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ブレイクオンスルー  作者: カレーライスと福神漬(ふくじんづけ)
38/40

38 VS火鳥

 火鳥ひどりは、

 心地ここちよいねむりから、

 めるように、ゆっくりと、まぶたをひらいた。



 それから、とてもおだやかに、言葉ことばを、はっした。

「やあ、智子ともこ


やすく、名前なまえばないで!

・・・ムシズが・・・はしるから!」

 智子は、キッパリ言った。

 

 腕組うでぐみをとき、かるくく、肩をすくめる火鳥。



「ひとつ、あなたにいたい!」━━「なぜ、優希ゆきを、あんな・・・」

 

 かぶせるように、火鳥が、言いはなつ。


「たまたまさ!犬城けんじょう優希ゆきがいて、ぼくがいた!

ただ・・・それだけのことだ!

誤解ごかいのしようもないだろうが、このさい、言っておく。

彼女の死は、アクシデントなんかでは・・・ない。

ハナっから、殺すつもりだった。

意味などない・・・

ただ、ころしたかったから・・・殺した!

動画どうがったのはオマケだ。

あとでリピートして、興奮こうふんますための、

いわば・・・媚薬びやくみたいな・・・もんさ!」


「・・・・・・」


月吉つきよしくん!ぼくは、ある時・・・

自分じぶんあゆむべき人生じんせいを・・・〈未来みらいを〉・・・てしまったんだ。

ディテールまで、詳細しょうさいに。

成功せいこうして、町の名士めいしとなり、そこそこの人生じんせいおくる。

一般いっぱんのレヴェルでいえば、わるくないんだろうな。

しかし、そんなのは・・・ゴメンだ!

追体験ついたいけん人生じんせいに、意義いぎなどない!

ぼくは、オリジナルな人生を、生きる!

ノンドラッグ・ノンアルコール!

触媒しょくばいなし!

なんのたすけも、りずにだ!」


「だまらっしゃい!!

くだらない(・・・・・)ゴタクなど、聞きたくない!

自首じしゅしなさい!

「あなたは、心をんでいるのよ・・・それも・・・そうとう重度じゅうどに・・・!

わかいのだから、入院にゅういんして、辛抱しんぼうづよ治療ちりょうすれば・・・やりなおしは、きくはず!

悪事あくじは、いつか、必ず・・・バレる!

「ムダな抵抗ていこうはやめて、一緒いっしょに、警察けいさつへ行きましょう!」


 智子は、スマートフォンの動画を、起動きどうさせた。

 優希を殺害さつがいする、

 火鳥の冷酷れいこくな姿が、モニターにうつし出された。


完全版かんぜんばん映像えいぞうと、

事件の詳細しょうさいをつづった、鹿間しかまの文章、

うごかぬ証拠しょうこが、このPCの中に、すべて・・・メモリーされている」


 スマートフォンを、ポケットにすべらせ、

 鹿間の、ノートパソコンを、頭上高ずじょうたかく、かかげる。


「もうげられないのよ!・・・あなたは!・・・火鳥ひどりしょう!」

 


 ニヤリとする火鳥。

 それから、大声おおごえげて、笑った。

 このに、

 せいけて以来いらいの、

 最高さいこうのジョークを、

 かされたみたいに。

 いつまでも、いつまでも、笑い続けた。

 

 智子は、あせをかいた。

 映画やドラマのクライマックスに、

 悪役あくやくが、

 主人公しゅじんこうを、前にして、

 たからかと、

 笑いげる、場面シーンがある。

 なんと、ワンパターンなことよ・・・とバカにしていた。

 しかし、

 その意味が、

 いまの瞬間しゅんかんしんに、理解りかいできた。


 優越感ゆうえつかんなのだ。


 火鳥の笑いには、

 ひとかけらの、コンプレックスも、存在そんざいしない。

 いわば、全能者ぜんのうしゃの笑いだ。

 

 しかも、智子が直面ちょくめんしているのは、

 フィクションではなく・・・まぎれもない・・・現実げんじつ

 いたみどころか・・・死と・・・となりあわせ!


