プロローグー眠り続ける少女ー
10年以上前、俺がまだ小さい頃体が弱く入退院を繰り返した時期があった。
入院生活に退屈していた俺は、体調が良い日はこっそりベットを抜け出し病院内を探検するのが数少ない楽しみの一つになっていた。
そんなある日、他の部屋とはどこか雰囲気の違う同じ階の一番奥の部屋へいってみると同じ年くらいの少女が眠っていた。
俺はそれから体調が多少悪くても、ほぼ毎日のようにその部屋に行くのが日課になっていた。
なぜか気になったのだ・・・
少女は一度も起きていることはなかった。
どうしても話をしたかった俺は、いつからか少女に話しかけるようになっていた。自分のこと、好きな食物、自分の病気についてなど少女の手を握り話かけていた。
そんな日がしばらく続いたある日、とうとう見回りをしていた看護師の谷さんに見つかってしまった。
怒られると思ったが谷さんは屈み目線を私に合わせ悲しそうな顔しながら俺に言った。
「陽一君、その子はずっと眠っているから起きないよ?」
「うん、いいんだ。この子寂しそうだから毎日話かけてるんだ。ダメかな?」
「私はいいと思うわよ。友達が1人もいないのは寂しいだろうし・・・これからもお願いね!でも、体調が悪い日は安静にしてないとダメよ。」
谷さんはそう言い残してまた仕事に戻った。
ー別の日ー
少女の母親と名乗る人が俺の病室にきた。
「あなたが陽一君?」
「はい。あの・・・」
「奈美の母です!毎日お話にきてくれてるそうですね!奈美もお友達ができて嬉しいでしょ。これからもよろしくお願いします。」
「はい!」
元気よく返事するとニコっと笑顔を見せてくれた。綺麗な人だな~と思ったのを今でも覚えている。