わかんない3
「揺れてる。うわ、凄い。うわうわ、やばいよ。」
地震だ。立っていられないほどの大地震が襲っていた。
「なんで…はやく逃げないと。」
震える声で叫んでいた。
「うん。」
冷静に返事をして、歩き出した。
「早く、走って、早く。」
慌てていた。声からもわかったが、表情は酷く深刻そうだった。
それもその筈だ。周りの物という物は床に落ち、叫び声と建物の軋む音が肌にさえ伝わってきたからだ。彼女の足も地震の揺れとは違い、小刻みに揺れているようだった――
二人は外に出た。地震の揺れは未だに治まることはなく、揺れは激しさを増す一方だった。
周囲の人は、倒れこんだり、近くにある物に摑まっていたが、アスファルトの地面はひび割れ、その間からは土が盛り上がってきている状況だ。まともに立っていられなかった――
地震が治まるまでには、約2分。長い時間だった。
その後も余震は続いていて、緊迫した空気もまた続いていた。
「大丈夫?怪我してない?」
震えた声で他人の心配をしていた。
「うん。」
「なんで…そんなに冷静なの…」
徐に呟いた。表情はなかった。
「わかんない。何も感じないのかもしれない……」
「そんなのおかしいよ…」
後から知ることになった地震の規模は、震度6強だった。
そんな大規模な揺れの中、本当に何も感じていなかった。
それを聞いたときの、『彼女の可愛そうといった表情を向けていたのが気がかりだった。
それでも『わからない』
何も感じなかったのは事実だったからだ。