 ここにいたって、

 ようやく・・・

 火鳥の正体しょうたいが・・・つかめた気がした。


 狂人きょうじんとは、一線いっせんかくす、存在そんざい


 現実げんじつを・・・

 ・・・<法律ほうりつ倫理りんり秩序ちつじょを>・・・

 ・・・<もっといえば、せいをも>・・・ 

 超越ちょうえつしているのだ!

 

 死刑しけいになっても、

 たぶん、

 ビクともしないにちがいない!


 弱虫よわむしにありがちな、

 あたまでっかちの理論武装りろんぶそうではなく・・・

 火鳥は、

 超人哲学ちょうじんてつがくを、体現たいげんし、ていた!

 

〈・・・手ごわい・・・相手あいてだぞ・・・これは・・・〉

 


 ひとしきり、笑い終えた火鳥は、

 思い出したように、言いそえた。

「あのとき、クスノ木のそばで、

ぼくのマジックが、成功せいこうしていたら、きみは終わっていた。

石堂いしどうはこび、

きたまま、バラバラにしてやるつもりだった・・・

・・・もちろん、麻酔ますいなしでね・・・(ウインクする火鳥)

「優希を、ほうむった、あの場所で・・・

「きみは・・・うんが・・・つよいんだなぁ・・・!

まあ、いいさ!・・・これから、元気いっぱいの、きみをころす!

かなり・・・くるしむことになるだろうなァ・・・ト・モ・コ!!」

 


火鳥翔ひどりしょう!!」

 絶叫ぜっきょうする智子。

「私の皮膚ひふを、全部ぜんぶいで、

頭の中から、のうみそを、取り出して、

あなたの感触かんしょくや、

記憶きおくのシミを、ひとつのこらず、あらながして、りたい!」

 いい終えると、地面じめんにツバをいた・・・    ・・・「ペッ!」  


「フフフ、そうこなくっちゃな!

月吉つきよしくんらしくない!

あま記憶きおくに引きずられ、

ためらいまじりに、かかってこられても、こまるのさ。

つまらないもんなあ、そんなんじゃあ。

生命力せいめいりょくに、ちあふれたきみを、

ぼくは、まるごと殺す。

まずは・・・オードブルから、取りかかるとしよう」

 

 火鳥は、

 目にも、まらぬ、はやさで、

 クスノ木の、裏手うらてに、まわりこんだ。

 鹿間しかまを、

 たてにして、すぐさま、姿をあらわした。

 

 さるぐつわを、まされ、

 手足てあしを、しばられた、鹿間を、

 背後から、いきおいいよく、りとばす。

 

 鹿間しかまは、

 ピョンピョンねるようにして、

 ちょうど・・・

 智子と、火鳥の、

 中間ちゅうかんに、

 よろめきながら、たおれこんだ。

 

 智子が、ろうと、

 アクションを起こしかけた、そのとき・・・


 ドン!

 ・・・けるような音が・・・した。


 すると、

 突然とつぜん

 周囲しゅういが、昼間ひるまのように、明るくなった。


 ほのおのかたまりが、鹿間に、おそいかかる!


 驚き!

 とっさに、

 ほのお出所でどころをさぐる、智子。

 

 ナイト・ゴーグルをかけた火鳥が、

 火焔かえんを、放射ほうしゃしていた。

 

 ボンベを背負せおっていた。

 ボンベから、

 金属製きんぞくせいの、自在じざいホースがび、

 ショットガンを思わせる、銃型じゅうがたのノズルに、

 接続せつぞくされていた。



〈ガスボンベではなく・・・〉

火炎放射器かえんほうしゃきの、燃料ねんりょうボンベだったのか!〉


 智子の全身ぜんしんに、鳥肌とりはだが、バリった!

