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4話「大賢者と少女は強盗と遭遇ス」

「ぐぬぬっ……どうして私が年上の人にご飯を奢らないといけないのですか! 普通こういった場合は先生が払うものではないんでしょうか!? 私は年下からの意見としてそれを主張しますよ!」


 二人が公平を期す為にコイントスでどちらかがご飯代を支払うかどうかを決めると、その結果は文句を撒き散らして鼻息を荒げながらジェラードの隣を歩いているアナスタシアが答えである。


 無論だが幾らジェラードが大賢者とて不正を行った訳でもなく単純に彼女が運を持っていなかっただけであり、アナスタシアが渋々支払いを済ませると二人は店を出て街中を歩き始めたのだ。


「そうか? だったらこれからは飯を食う時だけ体を幼児化させるか」


 彼女の愚痴を横で聞き流しながらもジェラードは少しだけ真面目を装って言葉を口にする。


「うげぇ……先生がショタになるとか絶対に辞めて下さいよ。私の中のショタという概念に傷が入ります」


 アナスタシアはゆっくりと首を横に向けて口をだらしなく開けて心底嫌そうな顔をしていた。


 けれど彼女のその表情は自分が言っていた事だけが影響している訳ではなく、もう一つ別の理由があって歪んだ表情を作り出しているのだろうとジェラードは勘付いた。


 見ればアナスタシアの右手には大きめな袋が携えられていて、中にはサラマンダーのゆで卵がぎっしりと密に詰め込まれているのだ。これは店を出る前に店主がお土産として渡してくれたものだが、如何せん量がおかしくて二人で食べるには三週間ぐらい掛かりそうである。


「重たそうだな。どれ、奢ってもらった者として俺が代わりにそれを持ってやろう」


 ジェラードが本の僅かに人の心を見せると右手をそっと彼女へと向けて伸ばす。


「本当ですか? ならお願いします。……というか意外とサラマンダーの卵って重いんですね。もう腕が痺れて感覚がありませんよ。魔法を使って浮かせようにも、ここは魔力の感度が悪いですし」


 アナスタシアは彼の手にサラマンダーの卵が密に入れ込まれた袋を渡すと自身の手首を触りながらまたもや文句を言っていたが、この地で魔法を使うには確かに初心者魔女では困難であるとジェラードは思いはしたが口には出さなかった。


 何故ならそれを言ってしまうと彼の予想ではアナスタシアが『それは自分なら余裕で魔法が使えるという、私に対しての囁かな嫌味ですか?』と目付きを尖らせて返してきそうだと悟ったからだ。


「まあ、こういう龍脈の流れが悪い場所で魔法を使いたければ事前に自らの魔力をアクセサリーに宿して蓄えておく事をおすすめする。そうすれば必要な時に使えるからな」


 袋を受け取って直ぐにジェラードは魔法を発動させると袋自体を浮遊魔法で浮かせて重さという概念を無視して、そのままアナスタシアに魔術師達にとっての豆知識を一つ教えた。


「えっ、魔力って貯めておくことが出来るんですか!?」


 その事を聞いたアナスタシアは両手を上げて驚く姿を見せると既に腕の痺れは回復していたようである。


「ああ、そうだ。……そう言えばお前にはまだ教えていなかったな」


 この豆知識についてはいつか教えようとしてジェラードは今の今まで完全に忘れていたのだ。


「本当ですよ!? なんでそういう大事なことを、そよ風のようにさらっと話すんですか! もっとこう……タイミング的なのがあるでしょうに!」


 アナスタシアは人差し指を彼に向けながら不満を爆発させたかのように騒ぎ出すと、周りからは小声で何かを話し合っている様子の住民達や冒険者達の姿が見受けられる。


「はて……お前が何を言っているのか俺には理解出来ないが、このまま鉱石が売っているエリアへと向かって当初の目的を果たすぞ。付いてこい」


 ジェラードはこのまま彼女と話しを続けていると何れこの様子を異常に思った人達が通報して、この場に見回りの騎士達が来ることを懸念すると多少強引ではあるが当初の目的を告げて歩き出した。


