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『ダンジョンに行ってみた』

 後日、村では『天職』の話で盛り上がっていた。俺の『天職』の話題にも触れられた。


 めっちゃくちゃ嫌な奴に


「おいマルク、お前の天職はなんだ?」


「……『豚汁師』だ……一応戦闘用……」


「フッ、所詮お前は入れ知恵だけのカス野郎だったってわけだ。そのスキルはただスープを召喚するだけのスキルだろ」


「あ……?どこで見てた?」


「さあな」


 周りの空気の流れが変わった。目の前にいるルージェ・フォンデュ。まあ簡単に言えば上流家庭出身の金髪イケメンだ。彼の天職は『剣豪(ソードマスター)』上位職だった。


「ふん」


 彼が取り出した剣を虚空に剣を振ると、大気に衝撃が起き、近くにあった木が真っ二つに折れた。


 おかしい、ただの騎士にしては威力が桁違いすぎる。


「……!」


 痛いという感情が遅れてやってくるのを感じる。頬から血が滴り落ちていた。慌てて頬に手を寄せるも少しずつ痛みと血が流れ落ちてくる。


「俺は上位職だから王都から直々に呼ばれたのさ。最後にお前らの醜い顔を見るためここに来ただけだ」


「は……?」


「まったく、グズはグズらしくこの村にでも残ってろ。おっと、お前の『職業』は戦闘用だったな。とっとと近場の雑魚ダンジョンのモンスターにでも殺されて死んじまえ!ヒャハハハハ!」


 沈黙が場の空気を流れる。目の前にいる悪意の塊は気色の悪い笑い声をあげながら迎えの馬車に乗って消えていった。


「クソが……」


「おいマルク、大丈夫か?」「マルク君、傷大丈夫?」


「ああ、大丈夫。ありがとうなみんな」


「あんなちょっと金持ちの家に生まれただけのデクノボウよりマルクのほうがずっといい奴だぜ」


「……」


 皆が味方で助かった。だが、まだ災難は去ってなかったようで


「わわわ~!マルク君がマルク君がマルク君が~!もう!『治癒師(ヒーラー)」として許せない許せない許せない!ヒールヒールヒール!」


「ニギャアアアアアアアアア 」


 くすぐったいような感覚が体に流れ込み、体の傷が僅かに癒えた。この娘はメル・ポトフ。『天職』は『魔法使い(メイジ)』のまあ可愛い女の子だ。些細なかすり傷でも絶対に許さない。


「メル、こんな奴回復しなくていいって、速く行こ?」


「失礼だな!」


「じゃあゴミのほうがよかった?メル~もう行こ~」


 こんの性悪野郎が。こいつの名前はベリィ・ミネスト。『天職』は上位職の『魔術師(ウィザード)』であり、一応俺の幼馴染。顔は可愛いが、小さなころから犬猿の仲であり、仲がいいとは到底思えない。


「どこ行くの?」


「近場の訓練場でステータスのレベルを上げるの、ってステータスとか知らないか、一応戦闘型のあんたも行けば?」


「俺は……まあ行くか……」


 しぶしぶだが村の訓練場に行くことにした。目の前の干し草でできた簡素な訓練用人形か、今こそここで俺のスキルを活用すべき時――


「クリエイト!!トンジルゥゥゥゥ!」


 (てのひら)に魔力を集中させる。魔力の扱い方については、母の手伝いでよく魔法器を使っていたため、よほど難しくはない。


 掌から豚汁と思わしき熱い液体が姿を現す。それが訓練用人形を一瞬で飲み込んだ。まあ最初はこの程度だろう。


「おう坊主、魔力の使い方よくわかってんじゃねえか」


「魔法……?を使うのは初めてですけどね」


 少しいい気になっていたのだが、隣を見てみると、とんでもない光景が広がっていた。


「ダークアローォォォ!!」


 目の前にいるベリィの詠唱により出現した無数の夜を帯びた闇の矢が無慈悲にも彼女の前のたった一つの訓練用人形に突き刺さる。その人形は脆くなり、崩れていった。


「うおおおおお!すげぇ!」


「うるさい!喋りかけんな!」


「あぁ!ベリィちゃんだめだめだめ!マルク君の心に傷が付いちゃう!か弱いか弱いマルク君の心にぃ!」


「か弱くねぇよ……(小声)」


 そんなこんなで、約2年が経過した。


 俺ら……俺はだいぶレベルが上がった……


 とはいっても、実践に通用するレベルと言われたら怪しい……のだが、今日はギルドに行く予定だ。


「気を付けるんだぞ!マルク!」「気を付けなさい!マルク!」


「ありがとう!行ってくるよ!」


 この世界では12歳からが成人なので、この世界では俺はもう十分な大人というわけである。父さんがくれた金(通貨:ゴルスプ)と母さんがくれた食料をカバンに詰めて、俺は村を旅立たった。