 

 火焔かえんは、鹿間の表面ひょうめんを、ほぼきつくした。

 ぶくれした皮膚ひふが、めくりあがり、

 炎が、めるように、

 皮膚ひふの奥の、脂肪しぼうや、にくを、いていく。


 異様いよう臭気しゅうきが、鼻をつく。

 


 ぼう然と立ちつくす・・・智子。


 火鳥はかわジャンパーのうちポケットから、

 <おまもぶくろ

 をひっぱりし、

 むなもとに、らした。



 一歩いっぽ、あとずさる智子。


 火鳥の視線しせんが、

 まるく、大きなつきを、とらえる。

「そろそろ、主賓しゅひんの、おましのようだ!」

 


 地上ちじょうすれすれに、ポッカリかんだ、

 巨大きょだい満月まんげつの、

 中心部ちゅうしんぶから、

 全身ぜんしんに、月光げっこうびた、

 人影ひとかげが、あらわれた。

 

 水晶すいしょう学園がくえん制服せいふくを、け、

 蒼白あおじろい顔をした、

 犬城優希けんじょうゆき・・・そのひと・・・である。

 

 火鳥は、

 自分のスマートフォンを見ながら、言った。

たしじょうまで、

メール送信そうしんされてるとはねェ!

時代は・・・21世紀なり・・・か!」


「優希・・・優希・・・」

 智子の目から、

 ひとすじの涙が、つたい、落ちた。

 うれしさと不安ふあん

 後悔こうかい期待きたい

 さまざまな感情が、いまぜになって、友人の名を・・・んだ。


文字もじどおり、んでる・・・なんとやらだ!」

 不敵ふてきな笑いの火鳥。

 

 優希の、つぶらな、ふたつのひとみが、

 ピントをしぼり、

 一点いってんに、

 照準しょうじゅんを、合わせていた。

 <護符ごふはいった、おまもり>へ・・・と。


 智子は、自分が必要とされている理由を・・・

 たったいま・・・101パーセント・・・理解りかいした。


<わたしって・・・なんて・・・うかつなやつ・・・なんだろう!>


<親友の行動の・・・そこにある意味を・・洞察どうさつできなかった!>


<火鳥ひどりの、おまもりのせいで・・・優希は・・・思いを、げらずにいたのだ!>


<彼女の・・・不可解ふかかい行動こうどうは・・・

・・・あの・・・おまもりのなせる・・・ワザ・・・であったのだ!>



 クスノ木に、りかかり、

 お守りを、もてあそんでいる火鳥。

 彼の手が・・・

 <みずからの手で、改造かいぞうほどこした>

 ・・・火焔放射器かえんほうしゃきの、

 銃型じゅうがたノズルへと、なめらかに移行いこうする。


 トリガー・・・〈がね〉に・・・ゆびさきが、かかった。


 

 一陣いちじんの風が、う。

 

 ときが、ばされたように、

 ゆっくり、

 ちゅうに、がる、優希。


 なが黒髪くろかみが、かぜに、たゆとう。


 両方りょうほうの手のひらに、

 異常いじょうなまでの、

 あせをかいている、智子。


 彼女は、以心伝心いしんでんしんで、

 優希ゆきはつの、

 無言むごんの言葉を、感得かんとくしていた。

 

 親友しんゆう期待きたいに、こたえたいのは、やまやまだったが、

 まず、その前に、ひと倫理りんりとして、

 最低限さいていげん、やっておくべきことがある。


火鳥ひどりさん、いてください!これが、最後通告さいごつうこくです!」

あらためて、自首じしゅして下さい」

「お願いだから・・・・・・〈一度は、愛した・・・男性である〉!」

 ノートPCを、かかげながら、言った。

 

 もとカノの、せつない言葉ことばに、

 火鳥は、

 こうべを、れた。


 それから、顔を上げると・・・

 

 心底しんそこ

 うれしそうな表情を、して見せた。


 その直後ちょくご・・・


 ためらうことなく、

 トリガーを、

 ガッ!と、

 いた。

 

 ズッドーン!!


