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婚約破棄された男爵令嬢〜盤上のラブゲーム〜  作者: 清水ちゅん
4章 おまじないがもたらすモノ
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後悔と罪悪感と

 ベアトリック・イーンゴット。


 チェスター王国内において有数の権力者であるニルヴァーナ公爵家の御令嬢、勇気と知恵を兼ね備えたニルヴァーナ公爵物語や、永遠の愛の証である赤い薔薇の花束でも有名なシーサイド・イーンゴット様の末裔。


 燃え上がる炎のような赤い髪にグッと力のこもった目元、すらりとした細身でいて高い位置から下される眼差しはまるで獲物を狙うかのように鋭い。


 先日、ニルヴァーナ公爵邸の圧巻の薔薇園で行われた秘密のお茶会。私にとっては人生初となる思い出すのも恐ろしい地獄のようなお茶会でした。


 そんな地獄のようなお茶会を開催し、私にひどい仕打ちをした張本人であるベアトリック様がそのたおやかな身体を真っ赤な薔薇の花のように赤く染めあげ、力なくお父様の背に身を預けています。




《ーー人為的な悪意による被害であれば、受けた被害と同等もしくはそれ以上の被害が加害者に反射される。ただーーそれだけよ》




 ついさっき、ノルマンディー侯爵家のお屋敷でアリー姉様に聞かされたそんな言葉が脳内に蘇ります。


 自身のやった事がそのまま自身に返ってくる。反射される。それは酷い結果をもたらす事になるだろうけれど、それらは全て自業自得の自己責任なのだから間違っても情けや哀れみをかけるべきではない。


 アリー姉様は厳しくそう仰いました。


 ですが、


 いくら自業自得といえど、自己責任といえど、私の目の前に広がるこの光景は、ベアトリック様が負ったお怪我は、私が受けたものよりも激しく凄惨なものでした。


 たとえこの先何が起きてもそれはあなたの責任ではない。なるべくしてなった事。あくまでも自然現象よ。と言っていましたが、いくらなんでもこれは……。


 私の胸に罪悪感のような後ろめたさが影を落とします。


 あの日、ベアトリック様からお手紙が届いた時に、そのお気持ちだけ有り難くいただいてお茶会は丁重にお断りしていればこんな事にはならなかったのに。


 あの時、ジェシカ様が急遽お帰りになられた時に私もご一緒に帰っていればこんな事にはならなかったのに。


 わずかな悪意を向けられたあの時点で、急ぎあの薔薇園から逃げ出していればこんな事にはならなかったのに。


 御三方が仰る事に唯々諾々としていればこんな事にはならなかったのに。


 私があの日、あの時、全ての選択を間違えてしまったから。


 こんな未来を招いてしまった。


 後悔と罪悪感が入り混じったひどくザラついた負の感情が胃の中に溜まっているのをはっきりと感じます。


「…………」


 意識の無いベアトリック様と悲痛な叫びを上げながら必死に歩みを進める男性の背中を見つめながら、私はただ立ち尽くす事しかできませんでした。


















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