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婚約破棄された男爵令嬢〜盤上のラブゲーム〜  作者: 清水ちゅん
2章 お茶会
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少女の背伸び

 翌日、目を覚ますと窓から爽やかな朝日が差し込み私のまぶたを照らします。


 朝日を全身に受けて伸びをして、朝の澄んだ空気を身体の隅々にまで行き渡らせます。


「うん、気持ちのいい朝。今日も一日いい事ありそう」


 昨日のアップルパイパーティーの事を思い出しながら、仕度を済ませていきます。


 あれから近くを通りかかった数人の方々もお声がけして、一緒にアップルパイを堪能しました。その時、ドーラさんが『もうじき芋の収穫だから恒例のあれやろう』と言ってましたから、次はパイユパーティーですね。


「ふふふ」


 今から楽しみです。


 なんて考えていると、部屋のドアがノックされました。


 大きさもリズムもバラバラのノックです。


「お嬢様? 仕度はお済みですか?」


「ええ、済んでるわアンナ。すぐに行きます」


 そう答え、そのままアンナと食堂へ向かいました。食堂に到着しテーブルの方を見るとそこにはお父様の姿がなく、しばらく経っても一向に姿を見せる気配もありませんでした。テーブルには私の分の朝食だけが準備されていきます。


 不思議に思った私はアンナを呼び止め、お父様の事を聞いてみます。


「お父様はまだ寝ていらっしゃるの? 体調が良くないとか……」


「いいえ。ジェラール様は珍しく早朝にお出かけになりました。なので朝食はお弁当を持っていかれましたよ。それににっこり微笑んでいて元気そうでした」


「そう……」


 朝からお出かけになるのはそう珍しい事ではないけれど、今回ほど早い時間帯からのお出かけは初めてですね。


 まあ、少し心配になりましたが元気ならなによりです。


 私は一人で朝食を済ませて自室へと戻りました。


 今日は私も大切な予定があるんです。大切な友人とのお茶会。


 色んな事をたくさんお話ししたいですね。今まで私が誤解していてベアトリック様とはあまりお話ししていませんでしたから。


 何を話しましょう?


 意外と気さくな方なのでしょうか?


 古くからの友人のように緊張を解いてお話し出来たら、すごく仲良くなれたら嬉しいな。


 数時間後に迫ったお茶会を思うと今から胸がワクワクしてしまいます。


 私はどうにも落ち着かずそれからお勉強をしたり、部屋の片付けをしたり、窓の外の景色を眺めたり、またお勉強したりと忙しなくあれこれ手をつけていると、いつの間にか時間はお昼近くになっていました。


 私は自然と上がる口角をそのままにクローゼットの戸を開き、一番大切なお母様の形見のドレスを取り出し着替えます。


 着替え終えた私は姿見の前へと移動し、ゆっくりと回転すると裾がふわりと宙を舞って鏡の前に立つ私がまるでどこかの優雅な美しい女性になったかのような錯覚を覚えました。


 それはたぶん、このドレスが大人の女性向けのデザインに作られているからでしょう。だから私みたいにまだ幼さが残っていたとしても、ドレスが幼さを打ち消してくれて少しは大人っぽい雰囲気が出るんじゃないでしょうか。


 かりそめの大人の雰囲気。


 大人に憧れる少女の背伸び、ですね。


 鏡の前でもう一度くるりと回ってから、優雅に見える自身の姿にうっとりとして部屋を後にしました。





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