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銃の勇者の英雄譚  作者: NAO
一章 時を駆ける者
7/15

5話 1日の終わり

12/25 「3話 ティミタス」が一種のトラブルにより修正、見直し前の状態で投稿されていた為、修正を行いました。

 

 蓼はテーブルに置かれたパンをシチューにつけ、かじる。


「ふむ.....結構行けるな.....」


「あら、あなたでも食パンとトマト以外を美味しいと思うんだ。」


 それを見た雪奈はそう言い、同じ様にパンをかじった。


「失礼な、あれはコスパがいいからやってるだけで、別にあれ以外で美味く感じないだなんて言ってない。」


「でも好きなんでしょ?」


「当たり前だ、低コストに加えてやたらと美味い。これ以上にいい物があるか?」


「いやどっちも火通してないし......やっぱり私には無理ね....」


 若干呆れつつ、雪奈はそう答える。


「ふむ.....美味いのにな。」


「理解出来ないわ.....」


 それにしても.....凄い視線の数だな。


 蓼は目だけで店を見渡すが、視界に入る者は殆ど此方を見ている。

 そんなに珍しいかよ?


「よし、戻るか。」


 シチューを飲み干すとそう言い、席を立つ。

 そのまま金を払い、店を出ようとする。


「おい、てめえ。」


 突然呼び止められ、蓼は露骨に嫌そうな顔をした後に、振り返る。

 そこにはとても巨漢な男が立っていた。

 身長は180以上、体重も100kgあるだろう、頭はツルピカピンで顔には傷がある。


「な、なにか?」


「.........いい度胸じゃねえか。見ねえ顔だな。ああ?」


「は、はい?」


 いい度胸って.....何言ってんだこいつ?


 身に覚えが無い状況に、蓼が戸惑っていると、男は続ける。


「とぼけんじゃねえ!ここに女連れてくるとはいい御身分だなって聞いてんだよ!」


「え」


 蓼は横目で雪奈を見る。

 フードを取っている。


 あー、そう言えば結構前の方から取ってたなこいつ....


 蓼と目が合うと、雪奈は直ぐに目を逸らした。


「さて.....俺達の縄張りでこんなデケエ態度とったんだ、どう責任取る気だ?」


 デケエ態度って.....店に女性を連れてきただけだぞ?

