14、えっ?
神殿から使いが来たのは、数日後のことだった。
「実は、魔女とその妹がいなくなったあと神殿に神託がおりまして……コーデリア様は聖女を名乗る資格をお持ちです」
驚くべきことに、神殿からの使いは私が聖女を名乗れるというのだ。
「なんと! 我が娘が聖女様!」
お父様は奇跡に出会ったみたいな顔で飛び上がって喜んだ。
「めでたい! めでたい! すごいぞコーデリア!!」
大声ではしゃぐ声は無邪気な子供みたいだった。
聞いているだけで、恥ずかしいような嬉しいような気持ちでいっぱいになる。
「パパの天使が世の中公認の聖女だと。なんてことだ、感動して手の震えがおさまらん!」
「きゃっ」
お父様が大喜びで私を抱え上げて、年甲斐もなくクルクルとまわる。
視界が万華鏡みたいにまわって、ちょっと楽しいような、やっぱり恥ずかしいような……そして、お父様のお体が心配なような?
「ぐっ、こ、腰が……っ」
「ああっ、お父様!」
――やっぱり!
腰への負担が大きかったようで、お父様は私を抱っこしたまましゃがみこんだ。
地面に足がつくと、ほっとする。
「は、っはは、あはは」
顔をしかめて、泣きそうな顔で、お父様が笑っている。
ぎゅうっと私を抱きしめる体温と、鼓動を感じる。
安心したみたいな柔らかさで、お父様がちいさく囁く。
「これで、もう誰もお前を蔑むことはないぞ。聖女様なのだから。血統など関係なく、世界中から貴いと呼ばれる特別な存在なのだから。は、ははは、コーデリア。よかった。よかった……」
このお父様も、聖女の父という肩書きを手に入れられれば貴族社会で地位が向上するだろうか?
蔑まれる事が減るだろうか。
父への愛しさがこみあげて、私はそっと父の背をさすった。
大きな背中は、あたたかかった。
「お父様。わたくし、立派な聖女と呼ばれてみせますわ。世の中のみんなに認めて貰えるよう、がんばります」
「ああ、コーデリア。無理してがんばる必要はないとも。お前はそのままで立派だよ。パパの自慢の娘だよ……」
「……と、ところで、わたくしはジャスティン様ともう一度婚約しようと思いまして……おそらく、あちらのお家からも打診が来ていると思うのですけれど……」
「う、うわぁあああぁ!! パパ、その話はまだ受け入れる心の準備ができてなぁぁい!!」
「お、お父様……!!」
色々あったけれど――私は聖女になり、ジャスティン様と正式に婚約し直したのだった。




