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銃の勇者の英雄譚  作者: NAO
一章 時を駆ける者
6/15

4話 冒険者

 

「ほらよ。」


 ダニアスは蓼に一枚のカードを渡す。


「これは......ああ、こいつが冒険者カードってのか。」


「そうだ。___あのカウンターに居る受付に、クエストボードに貼られた依頼書を渡せば、 依頼をうけられる。達成したら冒険者カードに記録されるから、カードを提出すれば報酬金が貰える。あと不正は無理だ、諦めろ。」


「わかってるさ。」


 蓼はダニアスからカードを受け取る。


「そういえば、あんた女が居るのに女と話せないのか?」


「え?女?」


 蓼はすこし考える素振りをし、ああ、と口を開いた。


「雪奈の事か。残念ながら彼女と俺はそういった関係じゃない。」


「なんだ、違うのか?」


「ああ。___まあ、色々とありがとうな、これで俺も依頼を受けられる。」


「最初は簡単なのにしとけよ?冒険者ってのは普通に命落とす事もあるんだから。」


「当然だ、俺がそんなバカに見えるか?」


「まあ、武器持ってない上に普通のマント一枚しか羽織ってない時点で。どうせ下もレザーアーマーだろ?」


「ははは」


 学生服一枚なんだよな....


 苦笑いをしつつ、蓼は依頼書を一枚剥がす。


「よし、これで俺も冒険者デビューだな。____じゃ、色々と世話になった。感謝するよ、ダニアス。」


 そう言い、蓼は左手を出す。


「おうよ、またなんかあったら声かけてくんな。」


 ダニアスはその手を握り返した。


 --------------------------------------------------


「どうだった?」


 ギルドからでると、雪奈が早々に声をかける。


「ああ、依頼は受けれた。この街周辺のゴブリン討伐依頼。8匹でいいらしい。」


「ゴブリンって.....大丈夫なの?蓼は勇者じゃないし、常人は松本先生みたいに___「大丈夫だ。」


 雪奈の言葉を遮り、蓼は自信満々にそう回答する。


「僕を誰だと思ってる?それは雪奈自信が一番わかってるだろ?」


「____それもそうね、ごめんなさい。」


 さて.....ゴブリン討伐、もとい殺害するには当然武器は必要だ。

 やろうと思えば殴り殺す事も可能だが疲れるし危険だし時間かかるし非効率的だ。

 故に武器が居る。別に剣と魔法の世界だし剣使ってもいいが、生憎そんな金は持ち合わせてないっつーか一文無しである。


 故に.....銃が必要だ。

 だがこれは選ぶ必要がある。

 さっき雪奈に聞いてみたが、武器の返却方法は不明らしい。

 当然、雪奈や僕が知らないだけで返却方法が存在するかもしれないが、現状返却は不可能だ。

 つまり何も考えずにバカスカ要請しまくるのは得策じゃない。


 かといって同じ銃を要請するのも楽しくない。

 VBR-Belgiumと互換性が存在し、且つ実用性も相当高い銃.....ならあれしかないか。


「雪奈。」


「?」


「グロック18C Gen3だ。あとサイレンサー。街から出てからだぞ。」


「はいはい。って 、Gen4(第4世代)じゃないの?」


「いいや、Gen3(第3世代)だ。」


「ふーん。まあ、いいけどね。」


 二人は街の出口に向かった。


 --------------------------------------------------


 蓼の目の前に箱が落下する。


「ふむ.....流石の消音力だな......」


 そう言いながら箱を開けると、中にはグロック18Cの第3世代モデル、そしてサイレンサーが入っていた。


「おぉ.....18Cだ......ホントのホントに18Cだ.....」


「どれだけ嬉しいのよ」


 目を輝かせながらグロック18Cを弄る蓼に雪奈はそう言い放つ。


「18Cは民間用に販売されなかったモデルだからな。17を同型の仕様にする事は可能だったが....やっぱり純正だといいじゃないか!」


 さて.....僕が何故この銃を選んだかというとだ。

 知っての通りVBR-Belgiumはグロックシリーズの弾倉を流用している。

 つまり、これで簡単に二人分の弾を用意できて且つ弾を共有できるようになったわけだ。

 因みにGen3(第3世代)なのは俺の趣味だ。


 んで、この棒___サイレンサーだが、これはまあ簡単にいうと銃の発砲音を軽減する装置だ。

 サプレッサー、サウンドサプレッサー、消音器、減音器、マフラー.....などなど、様々な呼び方が存在するがぶっちゃけ全部同じような意味なのでどれで呼んでもらっても構わない。


 因みに俺はサイレンサー派である。サイレンサー派である(宣戦布告)


