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アニメ・ゲーム哲学

カリオストロの城をつまらないと思った男の話 或いは効率という神の話

作者: 忠柚木烈
掲載日:2026/04/03

 カリオストロの城といえば、ルパン映画の金字塔。

 今のアラフォー以上なら、ほぼ知名度100%を誇る、名作中の名作として知られる。


 しかしそんな名作に、つまらないという感想を下した男がいた。

 他ならぬ筆者である。


 別に、世間的に評価されるものに唾吐くつもりの、天の邪鬼や逆張りで言った訳でもなく。

 はたまたルパンが好き過ぎて、

「アレは本質的にルパン映画ではないからして」

等と、一家言あった訳でもない。


 しかもこの感想は、友達も抱いていた。

 少なくとも2人は抱いた感想だ。

 では同作は世間の評価と違うのか。

 本当は賛否両論ある、或いは駄作なのか。


 結論から言えば違う。

 では何故そんな評価のズレが起きたのか。


 実は筆者と友達には、ある共通点があった。

 それは同作を見たのが、リアルタイムでない事。

 テレビでアニメ特集が組まれて、名台詞ランキング等で、紹介される様になってからだ。


 名作という評価を先に知って。

 作品を代表する名台詞を知って。

 それからやっと本編を視聴した。

 そんな順番で作品に接した結果、何が起こったか。


 名作名作と聞いてたから見たけど。

 特に劇的なシーンとも遭遇せず。

 どこが名作わからないまま最後まで来て。

 物語を締め括る台詞が、まるでピンと来ずに。

 むしろ上手い事言おうとして上滑りしたかのような、温度差すら感じて終わる。


 そんな視聴体験になってしまった。


 コレは名作と期待して観たから、ハードルが上がった、なんて話とはまた違う。

 

