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『AIが管理する理想のVR世界でミュートされたらどうなるか』~ブルーバード編~  作者: バニラ味一択


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第3話:瑠璃



 派出所を後にしたルナは、その足で警察本部へと向かった。

 この異常事態を報告し、確かな回答をくれるのは、本部長エヴァしかいない。




◇◇◇




「……記憶喪失の多発、ですか」


 執務室でルナを迎えたエヴァは、ホログラム・パネルを見つめたまま、一瞬だけ視線を泳がせた。その僅かな間を、ルナは見逃さなかった。


「あなたとゴンドウたちのケースだけではありません。今、エデン国内で特定の人物に関する記憶が消失する事例が報告され始めています。……正直に言えば、あまり介入してほしくはないのですが」


 エヴァは溜息をつき、ルナから目を逸らすように窓の外の景色へ視線を投げた。


「しかし、あなたが納得しないのも分かっています。……独自に捜査してください。この被害については主に学園での発生が顕著です。仲の良かったグループの交流がいきなり途絶えたり、クラスメイトの存在そのものを忘れてしまうケースが確認できています。調べれば、何か判明するかもしれません」


「……ありがとうございます、エヴァさん」


 エヴァの言葉は許可というより、どこか、これ以上こちらに踏み込ませないための譲歩のようにも聞こえた。だが、今のルナにはその違和感に構っている余裕はなかった。




◇◇◇




 学園に戻ったルナとワクは、放課後の校舎で聞き込みを始める。

 確かに、エヴァの言った通りだった。


「あれ、あいつと最近遊んでないねって? ……誰だっけ。そもそも僕、誰かと約束してたっけな」


「昨日まであんなに仲良くお喋りしてたのに、今日はもう他人みたいな顔して通り過ぎるんです。まるでお互いが見えてないみたいに……」


 交流の断絶。それは、まるで人間関係の糸がプツリとハサミで切られたかのような、奇妙で無機質な光景だった。

 ルナが廊下の片隅で、その不可解な状況を整理していると、背後の窓枠から声が響いた。


「……おかしいな。あいつ、僕のこと、昨日まで友達だって言ってたはずなんだけどな」


 廊下の影から、寂しげな苦笑いを浮かべた男子生徒が姿を現した。見慣れない制服を着崩した彼は、ルナとワクに気づくと、少し気恥ずかしそうに頭を掻いた。


「あ、ごめん。独り言。……君も、誰かに忘れられちゃった口?」


 ルナが警戒して足を止めると、ワクが無言で一歩前に出て、少年を鋭くスキャンした。


「……君は?」


「僕はルリ。隣のクラスに転校してきたばかりなんだけどさ。……仲良くなった奴に話しかけたら『君、誰?』って言われちゃって。正直、かなりショックだよ」


 ルリと名乗った少年は、窓枠に背を預け、力なく笑った。その表情には、今のルナが抱えているのと同じ、拒絶された者の孤独が滲んでいるように見えた。


「君が何か調べてるの、さっきから見てたんだ。……もしかして、僕みたいに原因を探してるんじゃないかなって。もしそうなら、一緒に調べない?……一人でこの寂しさに耐えるのは、ちょっとキツいからさ」


 ルナは眉を潜める。

 だが、目の前の少年に『魔』は感じられない。それに、今のルナにとって、周囲の記憶の欠落を嘆き、自分とワクに話しかけてくる相手は、この少年だけだった。


「……ルリ、君もなのね。わかった、一緒に調べよう。ただし、勝手な行動はしないで。ワク、この人をマークしてて」


「了解。……不審な動きがあれば排除する」


 ワクの冷たい宣告にも、ルリは「あはは、用心深いね。でも、そばに居てくれるだけで心強いよ。よろしく、相棒パートナーくん」と、今度は安心したような笑みを浮かべた。




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