伝説と因縁
そして見つかってしまった。
実力的な問題はない。
こいつ以上に強い奴を僕は知らない。
問題があるとすれば僕が彼に嫌われているくらいかな。
そして僕も嫌っている。
「まさかこんなところで裏切り者の君に会うことになるなんてね。僕の運はまだまだ衰えてはいないようだ。君は僕がひねり潰さなきゃ腹の虫がおさまらないよ。さぁ始めようか僕たちの因縁を断ち切るために」
「相変わらず狂ってやがるな虎徹。僕もこんなところでお前に会うことになるなんて思いもよらなかった」
僕はこいつを部活に誘うつもりはなかった。
虎徹は僕の戦ったことある中で最強の棋士だ。
来光ですら生ぬるいほどの苛烈な攻めで敵陣を食い破る様はもはや人のそれをはるかに凌ぐ。
そして生粋の奇人で危険人物でもある。
殺人未遂で少年院送りになったと聞いていたが普通に高校に通っているとは思わなかった。
そこになんとも運が悪いことに三人が後ろから歩いてきてしまっていた。
「あら?両馬さんその殿方はだれですの?」
「もしかして新しい部員候補!?あんたもやればできるじゃない」
「……この人どこかで見たことあるような?」
狐来乃と桂葉は虎徹を僕が勧誘していると勘違いしているようだ。
唯一愛花先輩だけが違和感を抱いているようだった。
「お嬢さんたち僕のことは虎徹と呼んでください。僕はそこにいる機上両馬君の敵です」
虎徹の慇懃無礼な態度から発せられる殺気を受けて三人とも僕と虎徹の関係をなんとなく察したようで警戒心をあらわにした。だがここではそれは大悪手と言える。
「アハハハハハハッもしかして君たちはそこの裏切り者の女なのかい?なら僕の復讐対象だよ!!君たちの尊厳を踏みにじって二度と立ち上がれなくしてあげるよ!!恨むならそこにいる裏切り者を恨むんだなぁ!!」
急に豹変した虎徹に完全に飲み込まれてしまっている三人を後ろにかばいながら僕は虎徹を睨む。
「させると思ってるのか?彼女たちに手は出させない」
そうしてどのくらい睨み合っていただろうか。一分?十分?もっとかもしれないし、一瞬だったかもしれない。極限まで引き延ばされえた時間の中で二人は睨み合った。
すると急に虎徹は僕たちに背中を向けると、
「安心しなよ今日は帰ってあげるから。続きは大会でやろうか。僕は別の学校の代表でね。今日はただ知り合いに会いに来ただけだから。団体戦で決着つけようじゃないか。君のことだどうせ個人戦には出ないんだろう。どちらの選んだメンバーの方が強いのか。ちなみに僕たちは五人全員異名持ちだからね。それじゃ」
そういって立ち去って行った。虎徹が見えなくなったところでその場に重苦しい空気はなくなっていた。
僕はそれを確認すると後ろを向くと三人の横を通り抜けた。
「ごめん。先に上がります」
後ろから三人が何か言ってきているが僕の耳には届いていなかった。