あの日にタイムリープした俺は、絶対に幼なじみで大好きなあいつを守る
ほぼ初投稿みたいなもんです。暖かい目で見てやってください。マジレス禁止()
あぁ、あの日だ。あいつがどうしようもなく変わってしまった…あの日。
何度戻りたいと思ったことだろう。まさか本当に戻れるなんて思ってもいなかったが…。だが、せっかく戻れたんだ。絶対に変えてみせる。俺があいつを守るんだ───
少し過去の話をしようと思う。俺にはかなり仲の良かった幼なじみがいる。彼女は昔は綺麗な黒髪で容姿がすごく整った、他に類を見ないほどの美少女だった。ちょっとクールで大人びているが、困った人がいたらほっとけないようなめちゃくちゃ優しいやつだった。クラスにいる男子はだいたい彼女のことが好きだったと思う。実際結構なやつが告白して振られていた。だけどある日、そんな彼女を悲劇が襲った。俺が聞いたところによると、彼女はその日、親にお使いを頼まれて買い物をしに行く途中だった。人通りが少ない道を歩いていたら、路脇に駐車してあった車から降りてきた男に道を聞かれたらしい。生来の優しさからか、彼女は道を教えようと近づいた。そのとき、車に乗っていたもう一人の男が急にドアを開けて彼女の腕を引き、引きずり込もうとした。当然彼女は叫ぼうとしたが、最初に外にいた男に後ろからハンカチを口に突っ込まれ、そのまま押し込まれた。そしてそのまま連れ去られて…。帰りが遅いことを心配した親が捜索願を出したが、結局見つかったのは1週間後。別の県のとある住宅地で最近子供の悲鳴のようなものが聞こえる、という通報があり、警察が確認しに行ったところ、彼女がボロボロの状態で部屋に放置されていたらしい。衣服は剥ぎ取られ、全身に乱暴された痕があった。それに犯人はちょうど引き払ったあとだったらしく、そのまま捕まらないまま。考えうる最悪の結末を迎えた。彼女はその後家に戻りはしたが、その時のことを思い出すのか、1日に何度も発狂したり、衝動的に自殺したりしようとした。部屋にこもって会話もままならず、それどころか人が近づくだけで恐慌状態に陥る。親は何とか慰めようとしたが、彼女に「あの日買い物さえ行かなければ!」と怒鳴られてからは諦めてしまった。俺はそんな彼女に扉越しに話しかけ続けた。最初はずっと無視されたが、俺しか話しかけなくなってから1週間くらいすると、次第に彼女は俺に罵声を飛ばすようになった。「あの時助けてくれなかったくせに優しくしないで!」と言われた時には、本当に心に響いた。何度もその日に戻りたいと願った。月日がたち、俺達は大人になった。彼女の両親たちは2人とも鬱になってしまい、働くことがままならない状態だったから、俺が養わないと、と思った。家にいないと彼女が妙な気を起こすかもしれないし、家でできて、なおかつある程度稼げないといけないから、プログラミング系統の職に就いて、寝る間も惜しんで働いた。給料は数字の上では医者よりも稼いでいたと思う。そうして何とか俺と彼女が充分生きていけるだけの金を稼いで、しばらくは休もうと思った。だから辞表を出し、自分の部屋で眠りについた。そして───10年も前に出ていったはずの実家で目を覚ました。
混乱は一瞬だった。いつもみたいに睡眠不足であまり回らない頭じゃなかったからかもしれない。俺はすぐに携帯の日付を確認した。そして、
「あぁ、あの日だ」
思わず呟いた。それはまさしく彼女が消えてしまった日だった。何度も事件の概要を見返していたから、どこで事件が起こったのかも、何時に事件が起こったのかも、正確に覚えている。事件が起こるまであと数分。走ればギリギリ間に合う…!