「まったく……これでは気まぐれというよりかは自己中の人に見えてきますねぇ」


 彼の背後からアナスタシアの力の抜けた声色が聞こえてくると彼女は小走りで駆け寄って来てジェラードの隣に並ぶと、そのまま二人は鉱石が豊富に売られている場所へと向かって足を進めるのであった。



◆◆◆◆◆◆◆◆



「うむ、着いたぞ。ここがヒルデの街で一番多くの種類の鉱石を扱っている店だ」


 ジェラードがお目当ての鉱石を売っているであろう店の前に到着したことを告げる。


「ほえぇ……。なんだか値が張りそうな見た目をしているお店ですね」


 アナスタシアは隣で店の全体を視界に収めようと顔を上げて呆けた声を出していた。


 そして彼も店の全体を視界に映すと、その店は全体的に白色をしていて素材には石が使用されていると何となくだがジェラードには理解出来た。しかも良く目を凝らすとこの店には所々に鉱石を彷彿とさせる絵が掘られていて、なんとも主張の激しい店であることが分かる。


「さぁ、中に入るぞ。お前も何か気になる鉱石があったら買うと良い。一応魔法の媒介としても使える上に、素材として扱えば杖を作る際の材料にもなりえるからな。鉱石の使い道は千差万別だ」


 ジェラートが店に入る為に足を進めながら呟く。


「意外と万能なんですね。にしても杖を作る……それには少しばかり興味が湧きますねぇ」


 隣を歩くアナスタシアは右手を自らの顎に当てながら神妙な面持ちで杖の自作に関して興味を示している様子であった。

 ――そして二人が鉱石を取り扱っている店の中へと足を踏み入れると、


「邪魔するぞ店主。ここにアビスニ――」


 ジェラードが店に入って店主に声を掛けようとすると、


「おらっ! 殺されたくなければこの袋に金と鉱石をさっさと詰めろ! ちょっとでもぐずったら刺しちまうからなぁ!」


 彼の目の前では覆面を被って鋭利なナイフを片手に店員を恐喝している光景が広がっていた。

 その唐突な出来事に隣にいるアナスタシアでさえ棒立ちして呆然としている状況である。

 

「ひいッ!? わ、分かりましたぁぁ!」


 店主らしき男はナイフを顔に近づけられて悲鳴を上げると、手当たり次第に近くの物を掴んで言われた通りに袋に詰め込め始める。


「おらおら! 刺しちまうぞ~ん……ってお前ら誰だ? 今はここは俺達”赤の蛇”が強盗中だぞ!」


 するとジェラード達の横から覆面を被ったもう一人の男が姿を現すと、自らが強盗中であることを告げてその組織名は赤の蛇だと言う。


「あぁー、自分から強盗だって言ってますよ先生?」

 

 アナスタシアはそれを目の当たりにして呆れた声色を出すと顔を彼の方へと向ける。


「はぁ……やれやれ。あまり店内で手荒な真似はしたくないのだが、ここは拘束魔法で「あっ! はいはい! 私やってみたいです拘束魔法!」」


 ジェラードは心底面倒だと思いながら事を手早く収める為に魔法を行使しようとすると、それはアナスタシアの活気に満ちた声によって遮られた。


「魔力は残っているのか?」


 ちゃんと魔法が発動出来るぐらいに残りがあるか彼は訊ねる。


「当たり前ですよ! あと数回は全力で使っても大丈夫なぐらい残しています!」


 彼女は自慢気に両手を腰に添えて尚且つ胸を張りながら答えていた。だが確かにアナスタシアが本来持っている異常なほどの魔力量を考えれば、この龍脈の流れが悪い土地でも関係はないのだろうとジェラードは思った。


「そうか……だったらやってみろ。ただしそれには――」


 魔法を使う事を許可するとジェラードは次に注意点を述べようとしたのだが、


「対象を捕縛せよ! バジルジロックッ!」


 それよりも早くアナスタシアが懐から杖を取り出して拘束魔法を発動するのであった。

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