表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/65

2-15 暗躍する者

 15章



まずはバースさんにガンザになりすましてもらい本物のガンザを幽閉する。最悪の場合の身代わりとして死んでもらうためである。そのために必要なことはガンザを不治の病にし、周知してもらうこと。バースが成りすました際に多少性格が変わっても、それは病気のせいだと言い訳ができるようにだ。2大勢力の均衡はとれている。ガンザが消えたということを知られない限り相手も下手に行動はしないだろう。故にヨッカをすぐにどうこうするつもりはない。逆に利用さえできるかもしれないと思うほどであった。だが、どうしても争いは避けられない。それは奴隷売買の件である。

こちらがその取引を独占しなくてはいけない。だから、どこかのタイミングでこちらの方が上である事を知らしめさせなくてはならない。そこはバースさんに出てもらうしかないわけなのだが。

奴隷売買を独占できれば、奴隷売買の金とカジノの金が入り、たちまち金は儲かるであろう。ヨッカが反乱の意思を示さないように奴隷をこちらで買い取ることにしようとも思っている。ただ、素直に従ってくれるかだけが不安であるのだが。不満を解消させる的はどこにでも必要である。故にヨッカは殺さずに適当に皆の不満の対象となっていて欲しい。

そして、ヨッカの矛先はその他の2つの奴隷売買の勢力へ向けて貰えればそれでいいだろ。考えがまとまったところで後は行動あるのみ。バースと共にガンザを捜す。ガロンがガンザの側近を引き剥がす、その間にバースはガンザに対峙し、ガロンの所持していた呪符をガンザに貼り付けるのが作戦だ。

呪符の効果は徐々に対象を衰弱させていくというものだった。2人は仮面を被り、正体を隠す。そして、ガンザと対面する。そこには側近であるハイズがいたのだった。戦闘を仕掛け、ガロンはハイズをガンザから引き剥がし、遠くへと離れていく。殺さないように時間を稼ぐのがガロンの仕事。と、そこへバースがやってきた。仕事が早すぎる。驚いたガロンを連れ、バースは転移した。

それからしばらく待機した。ガンザが町に姿を見せなくなるまで。ガロンはその間ガンザのカジノを偵察し、ガンザの仲間がガンザの不治の病を知るのを待った。知ったことを確認したら次の段階。その間遊びほうけていたバースはランプで数人を呪符で石に変えてしまったそうだ。ガロンはビックリする。大切な呪符だったのだが、それでもバースに支払う対価がなかったためそれを渡したのだった。

徐々に衰弱させていく呪符、呪符ベガリーイ。石にする呪符、呪符タルタント。

これからは呪符ではなくきちんと対価となる金を支払えると安心するガロンであった。カジノ内へ入りガンザを見つける、そしてバースがガンザと入れ替わるだけ。自分達は客を装えばいい。

ガンザが不治の病だと知られるまで待機していた間にカジノの内部に関しては調べあがっていた。ガロンがガンザを探索し、外に出てバースにガンザの位置を伝える。バースは転移し、ガンザを捕縛し、カジノの地下にある使われていない牢へと幽閉する。そして、バースは外にいるガロンのところまで来たのだった。

「後は気を失ったふりをしてください。ガンザに変身して」

そう言われバースは従う。ガロンは道で気を失っていたガンザを助けたという設定を作りカジノのメンバーに加わることにしたのだった。バースの(ガンザに成りすました)命令により実権は全てガロンが握ることとなった。バースは不治の病ということで隠居するとなったためだ。

まず行いたいことは奴隷売買の独占。ガンザたちはカジノで儲けているだけであり奴隷売買には介入していない。つまりはヨッカを黙らせなければならない。

ガンザたちも奴隷売買を始めたと知らしめる。そのためにヨッカのしまを荒らすことが必要であった。最初だけはメンバーの統率に不安があった為、バースを連れて行くことにした。

バースは通りでライア=リヴェールという女に目をつけ拉致した。その際、抵抗した為一緒にいた両親を殺し、家へと向かったのだった。残りのメンバーとしてはメルケスに跡目を継がせたかったためにメルケス、ガラフ、ティアを選考した。ハイズとドルガンは少し正義感が強く奴隷を捕まえる仕事には向いてないと思ったためであった。

ガラフは今グエンサ兵に捕まってもらっては困るから影で暗躍して貰いたい、ティアはヨッカたちに対する餌として十分だったので見せびらかすために選考した。ドルガンとハイズはカジノの用心棒として就いてもらう。奴隷の捕縛人数に関してはノルマを課し、必要にヨッカのしまから強奪する。

