表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銃の勇者の英雄譚  作者: NAO
一章 時を駆ける者
10/15

8話 驚愕

 

「ぅ......ん.......?」


 半分開けた窓から差し込む日差しが、目の辺りに当たる。

 その眩しさに、蓼は目を覚ました。

 まだボヤけた視界で時計を見ると、針は9時17分を指している。


 それを確認すると枕に顔を埋めて数秒静止し、息が苦しくなった所で顔を上げ、ベッドから降りる。

 そして靴を履くと、マントを羽織り、扉のノブに手を掛けた。


 ____今日はダニアスに見せたい物があると言われてた。

 彼奴は9:30に来いって言ってたから、割とギリギリだな。

 まあいい、ギリギリだが、間に合う事に変わりは無い。


「......ハァ.....眠い。」


 そう呟くと、蓼はドアノブを捻った。


 --------------------------------------------------


 さて....突然だが、この世界には魔法が存在する。

 そう、空飛んだり火出したり水飛ばしたりするその魔法だ。

 僕が調べていた事の一つがこれ。

 まあ理由は単純に気になる、ってのと異世界人、特に魔法の勇者を割り出せないかと考えたからだ。


 んでこの魔法、やはり原理は解明されている。

 この世界の人間はほぼ全員、肺胞近くに《魔力器官》なるものを備えている。

 ここには《魔力》と呼ばれる物質が蓄えられており、これは魔力器官内で生成される。


 そしてこの世界の空気中、まあ水中にも存在するようだが.....には《魔素》とよばれる気体が存在している。

 これだと窒素、二酸化炭素、酸素、アルゴンその他ヘリウム、ネオン等の他に魔素という新たな気体が存在しているだけという風にも受け取れるが、なぜか原子論が無い。

 だから、単純に酸素=空気=魔素ってのが成り立ってる状況だ。


 まあそれはいい、話が逸れたな。

 魔法はこの魔素が気管を通り、魔力器官に送り込まれた際、魔力と結びつくらしく、この二つが結びついて出来た物が《魔法》らしい。

 で、此奴の性質が《魔力供給者の想像で変化し、それで出来上がる物の完成度も魔力に依存する》だそうだ。


 まあ、これで何が言いたいかっていうとだな。

 俺達異世界人はある奴等を覗いて全員、魔法が使えない。

 俺達には魔力器官なる器官は存在しないからだ。

 ____で、そのある奴等ってのが......魔法を使う一部の勇者だ。


 こいつらだけ魔力器官が生成されたのか、それともまた別の方法で魔法を使用しているのか.....それはわからないが、俺達異世界人の間で、魔法を使う輩がいたならそいつはほぼ間違いなく確実に勇者だ。


 さて......と、お勉強終了。


 蓼は酒場の前で手を振っているダニアスを捉える。

 どうやら彼は、蓼はこないものだと思っていたらしい。

 蓼はそれを見るなり駆け足でダニアスの元に向かった。


 --------------------------------------------------


「俺はブドウ酒でいい。で、リク。お前は?」


 壁に掛かったメニューを眺めていると、ダニアスは蓼にそう言う。


「え?ああ、俺はいいよ。」


「なぁに言ってんだ、俺の奢りだ、なんでも頼んでいいぞ。」


「_____まあ......そう言うことなら、水で。」


「遠慮してんのか?」


「いいや、まだ新しい味に慣れてないだけだ。」


「どうだかな。____じゃあ水を頼む。あとトリテで。」


「はいはい。」


 女性店員はそう答えると、厨房に入っていく。

 それをダニアスが目で追っている間、蓼はダガーナイフの購入を考えていた。


「.........まあいいか、金欠気味だし。」


「ん?何か言ったか?」


「いいや、別に。____それで?見せたい物ってのはなんだ?俺を早起きさせたんだ、相応の物じゃなかったらただじゃおかないぞ?」


「ははは、怖え怖え。」


 そう言いつつ、ダニアスはテーブルの下に置いていたカバンから何かを取り出し、机の置く。


「こいつだ。」


 そしてダニアスが手を取った瞬間.......


 蓼は席を立っていた。


 その音に周りが注目するが、ダニアスが取り出した《ソレ》に気を取られている蓼は全く気にしない。


「こ、これは......ッ!」


 回転式拳銃(リボルバー)........現代兵器の一つだ.....!


