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銃の勇者の英雄譚  作者: NAO
プロローグ
2/15

プロローグ・後編

 

「ハァ.....ハァ.....」


 昇降口についた蓼は靴箱の陰から外を伺う。

 しかしそこには松本の死体しかなかい。


 扉を見ると、施錠されているのが確認できる。

 割られた形跡もない。


 となると___


「まだ校舎内に侵入した確率は低い.....」


 兎に角、一刻も早く奴の位置を掴まないとヤバい。

 どっかのアホが不用意に手を出して犠牲になるかもしれない。


 考えろ、考えるんだ俺。

 俺ならどうする?

 俺ならまず簡易でもいいから死体をかく......されていない?


 待て、昇降口扉が施錠されてるだと?じゃあ松本はどうやってあそこに出た?

 しかも死体は隠されてない。

 つまり誰かに目撃されても問題ない、または目撃されることを前提としていた事になる。


 じゃあ施錠したのは.....


『俺たちを閉じ込めるため。』........


 ヤバい!

 てことは彼奴、まだこの周辺に!


「!」


 いる........彼奴、俺の真後ろに、今いる......!

 クソ!なんで最初からよく考えなかった!

 彼奴がただの殺人鬼の変態だと思ってたからか.....!


 しくったしくったしくったしくった!

 ちゃんと考えれば最初から予想は出来たはず!


 くッ、落ち着け......こういう時に冷静さを失いのはヤバい。


 ピチ


 後ろにいる『不審者』が一歩踏み出す。


 こいつ.....なにも履いていないのか?

 今の音は確実にそうだ。


 落ち着け......俺ならこの状況に対処出来る。

 記憶から雪奈の試合を抜き取れ......

 この状況下で、最低20通りのパターンで対処出来るに相応しい動きをだ。


 集中しろ......


 次第に切らしていた息は通常のものに戻る。


「ギシャアア!!」


 すると奇声を上げて後ろから襲いかかってきた。


 来た!


 蓼はすぐ振り返り、振り下ろされたナタの柄を手ごと固定、そのまま腕を引き寄せ、バランスを崩したところで足をかけて左側に倒し、腕を後ろで固め、ナタを奪った。


「すぅ.......はぁ.......」


蓼は呼吸を整え、口を開いた。


「___一つ.....良いことを教えてやるよ変態。僕は見ただけでなんでも覚えられる。今のは格闘技の天才女子高生、叶香 雪奈の技だ。喧嘩を売る相手は慎重に__!?」


 蓼は目の前の光景を疑う。

 なんと昇降口の外に、その『不審者』と同じ格好をした人間が何人も立っていたからだ。


「お、おい......お仲間さんか.....?予想はしてたが想像以上にキモい絵図らだぞなんでお前らこんな格好してんだ?」


 全員の顔は茜色に染まる景色のせいでわからない。


 まずい、今すぐ逃げたいが、出来れば雪奈のところに逃げたいが、逃げるってことはこの下の変態の拘束を解かなきゃならん。

 解いたら当然襲われるだろう。

 だからと言って殺せばそれも立派な殺人。


 相手明らかに殺意剥き出しな時点で過剰防衛の可能性はまず消えるがってそうじゃないな、うん正直に言おう。


 人殺しなんて出来るか!

 こちとら世界でも三本の指に入る超平和大国日本国に17年も住んでんだよ!

 そんなこと出来るわけねえだろ!


 ドンッドンッ


 うわぁ彼奴ら叩き始めたよ!やべえよ!


ん?まてよ......


「お、おい、そうえばお前なんでお仲間いるのにカギ閉めたわけよ?いやこっちとしては有り難いがなんで態々閉めた?」


 下の相手からは反応が無い。


 パリンッ


 ガラスの割れる音にそちらを見ると、巨大な鈍器___棍棒で入口のガラスを叩き割ったのが目に入った。


 話す気無しか....それにこの状況は結構やばい.....仕方ないか......


 蓼は拘束している手に力を入れる。


「すまんが、ちょっと脱臼してもらうぞ!」


 ボキッ


 不吉な音と共に下の『不審者』は奇声を上げる。


 蓼はナタを握って一気に階段を駆け上った。


 --------------------------------------------------


 くッ!なんだ彼奴ら!


