12話 少女の正体
「ハァ.....嘘だろ.....?」
山道を歩く蓼は、自分達の数本先に遅れてついてきている少女に頭を抱えていた。
「なあ雪奈、お前ならどうする?」
「蓼に頼る。これは貴方の担当分野でしょ?」
「ああ、はい。まあそうなりますよね。」
蓼は再び溜息を吐き、空を見上げた。
「どうしてこうなった。」
----------------数分前-------------------
「わ.....私は....港町で働いています.....」
フードを被った少女のその言葉に蓼は溜息を吐き、口を開く。
「目を逸らしたな、それに港町ってなんだ?普通ならその町の名を口にする筈だ。だから____お前の言葉は嘘だな。」
「ッ.....」
「私は.....実は南東の方にあるテビスという国から逃げてきた召使の一人です...他にも仲間がいます.....」
「下唇を噛んだ、声のトーンも可笑しい。それも嘘だ、いい加減に白状しろ。」
「・・・」
「さて、俺に嘘は通じない。声のトーンや仕草で人力嘘発見器みたいな事ができるからな。まあこれがハッタリだと思うんなら別に幾らでも嘘をついて構わない。だが俺達も得体の知れない人間を放って置くほどお人好しじゃない。だから____次、嘘をついたら殺す。いいな?」
「ッ........」
あくかで笑顔に、そして目はまっすぐと。
こうすると相手は僕の言葉を本気に受け取る。
この緊張感の中で一切のボロを出さずに、僕の前で嘘をつけるというならしてみろよ。
「______わかり......ました。」
観念したか。
突然、少女はフードを外す。
すると、ブロンドの髪が風でなびいた。
髪と一緒に、両端からあるものが垂れる。
それは、長い耳だった。
「______エルフか。」
「はい......私は、リガルス帝国の第一王女、ニーナ・セヌリナス・デラ・リガルスです。」
「!?」
リガルス帝国の第一王女だと.......
この世界の暦の名にはエルフの王達の名が使われる。
その王達の納める国々は《暦名国》と呼ばれエルヴィス大陸内でも屈指の権力を握る。
リガルス帝国はこの暦名国の一つだ。
つまり、今ここヒュマドにいるという事はまずありえない事態になる。
もし本当ならリガルス帝国は今頃大騒ぎだ。
蓼はリガルス帝国の姫を名乗る少女を凝視する。
肩をすくめている.....自信がないのか....?
まあ嘘をつけば殺されるし当然か。
だったらこいつは.....本当だな。
「_____よしわかった。で?どうしてリガルス帝国第一王女様がこんなところに?」
「それは.......」
「それは?」
「_____我が大陸を救う、戦士を探すためです!」
「........は?」
「今、暦名国の一つであり我々リガルス帝国の貿易国でもあるテミラス帝国は各国の領土を奪い続けています。このままではリガルスとテミラスの対立は避けられません。両国王もそれは望まず、裏である計画をつくりだしました。それは第三勢力を作り出し、協力関係となってその国を排除するという策です。私は、その第三勢力の戦士をさがしにきました。」
「ふむ....一国家の王女様がご苦労なことで。それで?あそこに転がってる奴らはなんだ?」
「あれは、さっき風でフードが取れた時に耳が見られたようで、私を売ってお金にしようとしていたのだと思います.....」
なるほどね......
「まあ王女様が頑張ろうと僕らに関係は全く無いが....一つ忠告しておく。」
「な、なんでしょう.....」
「その策は無理だ。」
「ど、どうしてです!?」
「まず現実味が無い。なんだよ第三勢力って。それを一から作り出すだ?馬鹿馬鹿しい。暦名国ニ国が同盟関係になってまで排除しなくちゃならんような勢力、作り出せる可能性はかなり低い。」
「・・・」
「仮に、出来たとしてもまあ無理だ。」
「な、なぜですか.....?」
「暦名国といえば列強だ。その内の一つが領土拡大を目的に戦争をおっ始めてる。それをリガルスその他暦名国がいい顔するはず無いだろ?直ぐに暦名国同士の戦争が始まる。特にテミラスと強い同盟関係にあるリグルスは確実にテミラス側に付くだろう。それで勝ったらリグルスにも得だし、なによりテミラスとより強い関係を築ける。それで完成した暦名国同士の戦争。それだけじゃない、速やかに各同盟国も参戦、国が総力を挙げての戦争に発展するのは目に見えてる。」
「そっ、そんな......なにか策は無いんですか!?このままでは罪なき人々の命が....!」
「____テミラスが領土拡大を止めて、直ぐに各植民地に領土を返し、元の大きさに戻る。まあ無理だろうな、テミラス側もいつ暦名国が攻めくるかわからん。引くに引けない状況、って訳だ。かと言って此方側が下手に動けば暦名国同士の戦争に発展、そのまま大戦に直行する可能性もある。ふむ、そうだな......平和会談でもしたらどうだ?ハハハ」
「そんな.......」
「まあそれら暦名国が協力しても潰せない強大な第三勢力が出来上がれば話は別だが、そりゃ無理だ。」
「あ、あなたならどうにか出来ますか.....?」
「は?俺?」
「まあ出来るんじゃない?」
「雪奈ッ!?」
「ほ、本当ですか!?」
「うんうん。」
「おい待て雪n___」
雪奈は蓼の口を手で塞ぐ。
「(まあまあいいじゃない、面白そうだし。)」
いい訳あるか!
