第十二話
翔は歩きながら横目にエトゥイを見るが、これまでのこともあり造られたアンドロイドだと思ってしまう。
すると翔はエトゥイの首の後ろ、襟足の下に金属でできたような丸い箇所を発見した。
「ドット・エトゥイに何かご用ですか?」
翔の視線に気がついたエトゥイが首を向けた。
「あ、その、首のところが気になって」
「これのことですか?」
エトゥイは自ら金属の箇所を触る。
「そうそう。何のためにあるのかなって思って」
「これは活動するために必要な能力を確保する箇所です。専用の装置を使うことによって供給することができます」
取扱説明書を読み上げるような口調だが、要するにエネルギーを補給するところのようだ。
「へー、なんかエトゥイってアンドロイドかロボットみたいだな」
「あんどろいどと、ろぼっととは何ですか?」
その言葉でエトゥイの世界にはアンドロイドやロボットを意味する言葉が存在しないことに気がつく。と同時に一つの疑問が生まれた。
「えーと、アンドロイドっていうのは俺らを似て造られたものなんだけど……。そもそもエトゥイってどうやって生まれたんだ?」
翔にとっては簡単な質問をしたつもりであったが、予想に反しエトゥイは首を傾げる。
「? すいません、うまれるとは何ですか?」
その言葉で翔は驚く。
生まれるという意味の言葉も存在しないなんて、ならばエトゥイはどのような経緯があって存在しているのか。
「生まれるっていうのは何て言うのかな。ちょっと説明しづらいんだけど、作り出された原因って言えばいいのかな」
「作り出された原因ですか。考えたこともありませんでした。しかしドット・エトゥイに記録されている範囲でそのような原因はないです」
原因がないというのも不思議である。無から生まれてくるのは普通ありえないので、おそらく記憶を消されているか、エトゥイの世界に存在する何かの超常現象によって生まれたのか。
話しているうちに段々とエトゥイのいた世界に興味が湧いてくる。
「あのさエトゥイの元いた世界ってどんな感じだったんだ?」
「ドット・エトゥイの世界、ですか……」
エトゥイは珍しく言葉を詰まらせた。
その様子から聞いてはいけないことだったのかと少し慌ててしまう。
「も、もちろん言いたくなかった全然言わなくていいから」
「いえ、言葉を選択していました。ドット・エトゥイの世界は全てのドット・エトゥイが協力し活動していました」
「全てのドット・エトゥイ?」
「はい。ドット・エトゥイと同じ個体で組織化したものを指しています」
いまいち想像がつかないが翔のいた世界でいう人間のことを言っているのか、それとも本当に姿形が一緒であることを言っているのか。
「全てのドット・エトゥイって見た目も一緒なの?」
「はい。姿形はもちろん、瞳の大きさ、歩き方など、挙動全て違うところは一つもありません。そしてドット・エトゥイの世界はドット・エトゥイしかいませんでした」
「え、それだと何のために生きてるっていうのかな、活動してたんだ?」
思わず翔は質問してしまう。
同じ個体のドット・エトゥイしかいないのなら楽しみや生きるための喜びがどこにあるのか気になってしまった。
しかしエトゥイは数秒ほど黙り込み、口を開く。
「……すいません、その質問にお答えする言葉が見つからないです」
その言葉は今までの無感情の言葉とは違ったように翔は聞こえた。
「モチヅキカケルは何のために活動していたのですか?」
すると逆にエトゥイが質問してきた。
「俺? 俺の場合は……」
質問した翔だったが自分が何のために生きていたかなんて今まで考えたこともなかった。いつも通り続く日常にいつも通り生きてきただけ。
改めて考えるとそんな生活に何か楽しみを見出そうとしていたのかもしれない。
「…………俺の場合は、日常に少しの楽しみを見つけるためかな」
「少しの楽しみとは何ですか?」
「えーと、例えばそうだな……」
翔は考えながら辺りを見渡し、
「お、あれとか良さそうだな。エトゥイちょっと付いてきて」
何かを見つけた翔はエトゥイの手を取り連れて行く。