 廊下を走っていると、丁度角から雪奈が走ってきた。


「雪奈!」


「蓼!」


 二人は合流する。


「ハァ.....ハァ.....ど、どうだった?」


「ダメ.....信じてくれない....そっちは?」


「ああかなりヤバい、彼奴ら仲間がいやがった。それも一人や二人じゃない、十数人単位だ。」


「そのナタは.....」


「ちょっと色々あってな、うち一人から鹵獲した。だがもう既に肩は治されて、武器も新し___」


 突然、蓼の言葉が止まる。


「ど、どうしたの?」


「せ、雪奈....今は12時だ、そうだな?」


「え?そうだけど一体____!」


 雪奈は茜色に染まった廊下を見て驚く。


「何時からだ、何時からこうなっていた.....なぜ俺は気付かなかった。どうして気付けなかった?いや、俺だけじゃない、雪奈、お前も何故気付けなかった.....?」


「わから.....ない.....」


「どうなってやがる.....!」


 蓼は窓の外を見る。


「なん.....だ.....これ.....?」


「なにが見え___」


 窓に駆け寄った雪奈の言葉が止まる。


 窓の外には、なんと見渡す限り木が植え付けてあった。


「ここは東京.....こんなのあり得ないわ.....」


「いやそれ以前にここから見える景色はこんなのじゃない。見えるのはビル群だ.....」


 ドゴッ


 突然の轟音と共に蓼達の体が浮く。


「なにッ!?」


 突然床が崩れて二人は下に落ちる。


 そして校舎の一部が消し飛んだ事に気が付いた。


「お、おい雪奈.....今ので.....どれくらい死んだ.....?」


「そんなのわかるわけないでしょ......蓼、どうするのこの状況.....」


「どうするって.....こんなのどうやって予想しろってんだ.....?」


「ギシャアア!!」


 突然の規制と共に棍棒を振り上げた変質者が降ってくる。

 それを交わすと、夕陽がその変質者の顔を照らした。


「「!?」」


 その光景に二人とも唖然とする。


 なんとソレは『人ではなかった』


 黄色い目、長い耳、大きすぎる鼻。

 まるでファンタジー映画にでてくるゴブリンのような見た目だ。


「こ、これは一体....」


「ギシャアアアア!!」


 ソレは再び襲いかかってくるが、二人とも思うように動けない。


 マズい!あんなの喰らったら確実に骨が逝く!

 避けろ!避けるんだ!避けるんだよ!なんで動かない俺の体!

 クソ!クソ!クソ!クソ!


「チクショオオオ!!!」


 そう叫び腕で顔をかばった瞬間だった。


 ブフォッ


 突然の発行に蓼は腕の覆いを取る。

 すると目の前に、蒼い炎で燃やされたソレがあった。


「蒼い炎だと.....」


 蒼い炎は酸素濃度が高い場合に発生する。

 火が完全燃焼しており、酸素が余っている状態だ。

 だがそんなここはそんな状態じゃない。

 となるとなにか特殊な薬品を.....


『諸君』


「「!?」」


 突然声に、二人は辺りを見回す。

 しかしそこにはなにもいない。

 それより前に、その声自体が全方向から聞こえたような気がした。


「どこだ.....全方位.....響音か?いやまさかそんなこと.....」


『おめでとう叶香 雪奈、君は銃の勇者に任命された。』


「へ?私?」


「銃の勇者?何言ってんだ.....あぁ、新手のテロか.....____おい!なんだってこんなことする!?あの殺人鬼共にあんな本格メイクさせて、僕らに一体なにをしてほしいんだ?!」


『あれはゴブリン、と呼ばれている生物だ.....残念だが私が送ったものではない。』


「ゴブリン.....だと?」


 蓼はボソッと呟く。


「チッ」


蓼は自分の中で何かが切れたのを実感した。

そしてそれの縛っていた何から一気に爆発が発生する。


「ふざけるな!人を舐めるのもいい加減にしろ!死の恐怖を味あわせて今度はなんだ?銃の勇者だと?馬鹿な!それにゴブリンがいるだなんて.....ありえない、非現実的すぎる。いいからその全方位マイク切ってここに出てこい!」


『む?どうしてそんなにも怒っておる?はて、お前に恨まれるような事をした覚えはないが.....』


「お前!___「蓼。」


「!?」


 突然雪奈に声を掛けられ蓼は正気に戻る。


「____全く、僕ともあろう者がここまで感情的になるだなんてな......」


 肩に置かれた雪奈の手を掴む。


「スゥ.....ハァ....._____さて.......要件を聞こうか。」


『........凄い変わりようだな......勇者以外との会話は最小限に止める気でいたが、お前とはもう少し話していたい程には面白い。』


「ほぅ.....で?要件はなんだと聞いてる。俺はそれ以外に興味は無い。」


 動機は知らんが取り敢えず此奴が何者か、どうしてこんな事をするのか....可能な限り聞き出す。


『叶香 雪奈、お前が最後の勇者。これで15人揃った。』


「15人?」


 それはつまり、その勇者のレッテルを貼られた奴らが雪奈以外にあと14人もいるのか?

