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試験管ボーイ  作者: 森中満
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7日目-1

7日目




生命って、何?

ーー君自身のことじゃないのか。





あれから早くも数日が経ちつつある。その間にたくさんの変化が試験管の中で起こっていた。目の周りから少しずつ白い物体の筋繊維、とでも呼べばいいのだろうか。だんだん筋肉が発達しつつあるのだ。白っぽい物体は世界の美しさにようやく気がついたのかもしれない。


「今、君の表面は生々しいほどに人間だよ。君自身のことだから、君にはわからないだろうけど、僕にはそれがはっきりとわかる。どんなにか素晴らしいことだろう!君が考え、前に向かって歩けるようになったなら、僕は世界で初めて人造人間を作り出した科学者ということになるし、君は世界初の人造人間ということになる。でもね……。世界初、とか僕の持つ博士号、とかそういう肩書きは、誰かに認められないと得られない。僕は、思うんだ。君と僕の間に他人は必要だろうか?僕は必要ないと考えている。だから君の存在は世間に公表するつもりはない。まあ、それも君次第だ。君の意見を早く聞きたいよ。」


ーマリッジブルーという言葉がある。ある人によれば、それは結婚式の諸々の準備に疲れてしまうから、新郎・新婦が陥る心の疲れだという。別の人に聞くと、共同生活を数十年先まで送らなければいけないという未知の恐怖に対する無意識下での心の抵抗だという人もいる。……少しオーバーかもしれないけれど。その言葉を当てはめたとしたら、今の彼は幸せの絶頂、いわば祭りの前の高揚感にも似た心の高ぶりの中にいるのではないだろうか?

 何日後、いや、何年後になるかはわからないけれど、必ずあの試験管の中の白い物に仮初めでしかないとしても命が宿ると今では僕も信じている。こんなこと信じるようになるなんて、ついこの前の僕が知ったらどう思うだろう。 

 もちろん、彼のように好意的ではない。当たり前だ。僕はまだあの白い物体にどのような態度を持って接すれば良いのかわからない。家族として?それとも赤の他人として?僕にはわからない。


ーいつの間にやら小さな窓から赤い夕日が差し込んでいた。あちこちにおかれたビーカーに赤い光が反射して、いたるところに光の筋ができていた。

 ほんの少しの間ぼうっとしていただけだと思っていたのだが。ああ、そうだ。

 僕はふといろいろなこと、どれも僕には大切なことから目をそらし続けているのではないか。僕は改めて、今ここにいる僕と、彼との関係性を考え直さなければならないのだろう。試験管の中の人造人間との関係を考えることはそのあとで十分だ。

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