表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/35

第五話


 能力を発動した翔だが振り下ろされた感覚はなく、耳には一つの音も聞こえない。


 翔はゆっくりと目を開けると、少女の上体を抱えて見知らぬ部屋にいた。

 部屋にはベッドが二つに収納棚が一つ、壁はレンガで作られておりどこかの宿の部屋であるようだ。


 とりあえず男から逃げることができ安堵すると、


「あなた何をしたのよ!」


 急に、抱えられていた少女は立ち上がり翔から離れ右手を向ける。


「また……、私を飛ばしたのっ!」


 敵意むき出しの少女の右手に魔法陣が浮かび上がる。

 さらに少女の表情はどこか絶望していた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 翔は突然攻撃してこようとする少女に腰を抜かしながらも両手を前にやり意思表示する。


「俺はお前を助けただけだ!」


「じゃあここはどこなのよ!」


「わ、分からない。どこか遠くの街に飛ぶ能力を発動したから、この街がどこなのかも、さっきの場所からどれくらい離れているかも俺には見当もつかない」


 少女を落ち着かせるため多少早口になりながらも説明する。


 そして必死の説明のおかげなのか少女の右手の魔法陣は無くなり一つ息を吐きながら右手を下ろす。


「はぁ、つまり世界は変わってないってことよね」


「? そうだけど……」


 世界を越えれるほどの能力があるかどうか分からないが、さすがに別の世界の街まで行くわけがない。


「ならいいわ」


 それだけ言うと少女はドアの方へ歩き出す。


「な、なあ」


「何よ」


 首だけを捻り少女の赤い視線が翔に向けられた。


「い、いや、言ったかもしれないけどこの世界に来たばっかでさ、この世界について教えてくれると助かるなーって……」


 視線に気圧されながらも翔は答えた。


「私が教える必要なんてないでしょ」


「そうだけど、ここは人助けだと思って教えてくれないか。お前も別の世界から来たんだろ? ここはお互いに協力していく方がいいと思うんだけど」


 翔としては何でもいいから情報が欲しいところである。先ほどの男のこともあるがこの世界で何が起きているのか、どうして争っていたのか、これからのために聞いておきたい。


「だったらさっきの男のところに行って来たら?」


 しかし翔の視線をよそに少女は何故か排他的な態度をとる。


「さっきあいつに攻撃しちまったから聞きづらいんだよ。それに戻り方も分かんないし。だからさ、この世界のことだけでも教えてくれないか。お願い」


 合掌し懇願する翔。


 すると少女は翔を一瞥すると、くるりと翔の方へ向き直った。


「……じゃあ教えてあげる」


 予想に反してすんなりと受け入れる少女に翔は期待を胸に抱く。


 が、想像とは違う言葉が翔に向けられた。


「この世界はね、いずれ滅ぶ運命にあるの。あなたは滅ぶ世界に飛ばされて来た不幸な存在なのよ」


 冷たく、そして無感情に発せられた言葉であった。


「……な、何を言って……」


 あまりにも突飛なことを言う少女に翔は呆気に取られてしまう。だが少女はそんな翔を気にもとめようとはしない。


「あなたも馬鹿よね、あのまま私を助けなかったらこの世界は滅ばずに済んだのに。破壊者にもう一度チャンスを与えてくれたんだもの」


 破壊者、という言葉に翔は鬼顔の大男の言葉を思い出す。


「まさか、お前が破壊者なのか?」


「そうよ。この世界を憎み、忌み嫌い、破壊することだけを目的に生きているだけ。私と戦ってた男の方は世界を救おうとする正義の味方だから、あなたは世界を滅ぼすことに協力してくれたようなものなのよ」


 少女の言葉で翔は黙り込んでしまった。


 少女が破壊者である可能性はあった。

 翔ももしかしたらと思っていたが、せめて一つの街、もしくは国を破壊するレベルだと思っていた。しかしまさか世界を滅ぼすまでの破壊者だとは想像していなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