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婚約破棄された男爵令嬢〜盤上のラブゲーム〜  作者: 清水ちゅん
3章 同性愛と心崩壊
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サーロック・フォンムズ

「それにさ、ベオウルフがここに来たって事がまさにその証拠じゃない?」


「はい?」


「少し前までは手が出せない状況だったけれど、今のローレライなら何の問題もないものね。だから今日、ベオウルフはローレライに会いに来たのよ、きっと」


「でしょうか?」


「うん、まず間違いないでしょうね。それにベオウルフはスーパーフェミニストと言われてはいるけれど、あくまでもスーパーであってハイパーではない……」


 ジェシカ様はそう言いながら自身の顎に右手を当て、私の目の前を右に左に行ったり来たりしています。


 その光景は昔読んだ推理小説に出てくる鹿撃ち帽を被った探偵のようで何だか格好良いです。


 ジェシカ様のおっしゃった、スーパーとかハイパーの意味は今のところよく分かりませんが、それも可愛らしい名探偵によってまもなく明らかにされる事でしょう。


 今は静かにその時を待つばかり、ですね。


 私が期待を胸に待っていると、ジェシカ様はぴたりと足を止め流し目でこちらを見ながら言います。


「そうーー、一見誰かれ構わず声をかけて回っているように見えるベオウルフだけれど、声をかけている女性にはある共通点があるのよ」


「共通点……」


 ジェシカ様は意味深長に小さく口角を上げると、尚も続けます。


「ええ。ローレライ、ちなみにそれが何だか分かるかしら?」


「女性の共通点だから……そうですね……ベオウルフ様の好みのヘアスタイルとか、もっと単純に言ってしまえば好みの女性とかでしょうか?」


「残念、不正解よ。それではただのフェミニスト。ノーマルフェミニストといったところかしらね」


 ノーマルフェミニスト。また新たなワードが追加されました。しかし何となくですがノーマル、スーパー、ハイパーの意味合いが分かってきたようにも思います。


 解決編が待ち遠しいです。


「ベオウルフが声をかける女性、その女性達の共通点はーーーー」


 ジェシカ様はそう言うと、きちんとこちらに向き直り私の目を真っ直ぐに見つめながら右手の人差し指で私を指し示します。


 そして、


「ある程度の美人にしか声をかけて回らないのよぉぉぉ!」


「ーーーーっ⁉︎」


「驚くのも無理はないわ。私も最初は戸惑ったもの……。絶対……絶対、女性なら誰でもいいって思っていたから……。でも違ったの……。ベオウルフはある程度の美人にしか声をかけない。自分の好みじゃなくても、世間的に美人と言われていれば必ずやってくる。それがどれほどの域値かは正直分からないけれど、ベオウルフがスーパーフェミニストと言われているのはそれが理由よ。好みではなくとも美人なら誰でもいい。もし万が一、それが美人じゃなくても女性なら誰でもいいってなっちゃうと、それはもうハイパーフェミニストになっちゃうよね?」


 突然同意を求められ私は考える間もなく首を縦に振ります。


「つまりはそう言う事なのよ」


「なるほど……」


 と、どうやら解決編が終わったところで当初何の話をしている最中だったのか分からなくなっている事に気付きました。


 何の話をしていたんでしょう?


 そんな事をぼんやりと考えていると、可愛らしい笑顔を浮かべたジェシカ様が言います。


「って、サーロックの真似してみちゃった!」


「あっ! 私、途中からずっと思っていたんです! サーロックみたいだなって……」


「嘘っ⁉︎ 本当に⁉︎ 嬉しい! ローレライも読んでたんだね、サーロックの事件簿」


「お父様から頂いた本の中にあったので……」


「私と一緒だ!」


「それで……ジェシカ様? 私達いったい何の話をしていたんでしょうか?」


「ほぇ? 何の話って……だから……えっ……あれ……何だっけ? ごめん、分かんない!」


「あははは……」


「あっはははは……!」


 その後、しばらく私達はそれぞれの記憶を辿りながら静かに笑い続けました。






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