ヨッカが動くのも時間の問題だった。どうするのが一番いいのか。ガロンは考えながら地下に幽閉したガンザを見ていた。おかしい、ガンザの様子がおかしかった。呪符ベガリーイは徐々に衰弱させ最終的には死に至らしめるのだが、それにしても進行速度が速すぎる。ガロンは慌ててガンザから呪符を外した。

(もしや・・・。)

ガロンはふとある考えにたどり着く。ガンザは元々不治の病を患っていたのではないのか。それに輪をかけて呪符を貼ったため進行速度を速めてしまったのかもしれない。内部でも不和が広がっている。バースが元気だからだ。もしもガンザが昔から不治の病を患っていたとするならばバースのこの元気さは異様だ。

不審がられても仕方ない。ガロンは皆を集める。そしてこう告げるのだった、

「ガンザには応急薬である大陸の伝説である生命の大樹に似た薬を飲ませている。もし俺を裏切るような行為をすればガンザはたちまちに薬を絶たれ死ぬだろう。今の元気さも急激に失われるだろう。どうすればいいか、分かるよな」

その言葉にメンバーは固唾を飲むように頷く。ガロンは笑いを堪えられない。こんなことで組織を強固なものにできるとは。

不安要素は消えた。後は攻めてくるヨッカを返り討ちにしてこの町での奴隷売買を独占するだけ。と、あらぬことが起きる。それは現在カジノ内で暴れている奴だ。用心棒であるハイズとドルガンが赤子のように扱われている。影から確認したガロンは唖然とした。そこで暴れているのはオリジナルであるからだった。匂いを嗅いで直ぐに分かった。緊急事態発生にガロンは慌ててビップルームにいるバースを呼ぶ。バースは部屋で女と酒を飲みながら楽しんでいた。

「ガンザさん、緊急事態です。至急頼みたいことがあります」

そう言うが、バースは面倒くさそうな顔をする。あたかも今いいところだから邪魔するなと言いたげなそんな顔をして。

だが、そんなことに引け目を感じ、バースに言わないことは全ての終わりへと繫がる。いくら払ってもいい、その覚悟で神のような存在であるバースに対し強気な姿勢をとる。

「お願いします、いくらでもかまいませんから、今すぐ来てください」

いっこうに引こうとしないガロンに折れたのかバースはため息一つ、立ち上がった。女にまたね、と別れを告げて。

「高いぞ」

少し怒り気味にバースはガロンの後ろを歩く。だが、1Fの騒動を見た瞬間、バースは笑った。

「こりゃ、俺しか無理だわな」

詫びのしるしなのかガロンの肩をポンポンと叩いていた。

「撤回だ。お前の判断は正しい、今回はおまけだ。金はいらない」

そう言うと、バースは堂々とした態度で暴れるオリジナルの元へと向かう。側には疲弊しきったドルガンとハイズの姿があった。そのオリジナルはヒランと名乗った。バースはヒランを外へと殴り飛ばした。2人がかりでも無理だった相手を軽く殴り飛ばしたのだった。ガロンはやはり神、と更なる尊敬の念を抱くのであった。

外で殴りあう両者、だが、圧倒的にバースが優勢であった。だが、とどめはささなかった。そしてバースはヒランに対し話を始める。「なぜ暴れたのか」と。

ヒランの話は至極単純、カジノで負け腹がたった、それだけであった。負けた金を取り戻そうと暴れたらしい。

「お前、本気じゃないよな」

その言葉にヒランは笑った。

「本気ではないが、現状では本気だ」

その言葉にバースは笑う。

「俺の下で働かないか。今の腐った暮らしなんか捨てて、俺ならもっと楽しい思いをさせてやれるぞ」

そう告げたのだった。

「楽しい?具体的には」

少し興味があったのかヒランはバースに質問を投げかける。

「この大陸を征服する。そのために俺独自で軍を作りたい」

その言葉にヒランはニヤリと笑った。

「俺はここに来る少し前まではビラの洞窟にいた。そこにはオリジナルがいっぱいいるぞ」

その言葉にバースは多大な興味を示す。

「それはいい、じゃあこうしよう。オリジナルの軍を作ろう」

「好きなだけ殺していいってことだよな」

「ああ、そうだ。だが、すぐではない。ここでの仕事が終わり次第だ。ここで粗方金を稼ぐ、それまではここでお前も協力しろ、その後でビラの洞窟を征服するぞ」

ヒランとの協力関係が出来上がった。これはガロンにも秘密にすることにした。ガロンたちにはここでの負け分、そして壊した物品の弁償の為働いてもらうということにしたのだった。