それを確認すると同時に、俺は携帯を持って階段をかけおりる。親の呼び止める声も無視して靴すら履かずに走り出した。これは夢かもしれない。というかさっき寝た記憶があるんだから、きっと夢なのだろう。だとしても、そうだったとしても!俺は行かなきゃいけない。徒労ならそれでいい。だけどもしこれが現実だったとしたら、また俺は失ってしまう。彼女の笑った顔を。優しかった彼女を。彼女を絶対に守るという誓いを。
この角を曲がったら、もう現場は目の前だ。現場はちょうど角を曲がったところで、通りからは見えないのだ。だから当時目撃者がおらず捜査が難航したのだが…今は逆に奴らの不意をつける。子供なんて非力だから、大人2人を倒せるわけが無い。だから不意をついて、俺のできることをするしかない。
俺は通話状態にした携帯をポケットに突っ込んで、角を曲がった。ちょうど彼女が中の男に腕を掴まれているところだった。外の男はさすがに俺の登場に驚いたらしく、一瞬硬直する。俺はその瞬間に───
彼女を押し込む形でとびこんだ。
そしてそのまま彼女を覆う形で強く抱きしめる。
「おい!何だこのガキは!」
「知らねえが時間がねぇ!ずらかるぞ!」
そう言って男たちは車を発進させた。発信させてすぐに、後ろの男が
「オラッ!どけガキ!今からお楽しみなのに邪魔なんだよ!」
と言いながら殴り始めた。痛い。めちゃくちゃ痛いが、俺は絶対にどかない。男は俺の腕を解こうと掴んできたが、全力で抱きしめて抗う。噛み付いてやりたいが、顔をあげた瞬間に膝を入れられでもしたら絶対に耐えられない。ひたすら耐えるしかない───
そのまま何発殴られたかわからない。全身がもはや痛みすら感じなくなってきた。まだか?まだなのか…?膝を頭頂部にまた入れられて、一瞬意識が飛んでしまう。その間に俺は引き剥がされてしまった。
「ようガキィ。よくも邪魔してくれやがったなぁ?その綺麗な顔をボコボコに…」
男がそう言いかけた時だった。俺にとって勝利の瞬間が訪れる。微かにだが、サイレンが聞こえた。
「おいどういうことだ!サツが来やがった!周囲に人はいなかったはずだぞ!」
運転手の男が焦ったように怒鳴る。後ろの男も驚いたらしく俺を放り投げた。衝撃で俺のポケットから携帯が飛びでる。それを見た男が血相を変えた。
「このガキ、まさか…!」
そう言いながら男が拾いあげたのは、イヤホンがささって周りに音が聞こえないようになってる携帯だった。画面には通話中の文字。
そう。俺は予めメールで警察に誘拐されたから今から鳴らす携帯を逆探知で追って助けてくれ。と頼んでいたのだ。前世プログラマーの俺からすれば、走りながら入力することなんか容易い。だから通話状態で携帯を持って来ていた。そして万一携帯から音が出ると存在がバレるかもしれないので、出る時に引っ掴んでいた携帯をぶっ刺して置いたのだ。男がイヤホンを引き抜くと
「貴様ら!逃げるのは不可能だ!早くその子を解放せよ!繰り返す!早くその子を───」
と電話越しに叫んでいるのが聞こえる。そして追ってきたパトカーから男たちは何とか逃げようと信号を無視して進むが、パトカーの方が速い。しばらくカーチェイスが続けられたが、結局パトカーに抜かされてバリケードを作られると、とうとう観念したのか車を停車させた。周りに停車されたパトカーから大量の警官が降りてくるのを確認した瞬間、安心した俺は、静かに意識を手放した。
「あれ、ここは…」
目を覚ますと、知らない天井だった。意識が混濁していたが、ことの顛末を思い出した瞬間、慌ててはね起きようとする。
「彼女はどうなった!」
自分ではそう叫んで飛び起きたつもりだったが、実際にはかすれた音が出ただけだし、身体中が痛すぎて全く動かなかった。だが俺の心配はすぐに取り払われることになる。俺の顔を覗き込んできたのは彼女だったからだ。ものすごく目が腫れたりしているものの、間違いなく、彼女。目覚ましたー!と言って走ってでていく彼女を横目に俺は安堵のあまりため息をこぼし、また意識を手放すのだった───
そして1時間後くらいに目を覚ました。
その後彼女に寝すぎだと抱きしめられながらすごい泣き笑いで怒られた。俺も抱き返しながら、彼女の温もりがあることに安心し泣いてしまった。もう戻らないと思っていたものを、こうしてもう一度───
泣き止んだ後、医師の方に見てもらい、大丈夫だと判断されると、警察から聴取を受けた。犯人や彼女自身から聞いた話では誘拐されたのは彼女であり、俺の通報と食い違っていたからだ。しかも俺が出ていった時の様子があまりに尋常でなかったため、元々知っていた、つまり自作自演の可能性を疑われたのかもしれない。その辺は嫌な予感がして飛び出したらちょうどその場面に出くわし、慌てていて打ち間違えたと言い張って何とかごまかした。結局その後少し疑われたようだが、普段の行動や人間関係、それに男たちは他県の人間で俺が関わる機会がないことなどから潔白は証明されたらしい。そして松葉杖をつきながらではあるが、俺たちの失われた日常が戻ってきた。
それからというもの、彼女は一見すると変わらないちょっとクールで優しい性格のままに見えるが、男にはクラスメイト含めて全く近づこうとしないし、俺にべったりで絶対離れようとしない。夜も出ていかないし、風呂にも一緒に入ってくる。女の子に俺が呼び出されたりした時は、絶対に俺を行かせてくれないし、2人きりとかにも絶対にしようとしない。彼女に好かれていることは素直に嬉しいのだが、いささか異常な気もする。まぁ、幸せだからいいのだが。
そんなことを思いながら高校からの帰り道を彼女と歩いていると、彼女が話しかけてくる。
「ねぇ」
「ん?」
「昔のこと考えてるの?」
「おう、よくわかったな」
「私もちょうど考えてたから。昔のこと。」
そう言って彼女は俺に笑いかけ、不自然な程にハイライトのない目を向けて俺に言った。
「今度は守ってくれてありがとう」