1 異世界転移、女神との邂逅
初投稿です、よろしくお願いします
俺、空井一翔は気づけば知らない世界に立っていた。
気の遠くなるような、白色の世界。何も、ない。
「どこだよ、ここは。俺はどうしてこんなところに。」
思わず口をついて出た言葉。その疑問に答えるかのように風が吹いた。
「ようこそ、一翔さん。あなたを歓迎します。
ゆっくりしていってくださいね。」
振り向けば、長い翠色の髪を持った女性がそこに佇んでいた。
本当に長い時間ゆっくりする事になる事実を、この時の俺はまだ知らない。
「あなたは、というかここはどこですか?俺は一体…」
「順を追って説明しますね。まずははじめまして。風の女神、ウィーネと言います。ここは、私が創った空間です。殺風景なのは許してね。」
ウィーネと名乗った女神がウィンクしながら言った。いや、殺風景ってレベルではないだろ。何も無いじゃないか。
「一翔さんは、ここに来る前のことを覚えていますか?」
問われて思い出す。確か、大きな地震があって動けなくなっていたはずだ。
「歩いていたら地震があって、その場で動けなくなったはずです。その後は…あれ?」
「あぁ、敬語じゃなくて良いですよ。ここは前に一翔さんがいた世界とは違いますからね。フレンドリーにお願いします。」
「いや、女神様だって敬語じゃないですか。」
こんなやりとりよりももっと聞きたいことがあるのに、つい言い返してしまう。
「私は女神だから、威厳とか風格とかそういうのがとっても大事なのですよ。それよりも、」
その女神はきれいな顔で一言
「一翔さんは死にました。」
爆弾を俺に投下した。
「え、俺死んだの?」
思わず素で聞いてしまう。
「正確には、死んだことになっている、というのが正しいですね。一翔さんがうずくまっていた場所がどこだったか覚えていますか?」
「確か、ガソリンスタンドの近くだったような」
嫌な予感に、じわりと汗が流れる。地震、ガソリン…まさか。
「はい、予想のとおりですが、付近にあった車が大破して火がついたようですね。その後は予想通りこう、ドッカーンと。」
「やっぱりか!」
頭を抱える。いくら何でも運が悪すぎるだろう。
大きなガソリンスタンドだったと思う。その地下に貯蔵されているガソリン全てに引火したのなら、跡形もなく俺の体は消し飛んだだろう。
「なので、爆発の直前に一翔さんをこの世界に転移させました。」
ん?爆発の直前?
「あれ?それなら俺は生きてるんじゃあ。」
「はい、生きていますよ?」
コクン?と可愛く首を傾けながら肯定する女神様。
「さっき死んだって言ったじゃん!?」
いかん、だんだん遠慮がなくなってきている自分がいる。
「ですから、『死んだことになっている』と申し上げたじゃないですか。あの爆発の中で生き残っているとは思えないですからね。社会的に一翔さんは死にました!ということですよ。」
ん?あれ?それなら…
「じゃ、じゃあ、俺を元の世界に戻すことは出来るのか?」
俺自身生きているって事なら、もとの場所に戻れるじゃないか!
そんな俺の希望を
「ごめんなさい、それは出来ません。」
女神は一言で打ち砕いたのだった。
たまたま、だったそうだ。
女神ウィーネの空間が、地球の近くまで来ていて、
そのおかげで俺に対して干渉することが出来たという。
俺をこの空間に転移させるまでと、転移時気絶してしまった俺が気がつくまでの時間で、もうすでに地球とは遠く離れてしまったということらしい。
「一翔さんとは、繋がりができたのでいつでもこの空間に呼ぶことが出来ます。でも、あらゆる世界をめぐるこの空間が同じ場所に戻るのは数億年先の話になります。」
「てことは、地球には…」
「はい…言い辛いですが」
そうか、もう戻れないのか。
大学生になったばかりで、今からたくさん遊ぶつもりだった。
社会に出たら仕事ばっかりになるだろうから、色々なことを体験しておきたかった。彼女だって作ってみたかったけど…
「でも、そのままだと俺は死んでたんですよね?」
「はい、そうなりますね。」
「だったら、まずは生きてたことを感謝しないとですね。
女神様、ありがとうございました。」
命あっての物種だ。まずは感謝しないとな。
「一翔さんはこれから、どうしたいですか?」
「どう、と言われても俺にはどんな選択肢があるんですか?」
この何もない世界でボーッとするっていうのもなぁ。
かといって、よくある話のように別の世界に行ったりできるのだろうか。
「1つは、女神である私のお手伝いですね。私は、いろいろな世界のバランスを保つ仕事をしていますので、そのお手伝いをお願いしたいのです。」
女神様の手伝いとか、なかなか面白そうだ。
「他には、住めそうな世界を見つけて永住する、というのもありますね。」
「日本みたいな安全性はあるんですか?」
流石に、転移した瞬間に戦争のど真ん中とか、モンスターの巣にダイブとかは勘弁願いたい。
「住む先の世界によりますけど、転移の際に私の加護を渡すことで、ある程度の安全は保証されるかと思います。」
うーん、どうしようか。
女神様の話を聞く限り、必ずしも安全な世界ばかりでは無いようだ。かといってずっとここにいるのもなぁ。
「特に今すぐ決める必要もありませんので、しばらくは私のお手伝いをお願いしても構いませんか?その間に、一翔さんの気に入る世界があったら転移してもらう、ということで。」
そうだな、慌てて決めるよりはいいと思う。
「分かりました、しばらくお世話になります。」
「ふふふ、よろしくお願いしますね、一翔さん。」
とっても美人なお姉さんと一緒というのもいいかもしれない。
「さて、それではお近づきの印に女神の祝福を。受け取ってください、一翔さん。」
目を閉じて、両手を空にかざしながら女神様がつぶやくと、俺の中に熱いものが生まれた。
それはすぐに消えてしまうが、自分の中に確かに在ることがわかる。
「一翔さんに、祝福を授けました。ギフト、という形で現れているはずです。『ステータス』と言ってもらえますか?」
半信半疑で言われたようにつぶやく
『ステータス』
頭の中、という表現が一番しっくりくるんだが、パソコンのウィンドウのような画面が意識の中に現れた。
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Name:空井一翔
Lv:1
Str:G
Def:G
Int:G
Reg:G
Dex:G
Agi:G
Luc:G
Skill:風の女神の加護(小)
Gift:女神特訓
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「弱っ!」
思わず口に出してしまった。