第4話:実験
タイトル変わりまして【スーツ姿の転生者】を宜しくお願いします!
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「死ぬ……! 死ぬ……!」
「死にません、大丈夫です。加減してますから!」
宿の外に隣接している草原に連れてこられた俺は、必死に迫り来る魔法を避け続けていた。
「火の玉とか! 明らかに火傷じゃ済まないだろ!」
「見た目だけです! 実際当たったらあっつ! ってなるぐらいですよ」
「それが嫌だって言ってるんだろうが! それに飛んでくる氷柱とか、もうちょい先を丸く出来ないのか! 怖すぎんだろ!」
「あ、それも多少血が出るぐらいの勢いなのでだいじょ」
「確認だが、俺のこと嫌いじゃないよな⁈」
淡々と魔法を放ってくるキータの言葉を遮りそう質問をする。
「え? そんな! まさか、嫌いだなんて! 自分は大抵の人は嫌いにならない自信がありますから!」
「尚更怖えよ!」
こんな形で魔法を体験したくはなかった。
もっとこう「コノサキさんって魔法の才能あるんですね!」みたいな展開とか「これが魔法です!」みたいに魔物とかの戦闘の時に颯爽と見せるとか、色々あるだろ。
なんで魔法を撃ち込まれてるんだ……!
「反射神経はとても良いですね、そっち関連の能力かもしれないです」
「はあ……はあ……絶対に違うと思うぞ……自分でもこんなに動けることはびっくりだが……死に物狂いでってのが……正しいな」
「感覚とか変わらないですかね」
「……残念ながら変わらないな……」
しばらく飛んでくる火の玉やらなんやらを避け続けたが、相変わらず自分に何か特別な変化があるようには感じなかった。
息を切らせながら、何かメモを取っているキータに対してそう応える。
「でも素でこんなに避けれるのは珍しいと思います! じゃあ次は耐久面を……」
「頼むから一回攻撃面の方の調査しないか? なんで先に負担がかかる方から間髪入れずにやろうとするんだよ。人の心はどこに置いてきた」
「先にめんどくさいものからやった方がいいかなって思いまして」
「次からはこっちの意見も取り入れような」
小さなお節介大きなお世話とはよく言ったもんだ。
でも一応すんなりと自分の意見を取り入れたキータは、次は魔法を撃てるか試してみましょうと、奥の小屋から丸太を持ってきた。
「一応確認ですが、魔法に関しては何も知らない状態なんですよね?」
「そうだな、魔法の存在は知ってるが後はさっぱりだ」
「わかりました。じゃあまずは魔法の基礎から!『フレス』!」
その言葉とともにキータは手元に小さな火の玉を出現させると、奥の木の丸太にそれをぶつける。
火の玉が当たった丸太は軽く吹っ飛び、燃え移った火がその表面を焦がした。
ちょっと待て。威力弱めてたはいえ、これ撃ち込まれてたのか……?
そんな血の気の引いている自分なんてお構いなしにキータは説明を続けた。
「魔法が出せるかどうかは自分の体内にある魔量が関わっていてますが、それだけではこのように形として出力は出来ません。そこで先ほど言葉にした『フレス』などの魔法言語を使う必要があるんです!」
「その魔法言語ってのを言えばいいのか?」
「いえ、そんな単純ではありません。例えば『フレス』。とまぁ、こんな風にただ言っても何も出てこない場合があります。ただ、『フレス』!」
「うぉ!」
キータの手から火柱が立ち上る。
「こんな風にすごい威力で出てくるようにも出来ます。何が違うかというと、想像力です! 最初は小さな火の玉をイメージして言葉にしましたが、最後のは立ち上るドラゴンの息吹をイメージして言葉にしました」
「要するに魔法言語をどう形にするのかは自分次第ってことか……」
「そうです! 自分の中の魔量によって具現化できる限りはありますが、よっぽどのことがない限り大抵の魔法を具現化できるはずです。ただそれでも魔法使いが少ないのは、その想像の紐付けや、魔力の感知が難しいからなんです」
なるほどな想像力か……魔力の感知とやらは想像がつかないが、それならまだ行けそうだぞ?
「じゃあ実際にやってみましょう! 『フレス』と言いながら火に関することを想像してみてください!」
「よし、行くぞ……! 『フレス』!」
そう言葉にすると自分の手には……!
「何も出てませんね」
「そうだな……」
なんか気恥ずかしいが、最初はこんなもんだろうと言い聞かせる。
でも感覚が一つ増えていることに気づいた。
胸の奥から全身に何かが染み渡る感覚だ。
おそらくこれが魔力……なのか?
