第二十話
「驚いたか?」
翔の横には当然ライオネットもいた。
「も、もちろん。あんな急に移動するとは思わなかったから……」
「相変わらずだよな、ジギルノヴァは。何考えてんのかもよく分からねえし、変なことしないといいんだが」
めんどくさげにライオネットは頭を掻く。
「けどジギルノヴァも世界を守ろうとしてくれてるんだから、そんなに気にしなくてもいいと思うけど」
「万が一ってことがあるだろ。どんなことが起きてもいいように危惧しておくのは無駄じゃねえし、世界が終わったらそれこそ手遅れだ」
「それもそうだけど……。それって元いた世界でそんなことがあったから気にしてるの?」
「そんな風に聞こえたか?」
少しの笑みを含みながらライオネットは言った。
「そんな風に聞こえたけど、言いたくないことなら深くは聞かないよ」
「別に隠すことでもないが……。まあすぐに破壊者も現れないと思うし、少し歩きながら話すか」
ライオネットは歩き出し翔も横についていく。
「カケルは元いた世界で誰かを救ったり、自分を犠牲にしたことはあるか?」
先程の話の続きで聞いてきた。
「あるって言っていいのか分からないけど、多分ライオネットがしてきたことと比べると小さいと思う」
さすがに誰かの命を助けたり、自分の命までを犠牲にしたことはない。したことがあると言えばせいぜい落ち込んでいる友人を慰めたり、自分の時間を相手に使ったことぐらいだ。
「じゃあ例えば、その救った者が裏切ったらどうする?」
「そ、それは…………」
ライオネットの問いに詰まってしまう。そんな経験なんてしたことがなく考えたこともない。
「……ちょっと、分からない」
「そうか」
一言、ライオネットは言うと顔を正面に向け、
「俺は裏切られたことがある。一度だけじゃなく何度も、一人だけじゃなく何人にも。そのせいで俺の大事な仲間は傷つき死んでしまった」
ライオネットの表情に変化はない。しかし声が僅かに低く聞こえた。
「ライオネット……」
「別に同情してほしくて話したわけじゃない。俺はそういう経験をしているからこそ最悪な状況を考えてしまうんだ。それが俺のするべきことで、この世界を守るために必要なことだからな。そのことはカケルにも分かってほしい」
「分かってほしい?」
「ああ。感情よりも未来を見据えて行動してほしいってことをだ。カケルには俺の二の舞になってほしくないからな」
ライオネットは翔が想像もできないことを経験しているからこそ分かることがある。世界を救うということは、難しいとか大変といった簡単な言葉では表せないほどのことなのだから。
翔も言っていることは理解しているつもりだ。
そして何故、この話をしたのかも。
「ま、これは俺の経験談だ」
ライオネットは少し口角を上げいつもの表情になった。




