支えてくれる周りの手
私は深々と頭を下げて皆様にお礼の言葉を述べます。
「ローレライは何も悪くないよ? 本当にそうだって決まった訳じゃないし、それに知らず知らずのうちに失礼を働いちゃうってよくある事だもん。そんなの仕方ないよ。失敗しない人間なんていないんだから、そんなに卑屈にならないでよ……」
「ジェシカ嬢……ありがとうございます。ですが私、皆様のような素敵な貴婦人になれるよう努力したいのです」
「私もジェシカ嬢と同意見だけどね。ローレライ、あなたがそんなに考え込む必要ないんだって! 男ってのは女が思ってるほど誠実じゃないし、それに私の遠いお爺さんの話だってかなり美化された話よ、きっと。ローレライがアシュトレイ卿に仕返ししてやるってんなら全然手伝うのに……私なら屋敷に乗り込んで怒鳴り散らしてやるところだわ」
「ベアトリック嬢……ありがとうございます。もし今後、そのような事があった際はご協力お願いします」
「ローレライ……あなた本当に何でそこまで実直に真っ直ぐなのよ……。まるでルークレツィア嬢の分身みたいね……でもまあ、ルークレツィア嬢ほど勢いがある訳じゃあないし、考えてみればあのポーンドット卿の娘といえばこういう子に育つんでしょうねえ。どこまでも直向きに一歩一歩前に進んでいく、どこまでも実直で、どこまでも愚直。最果ての更にその先に辿り着くまでってか……私なんかには到底無理な話ね。まあ、それがあんたのやり方ならそうやればいい。後悔しないならね」
「アレンビー嬢……ありがとうございます。結局、私にはこういうのが性に合ってるんだと思います」
「ふむ……確かにそうですね、ローレライ。アレンビー嬢が言うようにあなた、私と似ている所があるようですわ。でも確かに勢いが足りませんね。そういった意味じゃベアトリック嬢がさっき言った、アシュトレイ卿の屋敷に乗り込むという考えの方が私の思考には近しいですね。何事もまどろいのは嫌いですもの。一気に戦場を駆け抜け先制攻撃あるのみ。まあ、人それぞれ考え方があるのだから無理強いはしないけれど……でも本当にいいの? ローレライ。報復するなら今が絶好のチャンスよ?」
「ルークレツィア嬢……ありがとうございます。でも今は、自身の成長を優先させて下さい。でも、もし気が変わった時は御指南よろしくお願いします」
皆様からのお言葉が私の胸に染み渡っていきます。その事で心のずっと奥の方が、何も感じなくなっていた壊れた部分がぼんやりと熱を帯び始めました。
温かくてーーーーとても気持ちがいいです。
それは幼い頃、お母様に抱きしめられてお母様の体温を全身で感じていた時のような柔らかい、優しい温もりに似ています。
今日は本当に来て良かった。色んな事に気付く事が出来ましたし、素晴らしい方々と親交を深める事が出来ました。それだけの事で私自身、かなり成長できたと思います。
ですがまだまだ、もっともっと頑張らないと。
「さあっ! お茶にお菓子はまだまだあるわよ! みんな気の済むまで楽しんでいってちょうだい!」
ベアトリック嬢は胸の前で両手を打って笑います。