この感覚を忘れないうちにもう一度目を瞑り挑戦する。
「『フレス』……!」
「おお! 出ましたよ⁈ コノサキさん出てます! ちっちゃいけど!」
手の平に染み渡った感覚が集まるのを感じると、キータの言葉で成功を確信し目を開ける。
そこには言葉通り、手のひらに確かに炎が出現していた。
ただ。
「コンロの火じゃねーか……!」
見慣れた火を想像した結果、なんか出た。
ここまではいい。
問題なのは、出た炎がコンロの火だったことだ。
キータの炎を見た後にこれを見ると、自分の想像力の程度が知れてなんか虚しくなる。
「すごいですよ……! たった2回で成功するなんて……! コノサキさん魔法の才能がありますよ!……ってあれ? 嬉しくないですか?」
「……いや、いいんだ……」
「そうですか……? あ! じゃあ他にも試してみましょう!」
「そうだな……!」
少し意気消沈していたが、魔法の才能があるかもしれないと理解した途端俄然やる気が出てきた。
「僕に続いて言ってみて下さい! 『フリズ』! 氷の氷柱が出てきます!」
「『フリズ』!……お? なんか出た」
冷蔵庫で固めるようなキューブ型の氷が出てきた。
「『ヒュオン』! 鋭い風を起こせます!」
「『ヒュオン』!……あったかい……?」
ドライヤーのような風が流れた。
「『ウォルン』! 水を操って壁が作れます!」
「『ウォルン』!……壁……ねぇ……」
ほっそい水流がしばらく出た。
……水道水だな……コレ。
「次は『ビリデ』!」
「あ、もういいかもしれない」
「え?」
「もういいかな」
居た堪れなさすぎて、一回中断した。
「なんでですか? まだ魔法の種類ありますし、ちゃんと出力もできてましたよ?」
「その、なんだ。ちゃんと出力できちゃってるのが良くないというか、ともかくもう勘弁して下さい」
自分の想像力が、現代社会にすっかり侵されてしまっている。
「わ、わかりました。でも才能があるのは本当ですからね? 普通はこんなポンポン魔法って出ないんですから」
「ありがとうな……でも、そうだ。気になってたんだが、キータは詠唱なしに魔法放ってたよな? あれってどういうことだ?」
とりあえず話を逸らそうと、疑問をキータに投げかける。
「確かに自分の説明と矛盾してましたね。簡単にいうと、魔法言語は鍵みたいなもので、魔法言語を口に出すことによって体が魔法を放つ形になるんです。あ! 実際に形が変わるわけじゃないですよ! 例えです!」
「なるほどな、でもそれと無詠唱はどう関係があるんだ?」
「最初の詠唱だけで済むようになります。一回言ってしまえば体がしばらくその魔法を出力する形を覚えていて、あとは想像すればポンポンと。そもそも魔法言語というのは、昔の偉い人たちが『ある言葉を言うと、この魔法が出やすくなる』って見つけたもので、極論ものすごい想像力さえあれば詠唱は必要ないんですよね。だから結構凄いことしてたんですよ僕!」
「いや、本当に凄いよ……」
どうですかと胸を張るキータだが、本当に輝いて見える。
いつしか無くしてしまった自由な想像力……泣けてくるな。
「それじゃあ次は防御力の面ですね。行きますよ!」
「待ってくれ。行きますよ! じゃないからな? 殺す気か? さっきの丸太見てたぞ? 人間が生身で耐えれる代物じゃないだろ!」
血も涙もないのか……⁈
感傷に浸っている隙すら与えないキータに、恐怖を感じる。
あと、シンプルに殺しにきている。
「まぁ……確かに明日までに戦闘不能になったら元も子もないですね……」
「物騒なこと言うよな」
ドタバタで頭から抜け落ちていたが、そういえば明日ハリックとかいう借金取りと戦わなくちゃならないことを思い出した。
でもだぞ? この一連の中でキータの力を嫌ってほど体感したのだが、そんなキータが勝てないハリックってやつは、これより強いってことになるよな……?
む、無理じゃないか?
「でも付き合ってくれてありがとうございます! なんの能力を持っているかまだ分かりませんが時間はまだありますから、ひとまず今日は休みましょうか。コノサキさんの世界の話とか聞きたいですし!」
キラキラしたキータの目を見るとそんな考えも揺らいだ。
キータの言うとおり、まだ時間はあるわけだから、最後までやれることはやってみるか。
正直何もかも不安だが、前をぴょこぴょこと走るキータを見て、そう心に決めた。




