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婚約破棄された男爵令嬢〜盤上のラブゲーム〜  作者: 清水ちゅん
4章 おまじないがもたらすモノ
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翌日

 翌日、ベアトリック様がポーンドット家の屋敷に運ばれて二日目の朝。


 慣れない場所で睡眠をとった為か、私は普段より二時間近く早く起きて行動しています。


 昨夜、居場所を失った私は客間の椅子で座ったまま睡眠をとる事にしました。その事でお父様や多くの使用人の方々から自分の部屋を使ってくれと言って頂いたのですが、さすがに遠慮してしまいお気持ちだけありがたく受け取る事にしました。


 みなさんは毎日のお仕事で疲れているのにベッドで眠れないなんて絶対にダメな事ですから。


 早朝の屋敷からは小さな物音がぽつりぽつりと聞こえており、すでに使用人の方々のお仕事が始まっているご様子でした。


 私はお仕事の邪魔になってはいけないと思い、あてもなくふらふらと歩き始めましたがすぐに行き場を失い歩みを止めました。


「…………」


 今まで当たり前にそこにあった自室の大切さが身にしみます。


 やはり、居場所というものは本当に大切なのですね。それがあるのと無いのとでは、これほど心の有り様が変わってしまいますか。自身の屋敷に居るのに変に心細ささえ感じてしまいます。


 再び歩き出し、ふと気が付けば自室のドアの前に立っていました。


 そっと、ドアにもたれ掛かり背中越しに自室を感じます。


「…………」


 人の気配がする自室を部屋の外から感じるというのも、何だか変な感じです。


 自分の物では無くなった自分の物、とでも言えばいいのでしょうか?


 距離感が上手く掴めず、もはや存在がボヤけていて何だかよく分かりません。


「…………」


 お二人のうち、どちらかでも起きていないでしょうか? あの方々としても、ここは自室ではないのでよく眠れているとは限りませんし。


 最悪、起きていなくても隅の方で静かに本を読むくらいなら問題ないですかね? いくら存在が歪んでしまったと言っても、少なくとも四分の一くらいは私の部屋である事は間違いない筈ですし……。


 私はそう思い、ドアを慎重に開けます。


 息を殺し自室の中を覗くと、爽やかな朝日が差し込んでおり部屋中が光に包まれていました。


 見慣れた光景にホッと心を和ませ、私が普段使っているベッドへと視線を送るとベッドの上では変わらずに横たわるベアトリック様のお姿と、それに寄り添うようにして眠る侍女の方々の姿がありました。


「…………」


 さすがにまだ起きていませんでしたか。それではこのまま静かに潜入し、人知れず読書に励みましょう。と言っても、いつもの私ならすぐに眠気に襲われてしまうのでしょうが……。


 そう思って始めた読書でしたが、言い知れぬ緊張感からか珍しく眠気に襲われる事はなく、自分でも驚くほど読書に励む事が出来ました。


 良かった。いつも本を開くと同時に強烈な眠気が襲って来るので、私ってお勉強の適性がないのかもしれないと自分の事ながら心配していたのですが、そうではないみたいですね。


 私、ちゃんとお勉強できるんだ。


 いつもは変に緊張していなくて、すごくリラックスしている状態だから眠くなってしまうってだけなんですね。


 安心していて、リラックスしすぎていて、ふわぁっとしていて、言い換えれば油断しているような状態。


「…………」


 それはそれで問題ありですね……。


 有り体に言って、たるんでるって事ですからね……。


 気を引き締めないと。


 窓の外はもうすっかりと明るくなり、朝日で温められた外気を肌で感じられます。


 窓の側へと歩み寄り、庭に視線を落とすとアンナがいつものように洗濯物を干しています。


 ポーンドット家の一日が本格的に始まろうとしていますね。


「ロ……レラ……?」


 ふいに名前を呼ばれて声がした方へと振り向くと、そこには非常に朧げな瞳が二つ並んでいました。力の無い眼差しが弱々しく私を見上げます。


「ーーっ⁉︎ べ……ベアトリック様……」









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