ヒランの担当は地下牢の番。一番見つかるとまずい場所を守らせることにした。来た奴は容赦なく殺して構わないと言伝した。

バースは病弱な演技をしながら再びガロンから薬となる特に効能もない水を貰い、ビップルームへと姿を消すのであった。ハイズとドルガンは近くの病院へと搬送した。ガロンは態勢が悪い中ではあるが動き出したヨッカに対し行動を開始する。チームとしては2班、ガロンとティア、そしてメルケスとガラフ。ガロンとティアはヨッカの直属の部下であるラドゴスを発見する。

ガロンが回り込むから、ティアにその間注意をひきつけてもらいたいと申し出る。そして、ティアは戦闘を開始する。対する相手は10人近い。しかもその中に幹部であろうラドゴスの部下4人もいたのだった。ガロンはヨッカがティアを狙っていることを知っていた。だからこそ即座に殺すようなことはしないと。ガロンが隠れて見ていると、そこにメルケスたちが現れる。

即座に助けに入ろうとするメルケスたちを押し止める。まだ機ではないと。だが、やられているのは仲間だ。逆上するメルケスを叱咤し止める。これは作戦だと。ティアが捕縛された瞬間だった。安心しきった相手に対する強襲。ティアが玩ばれている最中だ。相手には戦闘の態勢が整っていない。3人による攻撃によりラドゴスたちは完膚なきまでに叩きのめされたのだった。

捕縛を解かれたティアは皆殺しにしようとしたのだが、それをガロンは止める。そして、ラドゴスたちに告げる。「これからは奴隷は俺達が買ってやる。奴隷の売買は俺達を通せ」と。

「でなければ次は確実に殺す」

そう告げたのだった。ビビったラドゴスたちは即座にその場から撤退していった。これでガロンの計画である奴隷売買の独占も完了であろう、そう胸を撫で下ろすのであった。


                     ・



その後、メルケスとティアはドルガンたちのお見舞いに行くと言ったのだった。カジノは閉店していたため用心棒はガラフ1人で十分だろうと判断し、ガロンは許可を出す。

「あいつは異常だ、仲間なんかじゃない」

そう訴えるティア。それに同意するメルケスであった。だが、ガロンに対し反抗することはできない。ガンザの命はガロンが握っているのだから。

「このままじゃいけないよね」

そう言い、深く考え込むティアにメルケスがとある記憶を思い出すのであった。

「ティア、お前はもう直ぐ開催されるランプ武闘大会に出ろ。そこで獣王の杖を手に入れるんだ」

「獣王の杖?」

と首を傾げるティア。

「そうだ。あれは何でも願いが叶う。だから、それでガンザの病を治すんだ。そうすれば、もうガロンに従わなくても済むだろ」

その名案に感動するティア。ガロンにはメルケスが上手く伝えておくとだけ言っていた。ガロンにそのまま伝えるだけで十分だろうとメルケスは思っている。なぜなら獣王の杖は毎年偽物だからだ。願いなんて叶わない。だが、今年は違う。森での異変の報告を聞いているのだから。今年の賞品は本物だ。ガロンはそれを知らない。

先に病院に入らせたティアとは別に空を眺めるメルケス。何やら腑に落ちないことがあるようだ。(ガンザ・・・、変わりようが異常すぎる。まるで別人。あの時もそうだ、ガンザの属性は雷。だが、ヒランとの対戦のときに一度も雷を使ってはいなかったらしい。それに戦闘力にも疑問が残る。一度だけヒランと対面する機会があったのだが、あれはガンザが余裕を持って勝てるような相手じゃない。だとするならば・・・。)

だが、メルケスは他のメンバーには相談できなかった。へまをやらかしてガロンに目をつけられても困るのだから。的にされるなら俺1人で十分だろうと考えたのだった。

メルケスは奴隷収集から奴隷の買取、そして奴隷船への引渡しの仕事をガロンに任されている。単独での仕事が多くなるのだ。その合間を縫って行動するしかないだろう。


ガンザ=レミラスが本物なのかどうか。


ヒランを働かせているとは言っていたが見たことがない。奴はいったいどこで何をしているのか。分かれば全てが繫がる気がしていたのだった。

粗方の考えが纏まったところでメルケスも病院の中へと入っていったのだった。病室では先ほどのメルケスとの話で持ちきりだった。

「大会に出てガンザの病気を治してやるんだ」

そうティアは息巻いていたのだった。

それを真剣に聞いている2人の姿を見ながらメルケスは微笑んでいた。こいつらも動くんだ、俺も早く動き出さないとな。そう心に誓うメルケスであった。


もうあの時のような悲しい顔は見たくないと。


深くフードを被った2人組。奴らのせいでガンザは不治の病となったのだった。そう、皆を庇ってガンザは不治の病となったのだった。

ランプ武闘大会は1年後。ティアは実力を磨く為にそれから日々訓練を開始したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