 よるを、くように、

 ほのおのかたまりが、

 まっしぐらに、おそいかかってくる。

 

 巨大きょだいな、火のたまが、

火焔かえんを、けるがわからすると〉

 ぶっんでくるような、印象いんしょうだった。

 

 智子の身体しんたいは、

 考える前に、

 敏捷びんしょうに、反応はんのう

 左へ、空中側転くうちゅうそくてんし、かわした。

 

 ひるがえった制服せいふくのスカートを、

 わずかに、かすめたほのお

 ミリ秒後(びょうご)に、

 ケムリとほのおが、ポッ!と立ちのぼった。

 

 ほのおを、両手で、パタパタはたいて、消す。

 

 ゾクゾクするモノが、こみ上げてくる。


 あまりに、予想よそう裏切うらぎらない展開てんかいに、

 みすら、こぼれてしまう。

 

〈火鳥は、あくまで、やる気なのだ!〉


「よーしゃ!」

 智子は、ターゲットに、目をすえた。

 護符ごふの入ったおまもり。


 ノートPC(パソコン)を、足もとに、そっと、置く。

 

 キリキリ表情をめると、

 彼女は、スカートのポケットから、

 くろ薔薇バラを、引っぱり出して、

 火鳥に向かって・・・ほうげた。


 ふたりの、中間ちゅうかん地点ちてんに、

鹿間しかましょう死体したいうえ>へ、ポトリと落ちた。

 

 

 バトル受諾じゅだくの、合図あいずであった!

 

 くろ薔薇ばらは、ねつにより、一瞬いっしゅんにして、しおれた。

 

 火鳥は、二本指にほんゆびで、

 敬意けいいめて、

 バトル相手あいての、

 智子へ向け、れいを、かえす。


 ついに・・・

 戦闘開始せんとうかいしの、火ぶたが、ってとされた!


 智子と火鳥・・・

 たがいが、有利ゆうりを、位置いちりをしようと、

 くろ薔薇バラを、

 中心ちゅうしんてんにして、

 時計とけいまわりに、

 えんえがきながら・・・疾走しっそう・・・する。

 

 位置いちりを終えた火鳥は、

 景気けいきづけに、 

 宙空ちゅうくうどまる優希に、

 火焔かえんを、見舞みまった。


 空気くうきを、き、

 45度直線どちょくせんで、放射ほうしゃされていく、ほのお


 照明しょうめいを、てたように、

 まわりが、

 一瞬いっしゅん

 明るく、らし出される。

 

 優希は、

 ほのおを、

 紙一重かみひとえで、見切みきり、

 フィギュアースケーターのように、

 優雅ゆうがに、

 ちゅうを、

 智子のがわに、

 すべるように、移動いどうして・・・かわした。

 


 ふたたび、

 智子と火鳥の、

 二等辺にとうへん三角形の頂点ちょうてんへと、

 空中くうちゅう銀盤ぎんばんを、

 同じ軌道きどうで、すべり、戻って来た。


 往復おうふくする流星りゅうせいのような、

 彼女の動き・・・それは、

 まさに・・・月光げっこうのドライヴ・・・だった。


「ナイス・ディフェンス、優希!」

 智子のエールに、

 ピースサインでこたえる、

 もとミス・水晶学園すいしょうがくえん

 

 落ち着きはらって、

 70程度(ていど)心拍しんぱくすうを、

 維持いじしている火鳥。

 

 かいって、

 5メートルじゃく距離きょりに・・・智子。


 

 ふたりの中間地点ちゅうかんちてん

 上空<二等辺にとうへん三角形さんかっけい頂点ちょうてん>に、

 優希が、かんでいる。

 

 相手の、出方でかたを、うかがう智子。

 うかつに、手は出せない。

 ひとつのミスが、

 失点しってんではなく、

 そのまま、死に、直結ちょっけつするのだ。


 これは・・・ゲームではない。

 

