7日目-2
「僕は人の胎児が実際に受精した卵子から大きくなっていく姿を見たことがないんだ。不思議だろう?僕自身が実際に通った道だというのに、僕自身はおろか、人類でもその成長過程を見たものは極々わずかしかいないんだ。
それって変なことだと思わないか?なぜ、僕らが君のような育ち方をしていないと言い切れるのだろう?もしかしたら、僕も、僕の後ろに立つ僕の……息子も、君のように試験管の中で何者かによって作られて、母体に移され、あたかも生命がたった今誕生したかのように、白々しいほど大げさに生命が宿っていることを告げられていたとしたら?
僕のこの想像は本当にあり得ないことだと言い切れるだろうか。ほとんど誰も本当に生命が誕生する瞬間なんて見たことがないのに。僕は、知らないものは怖い。ずっと昔から。」
ー彼が今作っている人造人間はどのくらい人に近い生命なのだろうか?そもそも彼女は生きているのか?彼女なのか、彼なのか?疑問は尽きない。
彼女の肌は人間と呼ぶにはあまりにも病的な白色をしている。例えるなら、夜の病院の廊下を照らす蛍光灯の光の色だ。僕たち人間がこの人造人間のように作られたモノだとすれば、この物言わぬ物体もいずれは僕のように食べて、寝て、たまに物を書くようになるかもしれないのだ。自分の想像に思わず笑いそうになる。
「君は、僕が作ったものだから、君のことは僕が一番よく知っている。おそらく君自身よりも。だから僕は君が怖くないんだと思う。だからこんなにも君のことが愛おしい。僕は君を愛することができるんだ。」
ー彼は、知らないことの素晴らしさを忘れてしまったのだろう。そして……おそらく、僕も。知らないことが愛おしいのはティーンまでだ。