「おまッ!これをどこで!」


 雪奈が要請した?

 いやそれはいい、だがなぜこいつが持ってる?

 まさか雪奈がどっかに落としてこいつが拾った?

 いやまさか、雪奈に限ってそんな事ある筈が無い!

 じゃあなんだこれは?どうやって説明する?


「おいおい、落ち着け。まあ、取り敢えず座れよ。」


 その言葉に蓼は椅子に腰掛けるが疑問は止まない。

 それどころか様々な要因を考えだし、それぞれがそれぞれ銃の勇者、即ち雪奈の生死に関わるような重大な失態であったが、ある一つの原因が考え出された。


 まさか......この世界、銃が存在するのか?


「お、おい.....ダニアス、これ何処で.....?」


「何処って....普通に武器屋で売ってるだろ。まあこれ以外にも入手ルートはいっぱいあるがな。いやぁ、高かった。趣味に注ぎ込む金もそれまでにした方がいいな。」


 ハハハ、と笑うダニアスだったが、次に蓼は作動方法に疑問を持っていた。


 確かにこの世界に銃があってもおかしく無い。

 いや、むしろ俺達の世界より数倍長く文明が存在していると言うのにまだこんな中世的な文化なのがおかしいくらいだ。

 銃の勇者は数万年前からいる。

 となると、そいつらが伝えていてもなんら不思議では無い。


 だが、作動方法が俺の知るリボルバーと同じなら話はまた別だ。

 それなら自動小銃があってもおかしくなく、それこそ銃の勇者の召喚方法には疑問の嵐が止まず、結果的にゲームバランスの崩壊を招く。

 歴代銃の勇者が勝利を手にできなかった理由がこれだとすれば早急に手を打つ必要がある.....


「ダ、ダニアス.....少し見てもいいか?」


「ああ、いいぜ。」


 その言葉を聞くと、蓼はリボルバーを手に取った。


 まず回転式弾倉(シリンダー)を調べる。

 銃左側面にあったボタンを押すと、シリンダーは横に振り出された。

 スイングアウト方式だ。

 弾の口径は.......ん!?


 蓼はシリンダー内部を覗いて再び驚愕する。

 なんとそのシリンダーは、貫通していなかった。


 通常、リボルバーのシリンダーは貫通している。


 銃は、銃身(バレル)薬室(チャンバー)撃鉄(ハンマー)の順番に並べられ、弾は薬室(チャンバー)内に収められる。

 原理は省くが弾丸後部に存在する雷管を撃鉄(ハンマー)が叩くことで破裂、それを利用して弾丸を飛ばし、銃身(バレル)内に掘られた溝____ライフリングによって回転する事でジャイロ効果を生み出しより遠くに飛ばす。これが銃の根本的メカニズムだ。


 リボルバーはこの薬室(チャンバー)を大量に備えたシリンダーを備えており、これを回転させる事で半永久的に弾を発射し続ける。

要は薬室____シリンダーとバレルは一直線上に存在し、且つ貫通して無くてはならない。

 だが、この謎銃はそれが存在せず、しかも弾を込める為の穴も存在しない。

 淵に深く溝が掘られただけだ。


「........ダニアス、これどうやって撃つんだ?」


「ん?ああ、そいつは結構特殊でな。貸してみろ。」


 トリテを方張っていたダニアスはそう言い、蓼からリボルバー(?)を受け取る。


「こいつが弾よ。」


 そう言い取り出したのは虹色に輝くバウムクーヘンのように中央に穴の空いた円柱状の物体だ。


「それは.......」


 ダニアスはそれをシリンダーにセットする。

 するとそれは綺麗にはまった。


「魔石だ。こいつは魔法石型なんだよ。」


 魔法石型......?

 なんだそれ、いやなんだそれ。


「あとはこいつと俺の魔力で撃つ。どうだ、面白えだろ?」


「すまない......急用を思い出した。俺は帰るよ。」


 そう言うと、蓼は席を立った。


「ん?なんかあったか?」


「ああ、とても大事な用事がな.....」


 この世界の銃について学ばなくては......

使用武器:無し

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