 まされた集中力しゅうちゅうりょくで、タイミングをはかる。

 不安ふあんが、背中に、ベッタリはりついていた。

 彼女の心拍しんぱくすうは、すでに、160をえていた。

 

 間合まあいが、極端きょくたんに、長くなる。

 時間の観念かんねんが、変容へんようしてしまうほどに。

 

 仕掛しかけたくとも、

 キッカケが、つかめない。

 ギリギリ感のただよう・・・智子。

 

 かたや、余裕よゆうしゃくしゃくの火鳥。

 

 ふたりの様子ようすを、宙空ちゅうくうから、見守みまもる優希。

 

 

 どちらが、さきに、仕掛しかけるか・・・


 さきに、うごいた方が、ける・・・


 智子の、勝負勘しょうぶかんが、そうささやく・・・

 

 

 さきに、

 動いたのは、

 意外いがいや、優希だった。

 ちゅうを、カキッと、移動いどう


 友人ゆうじんの、真上まうえあたりで、ピタッとまった。

「ヘイ、智子ともこ!」

 

 優希ゆきの、びかけに、

 火鳥のほうに、注意ちゅういを、のこしつつ、

 慎重しんちょう細心さいしんに、反応はんのうした。


「ハッ!?」

 智子のリアクション。

 

 優希は、バスケットボールを、持っていた。

 そのボールには、集合サインが入っていた。

 都大会優勝とたいかいゆうしょうの、記念品きねんひんだった。


 ボールが、優希の手を、離れた。

 

 落下らっかしたボールが、

 智子の目の前で、大きくバウンドする。


 タイミングを、慎重しんちょうにはかり、

 ひょいとタッチ、

 手もとに、引きせた。

 

 ドリブルを、開始かいしする。

 めざすは、護符ごふの入った、おまもり。

 オフェンスは、ディフェンスより、得意とくいだ!


 ひさしぶりの、ボールの感触かんしょく

 ここのところ、

 練習をさぼっていたせいだろうか、違和感いわかんがあった。

 

 ボールが、つきての、おもちのように、

 手にいついてくる、あのステキな感じが、えていた。

 ボールが、ダダをこねている。

 ムズがって、心をひらくまいとしている。

 って、おもい感じ。

 まるで、智子を、拒絶きょぜつしているか、のようだ。

 ボールって・・・なんと・・・正直しょうじきなんだろう。


 右手みぎて

 続いて、左手ひだりてと、

 交互こうごに、バウンドさせ、ドリブルする。

 

 火鳥は、

 バスケ部の主将しゅしょうめがけ、

 一分いちぶくるいもなく、火焔かえんはなった。


 正確せいかくにコントロールされ、飛んでくる、

 きモノのような、ほのおのかたまり。

 

 素晴らしい反射神経はんしゃしんけいと、

 頑健がんけん肉体にくたいが、ひとつになり、

 あざやかに、火焔かえんを、かわす。

 ムダのない、

 力強ちからづよく、速い、動き。

 

 ドリブルをしながら、

 火鳥との距離きょりを、少しずつ、ちじめていく。


 接近せっきんすれば、そのぶんだけ、

 リスクを、うことになるが、かまいやしない。

 危険きけんなくして・・・成果せいかなしだ。

 

 この、紙一重かみひとえ状態じょうたいは、

 ひりひりするほど、生きている実感じっかんを、あたえてくれる。

 火中かちゅうくりを、ひろううという、

 ちょっぴり、秋めいたスリルも、味わえるではないか。

 

 一方いっぽう、火鳥は、

 マシーンのように、冷静沈着れいせいちんちゃくだ。

 火焔かえんのムダちは、極力きょくりょうくひかえた。


 彼は・・・

 ほねずいまで、知っていたのだ。


 勝負事しょうぶごとには、

 バランスのくずれる瞬間しゅんかんが、

 必ずや、おとずれるということを。


 その一瞬いっしゅんを、

 せいするものが、勝利者しょうりしゃとなる。

 

