように、今度は同じ世界の同胞らを守るだけだ。
レオルード・エネミー・ハードモードは決して変わらない。
――ただ、次はもう少し退屈しないで済みそうだ。
光と闇の双方に包まれながら彼の魂は深い場所に沈んでいった。
ワイプ「ついに次回、私が登場しますよ!」
レオ「そうだな、ついに出てしまうな」
ワイプ「ふっ! 魔王さんのちょっと引っかかる言い回しも、今の私には全く効きませんよ!」
レオ「そんな調子だから心配なのだが……まあ、良いか。老婆心が過ぎるのも本人のためにはならぬものだ」
ワイプ「魔王さん、何をぶつぶつ言っているんですか」
レオ「いや、別に。お主の前途を祝しているだけだ」
ワイプ「ありがとうございます! 次回からの私の大活躍に乞うご期待です!」
レオ「そうやって、自分でハードルをガンガン上げて自身を追い込む姿には恐れ入るものがあるな、とはいつも思っているぞ」
ワイプ「心配ご無用です。魔王さんこそ気をつけた方がいいですよ。当面の目標は魔王さんを喰いにいくことですから」
レオ「こんなところに最大の敵がいたか」
ワイプ「ふふふ、せいぜい首を洗って待っていて下さいね」
レオ「あー、はいはい」