空焚心中
ふと目が覚めると僕は煙に包まれていた。
煙の中では両親と愛猫がいつも通りの日常を過ごしていた。普段との相違点があるとしたら平日だと言うのに共働きの両親が二人とものんびりと昼間を過ごしている点だ。あれれと思い僕は二人になぜ家にいるのかと問いただすが二人は笑ってこれから一家心中するからだとぬかした。父が指さす方を見ると部屋の真ん中に七輪を空焚きしてこれでだと笑った。僕はなんでか知らないがあぁそうかと納得してしまった。
とりあえず僕は冷蔵庫をおもむろに開けて昨日の残り物を出し、腹拵えだと朝食を食べだした。母はいつものように電子タバコを咥えながらヤカンの茶を僕に淹れてくれた。煙を吸いながらまだ煙を吸うかと思いつつ僕は母にありがとうと一言だけ言った。父はスマホで流行りのゲームをしながらおもむろに猫は元気かと聞いた。元気なわけがなかろうや。煙を焚いてるん一家心中なんだからあいつも元気でいてもらっちゃ困るもんだ。キョロキョロと猫を探してみると猫はキッチンの椅子で座って寝ていた。あれでは元気かどうかがわからんじゃあないか。父はそう言ってもひとつと煙を吸い出した。
朝食を食べ終えた僕はゲーム機を取りだして一人で一昔前のゲームを始めた。部屋にカチャカチャいうコントローラーの音とぱちぱちという七輪の音だけが響いた。しばらく経つと父親がそろそろ俺はダメだと言って寝込みだした。母は根性が無いなと言って席を立ちキッチンの猫を撫で始めた。僕はゲームを中断してぼうっと天井を眺めだした。普段天井なんぞじいっと見ることなんて無いものだから気づかなかったが思ったよりも我が家は広いんだなぁと思った。家具がなけりゃこんなに広いのかと天井を見て気がついた。そうしていると少しずつ視界がぼやけ始めて走馬灯のようなものが見えてきた。それは僕の全然知らない景色で知らないことをしている自分だった。
気がつくと僕は目覚まし時計をバコンと殴って飛ばしていた。それから僕は夢を見始めた。