 だが・・・冷静れいせいきわまりない、

 火鳥の精神せいしんを・・・みだすほどに、

 智子の動きには、

 予測よそくを、えた、ひらめきがあった。

 

 火鳥が、二手にて三手さんて

 あるいは、もっとさきまで、

 みを、れ、

 火焔を、噴射ふんしゃする。 

 しかし、

 彼女は、それをえる、

 反射神経はんしゃしんけい

 運動能力うんどうのうりょくを、しめすのだ。


 これには、さすがの火鳥も、したいた。

 まさか、これほどとは、思わなかった。

 

 だが、ぎゃくに、

 これくらいは、やってくれなければ、

 つぶしがいが、ないともいえる。


 火鳥の中で、

 サディスティックなくろ欲望よくぼうが、

 増幅ぞうふくされていく・・・      ・・・「制圧せいあつしてやる!」


 無重力むじゅうりょくトランス状態じょうたいの、智子。

 意識いしきとは、

 べつの次元じげんで、身体が勝手かってに、動いていた。

 178センチの肉体にくたいが、

 自在じざいに、動きまわり、

 火鳥の、高度こうどな計算が、はいった、

 射出しゃしゅつを、

 間一髪かんいっぱつで、見切みきり、かわしていった。

 

 火鳥との距離きょりは、2メートルきょうまで、接近せっきんした。

 

 対峙たいじする、ふたり。

 

 たがいの、内面ないめんから、

 はっせられる、

 膨大ぼうだいりょうの、エネルギーが、

 らせんのうずを、えがく。

 

 時間の流れが、圧縮あっしゅくされ、デフォルメされる。

 


 そして、とうとう、

 バランスのくずれるときが、やってきた。

 

 

 ジャンプして火焔かえんをかわした・・・

 直後ちょくごの、

 着地ちゃくちの・・・とき、

 智子が、

 小石こいしに、つまづいた・・・


 その瞬間しゅんかん・・・

 智子の身体しんたいが、

 火鳥に向かって、

 ひだりに・・・ながれ・・・た。


「あっ!」・・・「い・け・な・い!」

 こえげる、宙空ちゅうくうの、優希。

 

 火鳥の、目が、らんらんひかる。

「もらった!!」

 

 火鳥の口もとの、

 片一方かたいっぽうが、

 極度きょくどなまでに、がった!


 せいを、ち切るせつなの・・・死神しにがみの・・・笑い!

 

 智子が、バランスを、もどす・・・

 そのうごきを・・・光速こうそくで・・・立体りったいイメージ化する。

 火鳥の脳内のうないで、

 彼女の未来みらいうごきが、

 くみ写真しゃしんのように、

 分析ぶんせきされ、計測けいそくされてゆく。

 

 予測よそくされうる、智子の動きと、

 火焔の交差こうさする一点いってんが、

 ・・・みちびき・・・された!

  

 トリガーが、引かれる!

 

 動きを、読み切った、

 死の火焔かえんが、

 智子めがけ、

 噴射ふんしゃされた。


 正確無比せいかくむひな、ほのおの、軌道きどう

 

 智子の身体は、

 ひだりに、ながれたまま・・・

 ・・・〈バランスをくずしたまま〉・・・

 加速かそくした。


 火鳥の、視界しかいから・・・える。

 

 直後ちょくご

 魔術師まじゅつしのように、

 火鳥の、すぐ目の前に、現出げんしゅつした。


 相手あいて盲点もうてんく、俊敏しゅんびんで、トリッキーな動きだった。


 ショックを・・・ける・・・死神しにがみ!!



「アホウ!フェイクだよ!!」

 会心かいしんみ(V)をかべ、咆哮ほうこうする智子。

 



 驚異きょうい身体能力しんたいのうりょくを、駆使くしして、

 智子が、

 自身じしん土壇場どたんばで、仕掛しかけけた、フェイク〈っかけ〉だった!



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