 劇的なシーンがないと言った。

 お涙頂戴の泣かせにくる感動のシーン。

 そういうわかりやすいシーンは同作にない。


 しかしその事は決して。

 いいシーンがないと言う意味にはならない。


 例えば、同作で好きなシーンを集計すれば。

 おそらく上位に来るだろうシーンに。

 ルパンと次元が昼食を摂るシーンがある。


 昨今のアニメなら食事をどう表現するか。

 各種エフェクトのかかった止め絵の皿と鳴り響くSE。

 一口食べた途端、表情を一変させ、その料理がいかなるものだったか饒舌に、長ったらしく説明する。

 そんなところではないだろうか。


 しかし同作は全く違う。

 何故か1つのパスタを奪い合う。

 まるで子供のじゃれ合いのように。


 また別のシーンではこうだ。

 愛車のフィアットを運転するルパン。

 そこに敵達の車が襲いかかってくる。


 ルパンは腕まくりするとひと言。

「まくるぜぇー」

 不敵にニヤリと笑ってアクセルを踏み込むと。

 突如始まった街中でのカーチェイスに興じる。


 いずれのシーンも。

 言ってしまえば、ただそれだけのシーンだ。

 別に泣ける訳でも、大爆笑を誘う訳でもない。


 だがしかしどのシーンも。

 キャラクターが活き活きとしてる。

 躍動的に動き回り、心底楽しそう。


 これこそが同作の肝だ。


 名作を見に来た無粋なお客様ではなく。

 ルパンを見に来た純粋なお客様には。

 スクリーンの中に生きたルパンが見える。


 そして終わりのシーン。

 ルパンを庇うヒロインに、銭形がこの台詞を残して、物語は締め括られる。


「奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です」


 俯瞰的に作品を見てる人間には、この言葉の真の意味はわからない。

 この言葉は、作品を楽しんだ人間だけが受け取れる、夢中になった事への報酬なのだから。


 とどのつまり。

 作品をつまらないと感じていたのは。

 筆者がただつまらなく消費していただけの事だったのだ。




 昨今、可処分時間の使い方が問われて久しい。


 今の世の中、娯楽は溢れかえっている。

 小説、マンガ、アニメ、ゲーム、どんなコンテンツでも。

 例え1日1作品消化しても、一生の内には追いきれない程だ。

 限られた時間の中、無駄を省きたいのは当然の要求。


 レビューやネタバレサイトを駆使し。

 評価の低い作品を脚切りし。

 評価の高い作品だけを厳選する。

 それらは効率的で、賢いのだろう。


 しかし効率的である事は。

 必ずしも正しさを意味しない。


 効率がいいからと、それに従事するだけでは。

 最早ただの作業に等しい。

 いつかつまらなさに押し潰されて、本来の目的を見失ってしまう。

 手段と目的が入れ替わる、なんてよくある事だから。


 例えば楽器を習うとき。

 効率よく上手くなるには。

 練習曲を演奏すればいいのかもしれない。


 でも別に。

 練習曲を引きたくて演奏する訳ではないのだ。

 モチベーションと言う意味では最悪ですらある。


 例えば子供は何故、アンパンマンを見るのだろうか。

 親に子供向けアニメの定番だと、教えられたから見るのだろうか。


 そんな訳はない。

 子供達はアンパンマン達の造形を見て興味を持ち。

 その物語に一喜一憂して楽しむ。

 良質な視聴体験を得たから、自発的に好きになったのだ。


 好きと言う感情は、本来そうではないか。

 誰かに言われた評価をなぞるのでは、ただの受け売りだ。

 もっとプリミティブで、衝動的ではないか。

 感情は自らが醸成し、育むべきものだ。


 失敗したくない?

 ハズレの作品を掴みたくない?

 だからといって?


 ヘリで山頂へ先回りし着陸して?

 そこにあるのが肥溜めでないか確かめて?

 それから着陸して淡々と下山する?


 或いは最早、着陸もしない?

 ただ眺めて、それで満足して去る?


 それでは本末転倒で?

 逆にただ時間を浪費してしまっただけではないだろうか?


 時間をかけて、苦労をして、自分の足で登って。

 それから山頂で出会ったからこそ、報われる。

 そんなカタルシスを失っている。


 賢く効率よく、という正しさに踊らされて。

 コンテンツの魅力を体験せずに。

 ただ情報として消費してしまう。

 それはむしろ、無駄遣いそのものではないか。


 生き馬の目を抜くこの時代。

 情報は容易く体験を追い越していく。

 最早スマホは必需品であり、我々の生活とは切っても切れない。


 身の回りは氾濫した情報に溢れ。

 情報を利用しているつもりが。

 情報にその身を浚われ。

 流されてしまっていないか。


 あなたの周りにもいないだろうか。

 レビューやまとめサイトの受け売りを、ただ話すだけの人間が。

 体験から勝ち得た情報が、その人を作り上げる筈が。

 外から押し付けられた、情報で作り上げられた、ハリボテの人間。


 それは最早ホラーだ。

 吸血鬼に血を吸い上げられて干からびたように。

 人間性という中身を失った抜け殻。

 まるで情報のアンデッドモンスターだ。


 かつてニーチェは、科学万能世紀の到来に。

「神は死んだ」

との言葉を残した。


 それまで信じられていた。

 絶対だった神の存在が否定され。

 人は自ら価値を内発しなければならない。

 そんな旨の言葉らしい。


 しかし残念ながら。

 死んだ筈の神は。

 情報という存在に置き換わり。

 我々の前に再び君臨している。


 高度情報化社会の到来は。

 人類に高度な知性ではなく。

 再びの盲信を与えてしまった。


 140年前の偉人の期待は。

 打ち砕かれたという他ないだろう。




 少々脱線したが。

 我々は今一度、神の手から離れるべきではないか。

 本当に豊かな時間の使い方を、再び手にする為に。


 情報が親切に指図する

「それは評価が高くない」

なんて誰かの言葉に従えば。


 逃げ出せない囲いに覆われた。

 まるで飼われた羊の人生だ。


 見た映画がつまらなくてもいいじゃないか。

 何も体験しないで朽ちていくなんて。

 賢いかもしれないが、あまりに寂しすぎる。


 だから君も、勇気を出して。

 実写のデビルマンを見てみよう。

 ……いや、やっぱアレは見なくていいや。


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― 新着の感想 ―
オチぃーーーっ!!!wwwwwwwwwwwwwww  ……イイハナシダッタノニナー  ( ;∀;)
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