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『AIが管理する理想のVR世界でミュートされたらどうなるか』~ブルーバード編~  作者: バニラ味一択


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第9話:エンカウント



 エデンへの不正アクセスの為の抜け穴

 アクセスポイント『バックルーム』


 アルセーヌは足を止め、隣を歩く孫にモノクル越しの一瞥をくれた。


「……して、ルリ。何故ルナという子の記憶を盗まなかった?『詐欺盗さぎとう』の技を使って信用させていただろう?彼女もリストに載っていた『異形化予備軍』の一人だったはずじゃが」


 ルリは少年の姿に戻り、藍色の粒子を揺らしながら俯いた。


「……わかんないよ。でも、あんな顔で家族の話をされたから、手が動かなかったんだ。彼女、本当に家族を愛していた。……あんなに綺麗で悲しい(精神)、今まで見たことなかったから」


 ルリは自分の胸元をぎゅっと握りしめる。


「また……会えるかな……」


 アルセーヌは、困ったような笑みを浮かべた。


「ルリよ……。お主の方が盗まれておらぬか?」


「僕が?……何を?」


「いや……、それ、ワシが言ったら不味いじゃろ」




◇◇◇




 傾き始めた太陽が、派出所の窓を白く焼き付けている。ルナは、リソース消失で傷ついたワクに肩を貸しながら、ようやく馴染みの場所へと辿り着いた。


「おや、ルナさん! お帰りなさい。久しぶりではないですか?」

「よぉルナ! ったく、ワクの野郎ボロボロじゃねーか。またヤバイ異形とでもやりあったのか?」


 記憶の戻ったゴンドウとジンが、いつもの調子で声をかける。その姿に安堵しかけたルナだったが、次の瞬間、全身の毛羽が逆立つような悪寒に襲われた。

 視線の先、談笑する警官たちの奥に、その少年はいた。

 あどけない顔立ちに眼鏡をかけ、背にはこの世の光を吸い込むような禍々しい黒マント。ルリの装束と同じく『魔』で構成されている。濃縮された『魔』の濃さは、ルリとは比較にならない。


『警告:未確認危険個体――計測不能。ルナ様!先ほどのルリという個体よりも遥かに危険です!絶対に逃走してください!ルナ様!お願いします!』


 ルナは、こんなにも取り乱しているエマを見るのは初めてだった。

 だが、エマが取り乱す理由も納得できる。肌で感じるのだ、この少年のヤバさを。

 ルナとワクは同時に身構えた。

 相手は『魔』に飲まれた異形ではない。ルリがそうであったように、人知を超えたエネルギーを己の意志で着用している存在。


「ワク、こいつ……!」


「分かっている!」



「ゴンドウさんありがとう、お茶美味しかったよ。待ち人も、来たようだね」


 少年は、軽やかに席を立ち、派出所の出入口にいるルナたちにゆっくりと近づいてきた。傍らには、銀髪を冷たく輝かせたメイド服姿の美女、ジュエルが影のように控えている。この女性も明らかに強者であると肌で分かる。


「こんにちはルナ、僕のことはマスターと呼んでよ。んで、こっちはジュエル。僕のパートナーさ。そんなに怖がらないでよ」


 あどけない顔立ちで微笑むマスター。しかし、彼の一歩一歩が地面を凍りつかせるような錯覚をルナに与える。ルナたちは警戒し、接近してくる相手との間合いを保持しながら派出所の外へと出た。


「……あなたも『魔』を纏って……何の、用よ。私たちに、何の用があってこんなところまで来たの!?」


 ルナは震える声を振り絞って問いかけた。緊張で手のひらから発汗する。対するマスターは、鼻先で笑った。


「まずは順番に答えて行こうか、君には悪意が『魔』と言う風に見えるんだね?これは意志の力だよ。悪意を纏えるのは、悪いことだと分かった上でやっているからだ。我が魔を纏う。すなわち『我が魔纏(わがまま)』なだけさ」


「何を言って……」


「そして用件だね。 見させてもらったよ。アルセーヌじいさんの孫……ルリくんとの戦い」


 マスターはそこで一度言葉を切り、背中の禍々しい黒マントを翻して、ルナの目を真っ向から覗き込んだ。その眼鏡の奥の瞳には、一切の慈悲も、ましてや敵意すらもなく、ただ残酷なまでの「評価」だけが宿っている。


「……話にならない。君たちはまるで分かっていない。君が掲げる綺麗事、僕から見れば負け犬の遠吠えに過ぎないよ。……用件はね、ルナ。――君をダメ出しに来たんだよ(笑)」


 マスターは心底楽しそうに、唇を吊り上げた。




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