「さて.....と。雪奈。」


 途端、二人の目は鋭くなる。


「ええ、囲まれてるわね。」


 雪奈は目だけ動かし、辺りを見回す。

 すると、やはり木の陰からこちらの様子を伺うゴブリンの姿があった。


 ここは森の奥地.....この森は言わばこいつらの庭。

 しかも俺達はたった二人で、且つ武器も持っていないように見える。

 さらにさらに自分達は群れで行動するんだ。

 さて、ここまで好条件が揃えばする事はたった一つ。


 _____ゲリラ戦だ。


 だが、これでいい。

 元々こいつらを集める為にやったんだしな。


「雪奈......サイレンサーを装備しろ。_____殲滅だ。」


「了解。」


 --------------------------------------------------


「ギィィィ......」


 全身血だらけのゴブリンが地面を這っている。

 この後に及んでまだ逃げようとしているらしい。


 蓼はソレの背を踏みつけて固定し、後頭部に弾を一発撃ち込んだ。


「よし、これで全部か?」


「ええ、まあ全部じゃないけど、残りの3匹は逃げてったわ。」


「14匹か......依頼数はやったし、深追いは禁物だな。戻るか。」


「ええ。」


 --------------------------------------------------


 蓼は柱から中の様子を覗き込む。


 さて.....僕達は今積んでいる。

 なんとどういうことでしょう、昼頃出たときは男性だった受付さんが、女性に変わっているではありませんか。

 僕が行けばテンパって終了、雪奈が行けば辿り着く前にぶっ倒れる。いや、それ以前に彼女はまだ冒険者じゃない。

 うん、これはあれだ。積んだ奴だ。


 今は金がない。

 金が無ければ当然メシは食えないし、宿代も払えない。

 しかし報酬金を手に入れるには成果を報告しなくてはならない。

 どうしろってんだ。


「あ、リク様でいらっしゃいますね。」


「ダニイッ!?」


 柱の陰からカウンターを覗いていた蓼は、急にかけられた声に素で、そんな返事をする。


「ダニアス様から聞いております。女性恐怖症であるとか.....カウンターの上に冒険者カードを置いて頂くだけで構いませんよ。」


 接客業によって作られるものでは無いその屈託の無い笑みは本当に善良な人間であると思わせられるが、残念ながら蓼はこの時点でもう既にテンパっている。

 彼の頭の中を少し覗いてみよう。


 どういうことだどういうことだどういうことだどういうことだどういうことだ!!

 マズいマズいマズいマズい!なんだあの女何故俺にいきなり話しかけてきた。

 今なんて言った?いやしらん聞こえてない。

 つかなんだこれ全然落ち着かねえ!

 心拍数が常時頭おかしい嫌いをキープしてる!

 このまま死ねる気すらもしてきたぞこの野郎!


 お、おおおおちつけよ俺、れ、れれ冷静に、冷静になるんだ。

 そ、そうだよ俺は一種の客である、つ、つまりあの女が僕に危害を加える事は___心理的誘導、誘い込み、精神的攻撃、廃人化......これだッ!!


 絶対これだこれに違い無いくそあのアマァ!僕に向かってこんな策を弄するとは!

 ぁあ!クソ!クソ!クソ!どういうことd___


 スタッ


 突然、蓼の視界は真っ黒になる。


「当身....」


 鼻声でそう言ったのは確かに雪奈の声である。

 そう、雪奈が彼を気絶させたのだ。

 片手で鼻を摘んだ状態で。


 そして雪奈は蓼のポケットから冒険者カードを取り出し、受付に提出する。


「あ、あのあなたは.....」


「連れのセツナ、と申します。以後、お見知り置きを。」


 とても上品な態度をとっており、まさに高潔な人間そのものに見えるが.....無論、彼女も脳内が凄い。


 やっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃった!!

 もう!なんで私はこんな事するかな!全て蓼に任せればいいものを!

 なんたる失態!ってかそれ以前に蓼はもう再起不能だったしあれ絶対もう使い物にならない奴だって!

 もうもうもうもうもう!!

 どうしてこうなった!どうしてこうなった!どうしてこうなったんだあああああああ!!


「それでは、報酬金の3800gです。」


「はい、ありがとうございます。」


 そう言い、ぺこりと頭を下げると雪奈は蓼を担いでギルドを後にした。



使用武器:


グロック18C(Gen3)

スペック

種類:ハンドガン(マシンピストル)

製造国:オーストリア

製造社:グロック社

ファイヤタイプ:セミオート/フルオート

口径:9mm

全長:185mm

重量:620g

装弾数:10・17・19・33+1発


本銃は、グロック17にフルオート機能を搭載したモデルとなっている。

色々と語りたい事はあるがそれをするとグロック17の説明まで終了してしまう為、残念ながら今回は割愛。

18Cはオーストリアの精鋭対テロ部隊であるGEK COBRAによる依頼によって製造されたモデルであるグロック18の改良型にあたる。(サイコガンじゃないよ)

初期モデルでは、延長され、吐出したバレル部分にコンペンサイター(反動を軽減する装置)を装備していたが、そこに亀裂が入る問題が生じた。

18Cではバレルを通常通りに切り詰め、スライド上部にガスポート用の穴を開口する形をとる事でこの問題を回避、また細かな修正を加えている。

その為か18で問題とされていた反動がやや軽減されており、扱い易さが向上している。

尚本銃は民間への販売が禁止された公的機関モデルであり、正規方で純正を手に入れるのはまず不可能と言っていい。

しかしスライドのみであればクラスⅢウェポンディーラーという特殊な許可を得ていれば入手可能であり、それらを別々に登録することで同じ仕様の物を手に入れることができるが、登録上はグロック17であるためグロック18として登録する事は出来ない。

最後にGenという表記であるが、これはGeneration(世代)の略称であり、グロックシリーズでは第一世代から第四世代まで存在する。本作に登場したものはアンダーマウントレイル、フィンガーチャンネルが追加されたGen3(第3世代)である。

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