耳元で囁かれたその言葉に内心で返しつつ、蓼は雪奈を引き剥がす。
「蓼。」
雪奈は蓼の袖を掴む。
「なんだ?」
「お姫様、ちょっと待っててくださいね。」
雪奈はそう言うと蓼を引っ張って木陰まで行く。
「列強って、この世界でそこまで大きな国が出来ると本気で思ってるの?勇者の有無で戦況が変わる世界よ?そんな世界大戦じみたこと起こる訳ないじゃない。」
「いいや、なるね。お前エルヴィス大陸の面積わかってんの?3000万㎢だぞ?暦名国だけでも500万㎢、残りの中規模な国を合わせて約1000万㎢、ヨーロッパに相当する。WW1レベルの戦争が起こっても不思議じゃない。」
「あとの2/3は?」
「大自然だ。」
「だったらモンスターに戦闘させるとか.....」
「モンスターか......ふむ、まあ不可能ではないだろうが彼....じゃなかった彼女の言う第三勢力とやらと連携が取れるとは思えん。高位の調教師や召喚師だけで編成すれば不可能ではないがそれはそれでまた不可能だ。」
「ねえ、核兵器って知ってる?」
「却下。つか呼べるのかよやっぱこの能力チートだな。」
「あ、あの......なんの話を.......」
何の話をしているのか理解出来ずにいるニーナを蓼達は見つめる。
「ねえ蓼、いいでしょ?面白そうだし。」
「面白そうって理由で大戦に参加するとかどんな罰ゲームだよ.....」
「いいじゃない、毒ガスも爆弾も銃弾も無いのよ?」
「わ、私からもお願いします!」
ニーナは本気で、隣の雪奈は面白半分で蓼に懇願し始める。
「ハァ.....いいだろう、だが止められる保証は無いし、その第三勢力とやらが壊滅したら俺達は無条件で戦域を離脱、ヒュマドに戻るぞ。」
「あ、ありがとうございます!!」
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と、いう訳だ。
歩きながら蓼は空を見上げる。
なあ自称神様、これもお前がやったことなのかよ?
だったらすげえ迷惑なんでやめていただきたい....
蓼は再び深い溜息を吐いた。
《現代兵器解説のコーナー》
はい、数回目にして早くもこのコーナー、ネタ切れです。
いや進展速度が遅いのが理由なんですがまあこれは仕方ないですよね、はい。
まあなんです、今回は私の趣味に走ります。
《トーラス・レイジングブル》
-スペック-
種類:|回転式拳銃
製造国:ブラジル
製造社:トーラス社
ファイヤタイプ:セミオート(ダブルアクション)
使用弾:.28ホーネット
.30カービン
.218ビー
.223レミントン
.41レミントンマグナム
.44マグナム
.454カスール
.480ルガー
.500S&W
全長267mm
重量1,430g
装弾数5〜8発
-概要-
本銃はブラジルの銃製造会社トーラス社が開発した大型リボルバーである。
元々トーラス社は大手銃メーカーの作品をライセンス生産する下請け企業であったが、近年、ポリマー、チタニウムと言った新素材を用いたオリジナルの銃で成功を収め一躍有名となっている。その代表作が本銃である。
本銃はその高いストッピングパワー(一撃で相手を動けなくする能力)からサイドアームとしてハンター達からの需要が高かった。しかもS&Wの拳銃より安価なことから一定の人気を誇り、トーラス社を一躍有名にさせる。
強力なマグナム弾の射撃に耐えられるようシリンダーを2点で保持し、銃身冷却用のレンチレーテッドリブ(銃口上に開けられた数個の穴)の他にフルレングスアンダーラグ(銃身下に取り付けられた銃の跳ね返りを抑える重り)や、銃口付近にはエクスパンションチェンバー(コンペンセイターの役割を果たす8つの穴)が設けられており、銃身側面にはRAGING BULL(怒れる牡牛)の刻印が施されている。また、ハンマー付近に鍵穴が設けられており、キーの保持者のみしか扱えないようになっている。本銃の最大の特徴はそのバリエーションの豊富さにあると言えよう。前述の通り.28ホーネット〜.500S&Wまで9つのバリエーションが存在し、射手の好みに合わせて銃弾を変更できる。因みにこのフルレングスアンダーラグによって極端に太く見える銃身は筆者の大好物である。