第一幕 {プロローグ}
始めましての方は始めまして、お久しぶりの方お久しぶりです。
しゃおろんです、何とか復活しましたよー
復活の呪文を唱えること数十回何とか生き返ったのですよ
また作品共々よろしくお願いいたします。
では、オレとアイツの人形劇 【リメイク版】開幕でございまうー
真白なクロスに黒い床が広がる一室。
そこには壁沿いに本棚が並べてあり、様々な種類の本が所狭しと詰め込んである。
お世辞にも衛生環境がよいといえないような部屋の中心に黒いテーブルと椅子二つを置き、そこに腰掛けている若い男の姿があった。
彼はそんな部屋であるにもかかわらず優雅に紅茶を飲み、幸せそうに一冊の本を撫でている。
その手つきはまるで自分の愛するものに対してのもの。
所謂、愛情というものが多分に含まれているように感じる。
そして彼は誰に向けるわけでもなく一言つぶやいた。
これが始まりの本だと。
そっとつぶやいたその言葉には過去を振り返る老人のような哀愁が漂っており、とても彼のような若い男が出すような雰囲気ではなかった。
彼は黒いスラックスに白いワイシャツを着ており、上に茶色のセーターを着ている。
胸元に首から茶色の紐でぶら下げてある銀の懐中時計が目立つ。
ふと何か思い立ったようにその懐中時計で時間を確認した彼は懐中時計を指で突きながら深いため息をつく。
さながら恋人を待つ女性のようなその仕草は思いのほか彼に似合ったものだった。
「やつはまた遅刻か、これでは開演に間に合わないではないか。」
その言葉は相手に届くことは無かったが、幾度と無く口にした言葉なのかえらく馴染んでいた。
再び手を先の本に戻し撫で回しながら目を閉じ、物思いに耽るように静かになるが、ひとつの音がその雰囲気をかき消した。
「あら、お休みの途中かしら?」
声の主は女性であり、まだ大人になる前の少女のような顔立ちだ。
服装は赤チェックのスカートに黒のシンプルなブラウス、それに加え赤のネクタイ。
髪の毛は肩のほどまで伸びており、まっすぐとしたストレートであり艶やかな黒色をしている。
彼女はよほど髪の毛の手入れに気を使っているのであろうということが容易に気づくほど綺麗な髪の毛だ。
「馬鹿いってんじゃないよ、いつも遅刻ばかりの君のために送る言葉を考えていたのだよ。」
「そうなの、それはどんな言葉なのかしら。」
すかさず彼はこう答える。
「遅刻すると胸ってちっこくなるんだぜ。」
「へぇ、それは大変。今度から気をつけるようにしますわ。ご忠告ありがとうございます。」
満面の笑顔を浮かべている彼女の胸はまるで絶壁のようだった。
オレとアイツの人形劇 第一幕{プロローグ}
目覚めるとそこは石でできた部屋の中だった。
隣にはクラスメイトの伊藤君が全裸で横たわっており、自分も着ていた筈の制服がすべてパージされていた。
状況を説明するとご存知のとおり自分もまたまた全裸なのであった。
そして、この激しく誤解されそうな嫌なシチュエーションから全力で逃げ出したい気分だ。
どうやらまるで生贄を捧げますと言わんばかりの祭壇の上に俺と伊藤君が寝ころがされていたようだ。
周りを見渡すと不気味な雰囲気が浮き彫りになってきた。
正方形の部屋の真ん中に生贄の祭壇っぽいもの、四方に設置された蝋燭。
祭壇の下にはどこかで見かけてそうな魔方陣らしきもの。
また、その祭壇が真っ赤な、まるで血によって描かれたようなものということ。
ここまでで本当に勘弁してほしいのだけれども、最大のヤバさを誇る全裸の伊藤君。
ないわ、これないわ。
何で伊藤君が祭壇の上で7割の場所を使って寝転がってんのに俺3割やねん。
微妙に狭いねん。
誰や世界は海と陸や七三分け、働きアリの法則とかのように3・7か2・8が丁度ええんやって言ってた奴出て来い。
そんな奴一回俺のこの右腕をもってして処刑したるわ。
心の中で無駄に関西弁で愚痴りながら伊藤君のアホな寝顔を見ていると目の前の扉がゆっくりと開いた。
入ってきたのは高校生くらいの女の子とガチムチな筋肉と全時代的な軽い防具を装備したお兄さん二人だった。
