『天職決めの儀式』
「これより『開花』の儀式を始めましょう。子供たちは列で並びなさい」
教会の中には俺や、両親以外の家族がかなりいた。自分の番が待ち遠しい。老いぼれた鑑定士らしき男は淡々と子供たちの小さな手を水晶玉に乗せ、彼らの『天職』を鑑定している。
「あなたのは戦闘型『剣士』あなたは……生活型『農民』あなたは……」
「マルク、次だよ」
「わかってるよ、お母さん」
俺の名は鈴木卓郎――ならぬマルク・ジルトン。異世界に転生して料亭を経営する気さくな母と父の下に生まれた。
転生前は、運悪くデキ婚で生まれ、両親は早々に離婚。幼少期から、親の勉強勉強のヒステリックに耐え、なんとか生きてきた。まあ、道半ばで過労死したけど。
異世界に転生して十年、たぶん初めての友達や、不思議な異世界を楽しんだ。気楽で壮大なこの世界こそ俺の理想だったと思えた。
『開花』の儀式は、十歳となる子供が『天職』に目覚める儀式だ。『天職』とはいわゆるその人間に最も似合う『職業』のことだ。
幸いRPGの職業については元居た学校でのオタク同級生の会話からかなりの情報を手に入れていたので大体のことは分かる。個人的に『
「さあ、あなたは……戦闘型『豚汁師』――?」
「と……?豚汁……?」
『天職』儀式からの帰り道、親は散々褒めてくれた。多分心からの祝福だと思う。
「この豚汁とやら……うまいじゃないか!ぜひうちの看板料理にしないか?」
「あらあらお父さん、マルクの『天職』は、戦闘用のものですよ」
「ぬぅう……!料理人としてこの味はぜひ残していきたいものなのだが……!」
「ははは……」
俺の『天職』はどんなものになるのやら……