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桂葉の胸中

「僕が連れ込んだわけじゃないよ。狐来乃が押しかけてきたんだよ。それにそういう意味では今現在進行形で桂葉も連れ込んでることになって僕糞野郎になっちゃうんだけど。まさかそれ言いに来ただけじゃないよね」

そういって桂葉の顔を見るとなぜか真っ赤になっていた。

えっ、なんで赤くなってるの!?てかよく見たら狐来乃もじゃん!?えっ、怖!?

僕が内心引いていると桂葉は恥ずかしそうに咳払いをすると急に真面目な表情になると

「お願いがあるの。私に斎藤の相手をさせてほしいの」

桂葉はひどく思い詰めてる表情で僕に頼んできた。

「斎藤?って誰のこと?」

僕はとっさに気になった事を尋ねていた。

「そっか、斎藤って言ってもわからないか。≪絶氷≫って言った方がわかるかしら。元名人の息子の」

その言葉で桂葉が誰との戦いを求めているのかを理解した。

それでもなお、わからないことがあった。

「なんでそれを僕に言うの?当日のオーダーを決めるのは愛花先輩なんでしょ。それに僕には桂葉とその斎藤さんが戦う理由が見えないんだけど。何か理由があるの?」

僕はそのことが本当に理解できなかった。


「理由は単純で気に入らないから。あの男はあんたのことを恨んでるわ。自分の父親のプロとしての人生にとどめを刺した憎き相手だと思ってるから。まぁそれは良いのよ自分の父親のことだから仕方のない部分もあると思うし。でもあいつは踏み越えてはならないラインを土足で乗り越えてきたの。あんたが引きこもりになってからしばらくたった後、あいつは私たちの学校に乗り込んできて、そこであんたを出せって大声でわめいていたの。その時はすぐに教師たちに取り押さえられたから問題はなかったんだけどそこでこの話は終わらない。あいつはこの辺の一帯に根も葉もない噂話をばらまいた。例えば機上両馬は不正をして来光に勝っただとか、自身の親を監禁しているとかね。私はそれが許せない。本人だけじゃなく周りをも巻き込んでどうにかしようとするその精神が気に食わない。挙句の果てにはどこで知ったのか私があんたの幼馴染だと知ったらしくて私にもあんたに対する悪口を吹き込んできたり。自分の知り合いを陥れようとする奴なんて許せるはずがない。だからお願い私にあいつを倒すチャンスを与えて」

最後の方はよく聞き取れなかったがその頬を一滴の水滴が伝うのを見逃せなかった。


頂姫桂葉はまっすぐな少女である。

普段は我も強く怒りやすいがその実誰よりも素直で心優しい女の子だ。

彼女の涙を見たことは少ない。

小さい時から一緒に成長してきた幼馴染の僕でも五回もないだろう。

そして彼女が涙を流すときは決まって自分のためじゃなく他人のために流す。

そんな彼女が涙を流している。

きっと僕が中傷されていることが我慢ならないのだろう。

普段は悪態をつくこともあるが僕のことを気にかけてくれている。

最高の幼馴染だ。

彼女のその思いや、決意を踏みにじる権利は僕にはない。

「わかったよ。≪絶氷≫の相手は任せるよ。でも勝機はあるの?あの最強名人の息子だ。きっととんでもなく強いと思うよ」

僕の言葉を聞いて桂葉は涙をふくと決意を決めた表情でうなずいた。

「当たり前でしょ!私を誰だと思ってんのよ。誰よりも最強の近くで過ごしてきたのよ。あいつの氷を溶かしてやるんだから」

桂葉は先ほどの涙が嘘だったかのように魅力的な笑顔を振りまくのだった。


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