 迷惑かけた覚えは無いし、イチャついた記憶も無い。

 まず僕と雪奈がイチャつくなんて事自体が有り得ない。


「ハァ.....で?いくら払えば解放してくれる?今日は疲れてるんだ、出来るだけ早く頼む。」


 そう言い、財布を取り出すと男のスキンヘッドの頭に確かに怒りマークが刻まれた気がした。


「てっめえふざけんのも大概にしろよゴルァ!!」


 そう怒鳴り、男は蓼の胸倉を掴む。

 あまりの声量に、蓼は顔をそらし、両手を軽く前に出して遠ざけようとした。


「蓼。」


 雪奈のその声に、蓼は目だけで反応する。


 うわぁ、この人完全に殺る気の目だァー。

 まずい、これは非常にまずい。

 このおっさんが死ぬのもまあマズいが、それ以上にあまり目立つと勇者であるとバレやすくなる。

 つか俺的にこれしか見てない。


「聞いてんだ!いい加減に__「あのだな。」


 男の声を遮る様にして、蓼はそう言う。

 そしていきなり....腹を殴った。


「グフッ」


 当然蓼の胸倉を掴んでいる手の力は弱まる。

 その瞬間に蓼はそれを跳ね除け、叫んだ。


「プランR!」


 その言葉を聞き、雪奈は走り出す。

 それに続き、蓼も走り出した。


 プランRのRはランのR、つまり走る。逃亡の事を指す。

 面倒ごとを回避するためなどに、俺達の間では割と普通に使われていたりする。


「なッ!?」


 突然蓼の頬を青い光が掠める。

 それを見て、書物に書かれていたことが本当だと理解した。


「やっぱあるのかよ魔法!」


 そう叫ぶと次々に魔法が飛んできた。


「ああクソしゃあねえ!」


 蓼は少し顔を傾け、左目の視界の限界で相手を捉える。


「ハァ.....ハァ.....雪奈!右!10cm!」


 息を荒げながらそう言うと、雪奈は素直に応じる。

 するとそこを魔法が通って行った。

 次に蓼は目の前を見る。


「あ、あのタルから、あのタルから5m地点で、上に、上に飛べ!摑める!」


 その言葉に頷くと、雪奈は指示通りに5m行った場所で跳ぶ。

 すると何かの棒に掴まれた。

 それを体操選手並みの身のこなしで鉄棒の様にして、さらに上に飛び、屋根の上に着地する。


 そんな派手な事をすれば当然目立つ為、男達の注目は雪奈に集まる。

 蓼はすぐにスライディングをして視界から消え、そのまま転がってタルの陰に隠れる。


「クソ、なんて身のこなしだ、逃げられちまった!」


「なっ!もう一人がいねえぞ!」


「なに?!」


 男達は商店街を走り抜ける。

 だが蓼は発見出来なかった。


 男達がいって暫くすると、雪奈が屋根から降りてくる。

 彼女もまた、屋根の上で伏せていただけである。


「ハァ.....ハァ.....全く....僕にこんな事....させるだなんてな.....」


「どうして逃げたの?別に全員無力化出来るのに。」


 暫く息を荒げ続け、落ち着いてから、蓼は言葉を発した。


「馬鹿、他所者がそんな事したら当然名が上がる。他の奴らが来たらもれなく勇者候補だぞ。」


「ふむ.....それもそうね、ちょっと残念だけどまあいいか。」


 そうは言っているが雪奈の目は全く笑っていない。

 というか蓼がなにも言わなければ速かに彼等に制裁を加えに行かんというそんなオーラを醸し出している。


 あぁ.....こいつは怒りっぽいからな.....


 そう心の中で呟き、蓼は立ち上がる。


「宿に戻ろう、そろそろ寝たい。」


 親指の爪を噛んでいる雪奈に向かい、そう言う。

 それに頷くと、二人は宿に戻り、眠りについた。


 ------------------------------------------------


 白衣を着た男達が、忙しそうにラボのような場所を駆け回る。


「どうなっている!?」


 その施設の長のような人間がそう聞く。


「ゼウス-1、ゼウス-2いずれも行方はわかりません!」


「探せ!奴らを絶対に外へ出すな!だが絶対に殺すんじゃないぞ!」


「しかし局長!捜索員30名中操作に出した6名全員が既に死亡しています!」


「くッ!シャッターはどうなってる!」


「既に閉鎖している為、彼等は袋のネズミのはずなのですが......」


「ならとっとと見つけ出せ!カメラが最後に奴等を捉えたのは何処だ!」


「で、ですからそこから先のシャッターを閉鎖しております!」


 傍受した通信機から流れてくるその様子を聞きつつ、少年は口角をつりあげる。


「僕らを見つけるなんて、無理なのにね.....精々、シャッター内にいる僕らのファントムと遊んでてくれよ。」


 そう呟くと、少年は曲がり角の壁に背をつけ、少し顔を出して先の様子を伺う。


「誰もいない......行こう。」


(コクン)


 そう言い、少年が右手を出すと、返り血で真っ赤に染まった少女は頷き、その手を握った。


 ------------------------------------------------


「・・・」


 宿のベッドの上で、蓼は目を覚ます。

 窓からは日が差しており、もう朝である事をアピールしている。

 そのまま頭を傾けると、雪奈は何かの本を読んでいた。


「その本は?」


 その声に雪奈は少し蓼の方を見て、口を開く。


「そこの棚にあったのよ。私も文字読めるようになった方がいいかなって。」


「で?どれくらい行った?」


「中学一年生の英語くらい。」


 その言葉にハハハ、と笑うと蓼は体を起こす。


「____懐かしい夢を見た。」


「どれくらい?」


「初代ドラ◯エくらい。」


 そりゃ懐かしいわね、と雪奈が答えると、蓼はベッドから降りてマントを羽織る。


「飯でも食いに行くか。」


「_____そうね。」


 雪奈は本を閉じ、蓼と同じようにマントを羽織った。

使用武器:なし

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