そのうち女の子が桜色をした綺麗な唇を開き言葉を発する。
「どうやらお目覚めのようですね、勇者様」
とんでもない一言が飛んできましたとさ、オジサンびっくりです。
勇者発言した女の子は腰あたりに赤いリボンが付いている白いフリフリのドレスを着ており、綺麗な黒髪をしていた。
なんという美人でしょうと感動してしまいそうなくらいに容姿が整っている子だ。
少し見惚れているといつの間にか起きた伊藤が真先にその子に近寄り、真白で今にもとけてしまいそうな雪の色をした手を握っていた。
「はい、俺が勇者です。」
「ありがとうございます。これでこの国も…」
手を握られた瞬間両脇に立っていたガチムチお兄さんたちが動こうとするも、それを目で制した女の子が伊藤君に感謝の言葉を言っている。
そのときチラリと誰だこいつといった目を向けられたことを俺は絶対に忘れない。
そう、絶対にだ。
「召喚されたすぐ後ですからお疲れでしょう。まずはお部屋に案内いたします。それからその…こちらをお召しください。」
そういって一着の服を女の子がガチムチお兄さん1から受け取り、頬を染めながら伊藤君に渡す。
あれ?俺の分は?と口に出す前にガチムチお兄さん2が頬を染めながら俺に一着の服を渡してくれる。
頬を染めているお兄さんに危険を感じたので急いで服を着る。
全体的にだぼついた灰色の服で、ボロッちい感じだが着れないことも無く、裸よりも断然いいのだが俺にはどうしても納得いかないことがひとつあるのだ。
俺の服装がまるでしょぼい農民が来てそうな服にもかかわらず、伊藤君の着ているものは俺の着ているものとは打って変わって白のズボンに黒のシャツそして白いベスト。
なんというか金色の刺繍が入っており、成金臭さのするものだった。
別にそれが着たいとかそういった感情でものを言うわけじゃないんだが、この差は何なんでしょうかと問いたい。
そして、俺たちが服を着終わると女の子は兵士を連れて伊藤君とどこかへ行こうとするので、遅れまいと慌てて早足で追いかける。
まるで中世ヨーロッパのお城のような内装の大きな廊下を後を追い歩く。
ゆっくりと城の中を歩いていると幾人もの貴族のような服装の人たちとすれ違う。
段々と嫌な予感に苛まれつつも好奇心を抑えきれずチラチラそこらじゅうを見回しながら歩く。
「こちらです。」
ガチムチお兄さん2の声でふと気づくとどうやら目的の部屋に付いたようだった。
周りに興味を惹かれすぎていたためまったく気づかなかった。
そして俺があちこちを見てる間に女の子と伊藤君が仲良くなっていて少しうらやましいがこの際仕方ない。
今後仲良くなっていけばいいやと諦める。
俺だって男の子、可愛い娘と仲良くなりたいのだ。
お兄さんに促され部屋に入ると、そこは豪華すぎて立ち眩みしそうなほどのものだった。
天蓋つきで綺麗な色のベッドに、赤色を主に使いところどころを金の刺繍で豪華さをあらわしているカーテン。
色鮮やかで凡人の理解が追いつかない値段の予感がする坪。
この部屋にいるだけで目がチカチカして来そうだった。
またもや俺が周りを見ていると勝手にストーリーが進んでいるようだった。
何故か二つしかない椅子に腰掛けている女の子と伊藤君が話し込んでいる。
どうやら女の子の自己紹介していたようで、女の子は巫女で名前はリリエナというらしい。
ここからが本題なのだが俺たちはこの世界に召喚されたようなのだ。
しかもこの世界には魔法が存在し、さらには魔物や魔人、魔王までもが存在しているというのである。
一概に信用することはできないのだが、リリエナが魔法を使って水を作り出したので信憑性が高いと思う。
そして魔王が現れたので、ぜひ俺たちに倒してほしいとのことである。
ふざけるなと言いたいが、魔法が使えるというのはうれしい。
男は30歳まで童貞でいることにより、童帝になり神より魔法の力を授かるととある文献に載っていたのだが、30歳まで童貞でいるのは勘弁してほしいところだ。
だから魔法が使えるのはうれしい。
しかし、そのために命を張らなくてはいけない。