「ここから俺の冒険者兼『豚汁師』生活の始まりってわけか……」


 正直言ってこの状況は良いものとは言えない。『豚汁師』としての能力は高いわけではないのだ。だったら転職して農業とか豚汁を売って生活すりゃいいじゃんと思う。


 だが、『天職』のシステムはかなり複雑らしく、それは戦闘型と生活型に分けられており、戦闘型へと落ち着いた俺が生活型の職業に転職しようとしても、それができにくいようにステータスは落ち着いてしまっているらしい。


「どうやって戦おうかなあ……」


 俺のスキルは、水属性系統の魔法なのだ。最初のうちは水圧で敵を押しつぶすなどといった方法がとれない。


 つまり、火力不足を全面的に前に出して戦えということになる。そこは武器で抑えよう。とりあえずいわゆる冒険者登録って奴を済ませないとな。


「すみませ~ん」


「は~い」


「冒険者登録したいのですが~」


「あ、冒険者登録ですね~まずは入会金とお客様の情報を測るのでこちらの水晶に……」


 とりあえずあれこれ手続きに二時間ほどかかった。俺の職業はまあレア(強いとは言ってない)なのだが、それにより手続きに時間がかかり過ぎてしまった。


 そんな最中に、


「おお!レベルがもう15を超えてるのか!?まだダンジョンに行ったことないでしょ?君!」


「ベリィっていうのか、乞うご期待だなぁ!ハハハハハ!」


「メルってのも、魔力値が60越えか!」


 ギャラリーは、ベリィとメルに釘付けだった。そんなステータスに関しては、自分なりに必死に訓練してきたつもりだったが、まだまだといったところだ。


===========

名前:マルク・ジルトン

レベル:4

所持金:8万ゴルスプ

職業:豚汁師

力:7

知力:11

素早さ:3

器用さ:60

魔力:20

運:39

スキル:豚汁生成

===========


 ひとまずはあいつらを越せるように、なけなしの冒険者登録得点のダガーと新しい装備(甲冑・上着・ズボン)を着て、俺は早速最下級ダンジョンへと行くことにした。


 目の前のゴブリンがうなり声をあげながらこちらを睨む。こちらもそれ以上に睨みつけ、けん制する。あちらのほうからとびかかってきた瞬間――――


「クリエイトッ、トンジルゥゥゥゥ!」


 掌から大量の豚汁を生成させ、熱さで怯んだ隙にダガーを叩きこむ。肩に刃が食い込み、そのまま切り刻む。ゴブリンはうめき声を上げ、静かになっていく。俺が殺した。その事実にちょっと怖くなったのでダガーを引き抜き、その場を後にした。


「はぁっ、はぁっ、これで最後か……」


 近場のモンスターを数体討伐クエスト、報酬は20万ゴルスプ。この世界の通貨だ。金属バットを持った男を五体倒して20万円を手に入れた。ということになるのだろうか。


 ――神経が震える感覚に襲われた。近くから轟音が聞こえた。恐る恐る近づいてみると、


「ファイヤーストーム!!」


 オークの群れがベリィの魔法によって無残にも燃やされている。最初のほうは火を消そうと暴れてたけど、段々動かなくなっているのにかなり怖さを感じる。


「あああぁ~!ベリィちゃんダメダメダメ~!私も巻き添え喰らっちゃうから~!」


 ……まあ、地道にレベル上げをしてあいつらを越えるしかないな。

===========

名前:ベリィ・ミネスト

レベル:15

所持金:40万ゴルスプ

職業:魔術師

力:4

知力:8

素早さ:3

器用さ:39

魔力:65

運:29

スキル:ダークアロー ファイヤーストーム フリーズレーザー

===========


===========

名前:メル・ポトフ

レベル:7

所持金:40万ゴルスプ

職業:治癒師

力:2

知力:8

素早さ:2

器用さ:12

魔力:49

運:13

スキル:ヒール パワーブースト フリーズレーザー

===========

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