テンプレ反対派VSテンプレ推進派 ~討論会~
「これ、テンプレよねー」
黒髪を頭の上でお団子にした少女……俺の幼馴染みの由奈が言う。そして、その言葉に反応して、茶髪の青年が言い返す。ちなみに、三人称で言ったが茶髪の青年は俺だ。俺らは二人とも高校生だ。
「お前な、俺がどれだけ苦労して書いたと思ってるんだ」
「でもさー、その結果がこれでしょ? 」
少女はパソコンを指差す。そこには、俺が書き、小説家になろうというサイトに投稿したものだ。人気はない。
「う、うるさい、ブックマークだって一つはついてるし……」
「そんだけでしょ? テンプレ諦めたら? 」
「な、俺はテンプレを目指しているわけじゃないんだぞ」
つい、事実でないことを言ってしまった。俺は、テンプレの方が人気があるからテンプレを目指していたのに……
「テンプレって確か……あった、この検索エンジンだと『ある程度の様式があらかじめ定まっていて、その中の幾つかの要素を替えることで自分なりの望む結果を導くという目的を達するためのもの』なんだよね。テンプレ書くなら、幾つかの要素をもっとインパクトあるものにしなよ。今ではありふれてるけど、某小説のように、人外転生とかさ」
無機物に転生とかもあったよねー、と言う由奈に俺は腹が立ち思わず立ち上がり、叫ぶ。
「無理だよ! 精一杯なんだ。これでさ」
「ふーん、でも、そこで諦めちゃったんだ」
ゆなの言葉に俺は項垂れる。返す言葉もなかったからだ。
「別にね、テンプレが悪いなんて言ってないよ。ただ、オリジナリティが全く感じられない。テンプレに囚われすぎて、キャラが死んでる」
ゆなの言葉は、至って冷静だ。熱くなっていた気持ちも少し冷める。
「ねえ、駿。こっち向いてよ」
ゆなの言葉に、伏せていた顔をあげてゆなの顔を見る。ゆなは母親を思い出させるような微笑みを称え、こちらを真っ直ぐ見つめる。なんだか頬が熱くなる、心臓がばくばくしている。これはもしかして病気なのだろうか。そんな俺をよそに、ゆなは言葉を続ける。
「テンプレにならないように、きっと頑張ったんだろうね、主人公は最弱でもなく、最強でもない、ただの少し喧嘩が強いだけの高校生。それが、異世界に行き、魔法が使えるようになるけど、やはり、そこまで強くない。世渡り上手いけど、情に流されやすい、そんな普通の少女。だったんだよね、元々の設定では」
俺は無言で頷く。
「それがテンプレ意識して、少女はかなり強くなった。そのせいで、自分一人で何でもできるようになったね」
ゆなは淡々と語っていく、なんだかそのようすを怖いと思ってしまう。
「ねえ、しゅん、本当は何が書きたかったの? 本当にこんなテンプレが書きたかったの? 違うよね、だってこの子はすごく考えられているね、それを捨てることが出来なかったんだよね、だから、ヒロインとして出てきた」
そこで、ゆなは言葉を切る。俺はなにも言わない。いや、言えない。
「この話さ、読んでてつまらないよ。最初の方が良かった。思い出して、貴方はどうしてこのキャラを作ったの? どういう思いで最初の話を作ったのか」
それだけ言うと、ゆなは帰っていった。
その後、数時間の時が経ち、真上にあった太陽も沈み始め、もう夕方だった。
一人、ゆなの言葉を考える。俺はベッドに寝転ぼうとして、机の角に足をぶつけて、机の上のものを撒き散らす。
「いてっ。あーあ」
一冊のノートが目にはいる。タイトルのないノートだ。俺が、はじめて小説を書いたノートだ。ゆなの話にも出てきた、最初の話だ。つい、読み返してみる。読んでいて、時間を忘れてしまった。もう、日は沈んでいた。
「ああ、そうか、俺は、俺は」
言葉に為らない。ただ、ただ一つ、思い出すことができた。俺は、この作品は好きだった。いや、好きだ。過去形なんかではない、現在進行形だ。
「悪いな、忘れてて」
どうして、俺はこいつをどういう思いで考えたのか。どうして、今もノートが残っているのか。今、投稿してある作品のノートはすべて捨てた。投稿してないのもだ。しかし、これだけは捨てることが出来なかった。
「そっか、わかった気がするよ。こいつを書いていたときの方が楽しかったんだ」
それはいたく、当たり前で、なのに気づけなかった。でも、ようやく気づくことができた。
「テンプレとかじゃないんだ、面白さって。筆者が書いていて楽しいと思えない作品は誰が読んでも面白くない。何で当たり前のこと、気づけなかったんだろうな」
自嘲気味に笑う。
「また、お前も投稿するよ。その時まで待っててくれよな。今は、あっちを楽しんで投稿するからさ! 」
俺はノートを置き、パソコンの前に座る。
「さーて、やりますかっ! 」
そう言って俺はパソコンをスリープから復帰させる。スリープ状態になっていて、スリープ状態の黒い画面だったパソコンに映った俺の顔は、子供のような、無邪気な笑顔だった。
蛇足です。
翌朝、今日は月曜日なので学校がある。ちなみに、俺らは高校1年生だ。教室に着くと、俺は自分の席に座る。すると、前の席のゆなが後ろを振り向き
「おはよう。きちんとわかったみたいだね。よかったよ」
と言う。
「ああ、お陰様でな」
「ふふっ、良かった。また」
ニコリと微笑み、それだけ言うとゆなは前を向き、ゆなの友達と話している。確か、榎本ルルだったか。ゆなはそれ以上なにも聞かなかった。少し聞いてほしいな、とは思ってたけど、俺もゆなになにも言わない。どうせ、後で話すのだから。
「何か聞いてほしい事があるみたいな顔してるな」
そう俺に話しかけてきたのは隣の席の加藤佑哉だ。こいつも、小説家になろうで活動している。こいつには、聞かせた方がいいかも知れないなと、思い、俺は話す。
「まあ、な。昨日さ――」
この、俺の物語を。
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結論、テンプレだろうがなんだろうが楽しく自分らしく書いたもんがちでしょ
ね、タイトル詐欺ってキーワードいれたでしょ?