魔法を使うというのはそれほど難しいことなのだろうし、世の中では等価交換が当たり前なのだからそのために命をベットする必要があるのだ。
まぁ、今更返してくれといわれても無理らしい。
帰還するには魔王の心臓が必要で、そのためには魔王をぬっ殺して奪ってくるしかないのだという。
詰んだ。
直感的にそう悟った瞬間だった。
なんにせよとりあえずは魔法の適性を調べてくれるというので、素直に調べて貰うとする。
なんだかんだ言ってもワクワクを止めることはできないのです。
ところ変わって王座の間。
学校の体育館ほどはありそうな勢いの大きさをしてる王座の間に伊藤君たちの後をついていく。
王様の堅苦しい言葉を頂戴してまるで校長のようだなと考えつつ伊藤君の検査を見守る。
伊藤君は水晶のようなものに手も当て目を閉じている。
やがて水晶が神々しい光を放ち始めあたりがぬるりとした感覚に包まれた。
これが魔力なのかっ!?とごっこ遊びをしてるうちに結果が出たらしい。
伊藤君の魔力値は21万らしく、適正属性は火、水、土、風、光。
これは異例のことのようで周りがざわついている。
リリエナの説明によると普通は2、3個の適正属性で天才レベルだいうことだ。
一般だと1個の適正が当たり前なんだそうで、ここまで来ると神の領域だと伊藤君は褒めちぎられていた。
さらに魔力値は普通が500~1000で、優秀なものが4000~5000ほどらしい。
魔力で魔術師の戦闘能力が決まってしまいかねないこの世界で、伊藤君の魔力値は破格のものだろう。
これはまさに勇者にふさわしいというのものだ。
俺が言えた義理ではないが伊藤君は元の世界で良くも悪くも普通で、容姿は日本人そのもの。
身長が少し高いくらいで、運動神経も学業のほうもおおよそ中間地点だった。
そんな伊藤君はここでの世界のほうが住み心地がいいんだろうなと考えていると俺の番が回ってきた。
前に出て水晶の前に立つと周りからの嘲笑が聞こえてきそうな雰囲気だった。
周りに立っている貴族のような人たちが主な原因なのだろうが、どの人も俺の服装を見てあざ笑っているようだ。
そんなことに負ける俺ではないので水晶に手を当て、目を瞑ると手のひらからぬるりと魔力のようなものが抜ける気がした。
少しすると水晶が伊藤君のときと同じように光る――――と、思いきや部屋全体が伊藤君のときよりもぬるぬるしている上、薄暗く光る。
この光り方は人それぞれなのでいろいろ在るみたいだが、周りの反応を見る限り普通のことではないようだ。
薄暗い光りで結果が文字になって現れる。
その文字は見たことも無いはずなのに不思議と読めた。
どうやら俺の結果は魔力値が7万で適正のほうは水と闇のようで、まだ優秀なレベルに落ち着いているようだ。
魔力値は伊藤君よりも低いもののほかの人と比べると異常なまでに高い数値だ。
嬉しいが、伊藤君よりも低いので若干微妙な気分だった。
俺の結果も上々のようだったが如何せん伊藤君のほうが高く、服装もしっかりとしているので周りの人はあちらに目がいっているようである。
俺の結果を王様が確認した後、またお言葉をいただいて退室を促されたのでそそくさと王座の間を出ることにした。
出てすぐに伊藤君はリリエナとどこかに行き、俺はガチムチお兄さん2に部屋へと案内して貰うことになってしまった。
先ほどリリエナから説明を受けた部屋のようなものを想像していたが、案内された部屋は質素なもので机と花瓶の置いてある棚、普通のベッドが置いてある部屋だった。
部屋の中に入るとお兄さんが付いてこないか心配だったが、特にそのようなことは無く何か困ったことがあったらいってくれ。
と目をそらしながら頬を染めて言われたくらいで特に何も無かった。
少し疲れていたのでベッドに身を投げ出して大の字で寝転びながら頭を整理する。
変なことに巻き込まれたなと思いつつも考えても栓の無いことなのでやめる。
明日から日記でもつけるかなと考えているとよほど疲れていたのかすぐに意識を手放した。
少し少ないかな?と思いつつも切がいいのでここで投稿。