 全く、暇な奴だ。


『では、ルールを説明する。』


「は?ちょっとm__!?」


 突然の光に蓼達は唖然とする。


「くッ、フラッシュか......一体何処から....」


『まずお前達15名には、殺し合いをしてもらおうと思う。』


「あ?殺し合い?何言ってんだ頭沸いてんのか?」


 しかし声の主は蓼の言葉に全く耳を貸さず、続けた。


『お前達はそれぞれ、剣の勇者、弓の勇者、魔法の勇者、魔法剣の勇者、治癒の勇者、鋼の勇者、召喚の勇者、黒魔術の勇者、練金術の勇者、光の勇者、闇の勇者、破壊の勇者、創造の勇者、時の勇者、そして銃の勇者の15の勇者となった。』


「____訳が分からん、何を言っているんだこいつは.....」


『能力はそれぞれ、あらゆる剣の召喚及び身体能力補正、あらゆる弓の召喚及び命中補正、火・水・風・土属性魔法の使用及びその知識、あらゆる魔剣の召喚及び身体能力補正、絶対治癒魔法、皮膚の硬化、全367万の使い魔召喚、黒魔法の使用、あらゆる錬金及び知識また身体能力補正、光化魔法の使用、闇化魔法の使用、あらゆる物質を破壊可能な力、あらゆる物質の生成、時間の巻き戻し、そしてあらゆる現代兵器の召喚及びそれに伴う知識また身体能力補正だ。』


「馬鹿な、そんなこと__『有るわけない、と?』


「・・・」


『ではお前の大事な叶香 雪奈に実演してもらおう。』


「何?」


 しかし雪奈にはなにも起こらない。

 だが、上から何か降ってくるのを蓼は捉えた。


「雪奈!」


 蓼は雪奈に体当たりをし、落下物の降下地点から退かせる。


 ドンッ


 すると先ほどまで雪奈が立っていた地面に何か箱が突き刺さっていた。


 今の落下速度.....推定高度7000m以上....


 蓼は恐る恐る手を近付け、温度を見る。


 熱くはない.....空気摩擦で高温化していない?まさか、そんな物質が存在するわけ.....


『それを開けてみろ。』


「蓼.....」


「あ、ああ。」


 蓼は箱を引き抜き、ロックを外して開ける。


「!?」


 そこに入っていたのは、『銃』だった。


「おい......こいつはどういう冗談だ.....?」


『それが銃の勇者の能力___あらゆる現代兵器の召喚だ。』


「召喚だ?これじゃまるで支援要請じゃねえか!」


『この力は少し難しくてな、こうでもしなければ公平にならんのよだよ。』


 公平だと?馬鹿な、これで信じさせたつもりか彼奴は.....つか.....


「なんでVBR!?くっそマニアックなとこ突いたな!」


 箱に入っていたのはVBR Belgium PDWだ。

 ベルギーのPDW(個人防衛火器)である。


『それは叶香 雪奈がこれを願ったからだ。』


「馬鹿な、雪奈がこんなの知ってるわけないだろ。な?」


「知って......る.....」


「へ?」


「なんでだろう.....知ってる....」


「まさか、冗談だろ?」


 雪奈の真剣な表情を見て、蓼はそれが本当であると確信する。


 ___こいつは日本でも全く情報の公開されていない銃だ。俺自身、知ってはいたが関心は持たなかった。故に雪奈に話すことはありえない。雪奈が自分で調べた.....いや、彼女は兵器関連....特に銃には一切の関心を示さない、故にこれもありえない。


 じゃあどうやって彼女はこれを知った....?


 いや、どこで知ったかはこの際どうでもいい。

 問題は何故奴がそれを知っているかだ。


「ギャォォォオォォォ!!!!」


 突然の耳をつん裂く様な咆哮が響き渡り、ゲームやアニメでしか見たことのない、いわゆる『ドラゴン』が校舎上空を通過した。


「なん......だと.....?」


 馬鹿な.....そんな馬鹿な....


「フッ....フフフ....ハハハハハ!」


「り、蓼?」


 突然笑い出した蓼に雪奈が心配そうに声を掛ける。


「まさかな......雪奈....俺、初めて《思考停止》ってのを経験したわ......」


 そう言った蓼は涙目だった。

今回の使用武器

ナタ

概要:現世に存在するものとは違い、非常に堅牢な作りになっているナタ。


VBR-Belgium PDW

スペック

種類:PDW

製造国:ベルギー

会社:VBR社

ファイヤタイプ:フルオート/セミオート

口径:7.92mm・9mm

全長208mm

重量1500g

装弾数:10・17・19・21・33発+1


ベルギーの会社VBR(Van Bruaene Rik)社が開発したPDW(Personal Defense Weapon)、個人防衛火器である。見た目はハンドガンそのものだが、ハンドガンでは無い。ハンドガンでは無い(大事なことなので二回)。基本フレームはベレッタM92を参考にしている(ハンドガンじゃねえかとか言わない。)。見た目は非常に独特で、トリガーガード前方に取り付けられた簡易フォアグリップが非常に特徴的である。後方には収縮性ストックが存在し、伸ばすことでフォアグリップも相まり、ハンドガンではほぼお目にかかれないようなフォームで構えることができる。またマガジンはグロックシリーズの物を流用しており、同じ物を使用できる他、専用の7.92×24mmVBR-bという弾も使用できる。開発中のCQBWモデルではこの他にも様々な弾も使用可能になる。

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