その5
何もかも初めて体験することに奈美は
「これ何?」
「すっご~い!」の繰り返しだった。
電車に乗ったときなんか大はしゃぎで何も知らない純粋な心が羨ましいと思った。
しかし、このあと彼女が背負っている運命の大きさを知ることになる。
人気のない公園で奈美は、人生初のブランコを楽しんでいた。
「私ね目覚める前に神様から10日間だけ起きていいっていわれたの!」
それはいきなりの告白で最初は何をいったか理解できなかった。
「今なんて。。。10日・・・え?どうして?嘘でしょ。」
「本当だよ。その約束で私は起きれたの。」
俺はそれからどうやって奈美と家まで帰ったのかあまり覚えていない。
「ただい・・・」
玄関を開けて中に入ろうとしたが奈美のことをどう説明するかで全く考えていなかった。
もう一度家からでようとしたその時、
「おかえり~あ、その美人さんは彼女?」
からかうようにニヤニヤしながら母がリビングの扉を開けてでてきた。
「え、違う。この子は、」
「初めましてお母さん!」
「まぁお母さんだなんて照れくさいね。あなたが奈美ちゃん?」
「はい!」
母にはどうやら谷さんから連絡がきていたらしく奈美の分のご飯も準備してあった。
奈美は当然何も知らないので、すべて1から教えなければならなかったがほとんど一回で覚えていった。
妹の綾は、学校から帰ってきたときはいきなりのことにびっくりしたが、すぐに奈美と仲良くなり母親ももう一人娘ができたかのように楽しんでいる。
「純粋」まさにその言葉がぴったりの奈美。最後の難関と思っていた父も事情を話たらすぐに承諾してくれた。
「奈美ちゃんこれは俺が昔作っていたデジタルカメラだよ。陽一に使い方を教えてもらって気に入ったら使いなさい。」