表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
crisis call  作者: りぃ
prplogue
1/1

prologue

 空には月が輝き。

 眼下に広がる海は,静けさを湛えて。


「……やっと,見つけました」


 断崖に立つ存在―女性というには早熟で,少女と呼ぶのは何か憚られる,そんな年頃の―そう,『少女』が振り返る。


「……見つかっちゃいました」

 

 鈴を転がすような声で,笑みをこぼす。

 海風になびく長い髪は,月光を受け淡く輝いている。一目でわかる華奢な体を包む服はどこか修道女を想起させ,彼女の

清廉さを際立たせていた。


「……よく,ここがおわかりになりましたね」


「……おや,いやみですか?」


「いえ,純粋に感心しておりますよ?」


 与えられる言葉に,返される言葉に心がはねる。それほどまでに待ち焦がれた,追い続けた存在。

 ついついまぜっかえしたりするのは,何のとはいわないが,経験不足のほかない。


「やっと,これました」


 『少女』が一歩右によけると,そこには―。


「ええ,彼の方もずっとお待ちしておりましたよ」


 白い石版一枚,白亜の墓標―。『少女』が供えたであろう華が戦ぐ。


「『お嬢様がお帰りになるそのときまで,この屋敷をお守りすることがわたくしたちの使命なのですから』,これが口癖です」


 『少女』はたなびく髪を押さえ,微かに俯く。


「……そう,ですか」


 小さく,震える声で。そう呟くのが精一杯だというように,口の端を噛む。


「……遅くなってごめんなさい,ばあや」


「……帰ってきたのですよね,『お嬢さま』」


「貴方様からそう呼ばれるなんて,くすぐったいですね」


 「少女」は断崖へと振り返り,その表情はうかがえない。


「……この3年,お捜ししました」

 

 「少女」の背へむけ,語りかける。


「あの方は?」


「……」


「お帰りになられたのですよね?」


「……」


「今までどこにいらしたのです」


「貴方様の役割は,【探偵】なのでしょう?」


 ゆっくりと振り返る彼のヒトは,


「そうだというのならば,」


 年相応の―無邪気で,純粋で―笑顔を魅せて。


「……解いてみせて?」


 誰よりも哀しい存在だと感じた―。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